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千人伝

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様々な人の評伝「千人伝」シリーズのまとめマガジン
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2024年4月の記事一覧

千人伝(二百五十一人目~二百五十五人目)

二百五十一人目 用事 用事はいつも用事を忘れてしまっていた。役所に行くたびに忘れてしまうのだった。病を経て、生活状況が変わり、たびたび役所へ赴かなければいけなかった。そのついでに、役所へ提出する書類の一つを出そうと考えていたのだが、別の用事を済ませすると、いつもそのことを忘れてしまうのだった。 用事は常時酷い耳鳴りに悩まされており、特に静かで閉鎖された空間において、耳鳴りは彼を圧し潰した。役所に行くたびに、ついでの用事を忘れてしまうのは、一刻も早くその場所から逃げ出したい

千人伝(二百四十六人目~二百五十人目)

二百四十六人目 ゴーストタウン ゴーストタウンはゴーストタウンに生まれた。人のいない街だった。かつての人の名残もほとんど消え失せた街だった。ゴーストタウンに迷い込んだゴーストタウンの親は、ゴーストタウンを産み落とすと同時に亡くなってしまっていた。ゴーストタウンが物心つく頃には風化してしまっていた。 ゴーストタウンを育てたのは街のゴーストたちだった。ゴーストタウンには多数のゴーストが住み着いていた。かつての住人やペットのゴーストもいれば、街そのもののゴーストもいた。ゴースト