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シロクマ文芸部参加作

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note内企画「シロクマ文芸部」参加記事のまとめです。
運営しているクリエイター

#シロクマ文芸部

「音がら」#シロクマ文芸部

※「声がら」の続編にあたります。前回読んでいなくても問題はないです。  ラムネの音がらが…

泥辺五郎
5日前
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「風呂迷宮・風呂空間」#シロクマ文芸部

 月曜日から風呂に入れていない。もう日曜日になってしまうというのに。梅雨時の湿度の高い暑…

泥辺五郎
2週間前
21

「ミニチュアメカキリンは紫陽花を好む(挿絵つき)」#シロクマ文芸部

 紫陽花を好んで食べようとするのだ、うちで飼っているミニチュアキリンは。紫陽花の咲き乱れ…

泥辺五郎
2週間前
18

「ハウリングレインリフレイン」#シロクマ文芸部

 雨を聴く細胞が全身にあった頃を思い出す。人になる前は蛙であった。蛙になる前はオタマジャ…

泥辺五郎
3週間前
21

「人の降る街では転落死を防ぐために政府から羽根が支給された」#シロクマ文芸部

 赤い傘を差していたので、血の雨が降っているのに気付くのが遅れた。手首を切った女性が空を…

泥辺五郎
1か月前
23

「声がら」#シロクマ文芸部

 金魚鉢に残された金魚の抜け殻を見つけ、夏が近いことに気がついた。確か去年もそうだった。…

泥辺五郎
1か月前
19

「靴になった骨」#シロクマ文芸部

 白い靴のような骨が残った。祖父は日々歩き続けているうちに足が靴のようになった人だった。死因は「歩きすぎ」と診断された。骨が靴の形になるまで歩き続けたものの、足に身体がついていけなかったのだ。上半身と精神は足からどんどん離れていき、下半身は歩き続けながらも、上半身は寿命を迎えてしまった。お通夜は騒がしかった。バタバタ暴れる下半身を無理やり棺桶に納めるのに苦労したからだ。  祖父の死以来、飛び回るような忙しさで夫の死の後始末をしている祖母には羽根が生えてきた。あちこち移動する

「言葉の日常」#シロクマ文芸部

 子どもの日常を記しながら、自分は子どもの頃どんなことを考えていたのかを思い出す。 「今…

泥辺五郎
2か月前
19

「桜の花びらを呑み込む蛇の話」#シロクマ文芸部

 春の夢、と名前をつけられた蛇がいる。桜の花びらを主食としているから肌が桜色に染まったせ…

泥辺五郎
2か月前
17

「言葉を散らして掃き寄せる」#シロクマ文芸部

「花吹雪」と題した文章を、こんな風に締めた。  そんなことを書いてから約一か月半が過ぎた…

泥辺五郎
2か月前
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「風待ちロマン」#シロクマ文芸部

 風車が止まったので鍋で煮込んでいたシチューが冷えてしまったの、と妻が言った。この町の動…

泥辺五郎
2か月前
24

「入学魔法」#新生活20字小説

黄色の学帽が園児を小学生に変えてしまう。 シロクマ文芸部の企画「新生活20字小説」に参加し…

泥辺五郎
2か月前
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「あの頃に戻ることはできないけれど再現動画は撮れる話」#シロクマ文芸部

 変わる時は突然訪れるわけではなく、日々少しずつ変化している。息子の小学校用体操服などを…

泥辺五郎
3か月前
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「執筆怪談」#シロクマ文芸部

 始まりはバイトをさぼる口実だった。当時入院中だった父方の祖母の見舞いに行くから、と。あまり良くないようなので行けるうちに行きたくて、と、バイト先に電話を入れた。本当は友達に遊びに誘われたからだった。  その後本当に祖母の具合は悪くなり、亡くなった。  小説執筆を始めた頃には、父方の祖父が施設に入っていた。私は祖父が亡くなる話を書いた。それから間もなく、本当に祖父は亡くなってしまった。  ただの偶然に過ぎないし、元々死期の近い人たちではあった。しかし私の嘘や創作が二人をよ