【SaaS企業向け】ミッド〜エンプラ開拓のためのBDR・新規開拓/顧客獲得戦略
DORIRU株式会社で代表取締役社長をしております小林です。
BDR書籍の出版をきっかけにBDR施策に取り組みたいと考えているIPO前後のSaaS企業向けにBDRに関わる情報を深く知ってもらいたいと考え、noteを開始してみた。
ここ数年、新規の顧客獲得戦略の一つとして中堅〜大手企業の未接点開拓、いわゆるミッドマーケット〜エンタープライズ開拓としてBDRを取り入れるSaaS企業が増えてきた。背景にあるのは中堅以上〜エンタープライズ開拓戦略を推進し、掲げているARR目標の達成を目指すためだ。(T2D3を達成しユニコーン企業になるためという背景も含まれる)
ここでいうBDRというのは単に白地リストにアウトバウンドコールをして新規アポを獲得することではない。SaaS業界の関係者の中でも「BDR」と「アウトバウンド」の正確な意味を理解している人が相当少なく、BDR=アウトバウンド、アウトバウンド=BDRといった間違った理解で認識しているのが現状だ。
BDR強化のためにマーケ投資(広告宣伝費増)を積極的に行っている成長企業が目立っているが、ここ最近よく感じるのは、顧客獲得戦略を考える際に「ターゲット顧客ありき」ではなく、「施策ありき(BDR)」で考えてしまい、施策先行型でBDRを開始し、短期(3ヶ月〜6ヶ月未満)で施策をストップしてしまうマーケ責任者や成長企業が多いこと。(「SaaS界隈では手紙施策やBDRがエンプラ開拓に相性良いらしく、とりあえずスモールスタートで試してみようか!」などの安易な考えで施策を開始してしまうなど)
また、SDRとBDRでFSのアサインルールやマネジメント、初回商談や二次商談における提案フロー、案件フェーズ設計などの基本的な運用ルールや体制も整備出来ていない中で、BDR経由で獲得した商談から中々案件化率が伸びない、受注に至らないのでROIが合わないため施策を停止しようなどが非常に多い。
マーケ経由でリードを獲得するSDRとは異なり、BDRは未接点企業、いわゆるリード情報が全くない状態から様々な手段を用いて潜在顧客へアプローチするため、初回接点〜受注までの道のり(リードタイム)が想像以上に長い。特にEBUセグメントに関しては商談創出すら難易度が高く、求めている人物のオプトイン情報(リード)を獲得することすら困難な領域だ。
冷静に考えれば誰もが分かる内容にも関わらず、BDR経由で獲得したアポ/商談をSDR経由で獲得したアポ/商談と同じ提案フローや提案内容で展開してしまったり、受注までのリードタイムを加味せずに営業組織における翌月の月次受注計画内に盛り込んでしまっていたり、中堅以上の商談獲得単価をSMB開拓時のCPAと同等で設定してしまったりと(調達理由や他事由でCPAを想定より低く見積もるのは企業側の単なるエゴである)・・BDRの概念や基礎情報が分からない中で施策を開始してしまうと事業成長のためのエンプラ開拓が単なるテレアポ施策になってしまったり、短期で施策自体をペンディングしてしまう可能性が高くなる。
・・・考えてみてほしい。(チャネル拡張フェーズの企業が準顕在層を獲得する為のリード獲得施策である比較サイトを例にしてみた)
比較サイト経由で獲得出来る1リード単価が1.5万円と想定し、月間30件程の流入、そこからの有効リードの割合が50%程度、そこからの商談化率が30%、商談化数5件と仮定した時に商談獲得単価で9万円程だ。(ISの人件費や間接費は含めていない)しかも獲得した商談全てが自社のライトカスタマーにあたる対象顧客・商談獲得対象者(意思決定者以上の役職)とは言えないはずだ。それでいて中堅以上の未接点からCPA3万円で考えている!なんてどう考えてもロジックが成り立たない。
※ここ最近の比較サイト経由から流入するリードの質も比較検討フェーズ顧客ではなく、調査収集フェーズ手前のようないわゆる潜在顧客が多かったりする。資料請求のCVボタンをクリックする方も多くが担当者レベルのレイヤーが多い。
アウトバウンド・BDR経由で獲得するアポ/商談に関して一言で表現するとしたら「対象(ターゲット)顧客×温度感が高くない×フィールドセールスの提案力次第」となるような案件だ。ここの領域に注力出来ないのであればマーケ経由で獲得するSDRを極めることしか解決策がなく、逆にここの領域を極めることで競合他社より多く受注を獲得でき、連続的な事業成長が実現出来る。何を売るかも大切ではあるが、それ以上にどうやって売るかの方が顧客獲得においては大切だ。
今回の記事では成長企業にとってエンタープライズ開拓・BDR戦略が欠かせないものの、BDR施策がマッチする企業の「最適な事業フェーズ・ビジネスモデル・施策の開始タイミング」について、成長企業が正しくBDRを運用出来るように簡単に解説していこうと思う。
BDR開始における最適な事業フェーズとは
結論から言うとBDRがマッチする最適な事業フェーズは「チャネル拡張フェーズ」の企業だ。(テストマーケ/セールス含めたアウトバウンドに関してはどの事業フェーズでもマッチする)
※チャネル拡張フェーズとは「マーケによるリード獲得施策をやり切ったものの、事業成長を求め更にチャネルを拡張する必要がある(MK/SDRが完全にワークしている状態)」企業のことを言う。
逆に言うとBDRがマッチしない会社の特徴として下記があげられる。
獲得効率の良いイノベーターやアーリーアダプターの情報産業のみの獲得
リード獲得施策がオーガニックや紹介経由に限定されている
リード獲得施策のチャネル拡張に積極的ではない
※プロダクトや事業フェーズ、組織の成熟度に応じて獲得チャネルの拡張判断をしなくてはいけないのが成長企業というものだ。
よくSaaS企業から新規開拓・顧客獲得における相談を受ける中で特に多いのが「受注率から逆算したターゲット顧客との必要商談数不足」だ。
ここでよく失敗を犯しやすいのがターゲット顧客との必要商談数が不足しているから未接点顧客へのアウトバウンドコール(もしくはBDR)で商談数を確保しよう!という施策ありきの考え方。
まずは自社の事業フェーズ、どんな体制で、どのくらいのマーケ施策を走らせているのか、自社のACVにフィットする対象顧客の数はどのくらいいるのかを理解した上で、ターゲット顧客ありきでの施策検討・BDR施策の検討を行う必要がある。
他のマーケ施策と比較してBDRでは会いたい顧客、会いたい人物に直接リーチし、いきなり商談機会の創出が出来るので目標商談数を達成するための施策として取り入れたいと考える企業、マーケ責任者は多い。施策を開始するにあたって事業フェーズがマッチしないと獲得した商談から中々受注が発生せずにCACが想像以上に高くつくなど様々なリスクもあるというのがBDRだ。
別件で、海外のSaaS企業の話になるが、BDRによるABM活動もスポット型施策であるイベントなどのマーケ予算を活用するケースが多いとのことで、顧客獲得におけるマーケ投資を現時点でどのくらい行っているか(チャネル数・投下金額)がBDR施策開始にあたり重要な検討指標となる。
SaaSのビジネスモデル
ビジネスモデルというか、分かりやすく伝えると「プロダクト単価(LTV)・アプローチ先の規模(SMB/MM/GB/ENT)」がBDR施策とマッチするかを検討する際に最も重要な判断軸となる。
アプローチ対象先がSMB層(零細〜中小企業)の場合は受注までの意思決定構造が非常にシンプルでトップダウン型アプローチにより初回接点から受注までのリードタイムが短く、導入スピードが速い分、導入後の解約率が高い。(一般的なSMB層のチャーンレートは3〜7%)
そのため、既存顧客の割合をSMB層で構成している前者のケースはBDR施策がマッチしない上に顧客数が増えれば増えるほど解約が増え、その分新規顧客の獲得に注力しなければならず負のサイクルが出来る。
BDRがマッチするケースでは各ターゲットセグメント毎のLTV/CACを可視化することで、仮にBDR経由での商談化率・案件化率・受注率が低く、CACが高くなるセグメントでもLTVが高いセグメントであれば投資回収効率で考えれば正当性が増す。短期的に回収可能なSMBセグメントよりもEBUセグメントへの投資を厚くすることで非連続なARR成長に繋がる。
BDRの開始タイミング
まず前提としてBDR開始にあたり「扱っているプロダクトのACV及びLTVが高い状態(=選択出来るマーケ施策が豊富)」にあることが条件となり、この条件に当てはまらない場合はBDRを開始するべきではない。(スポット型施策の中で一部内製で手紙送付を行うなどはあり)
以下のような課題感を感じている企業で最適な事業フェーズであれば開始タイミングとしてはベストだ。
マーケやSDR部隊も稼働しておらず、リファラルなどの獲得チャネルのみで新規開拓を行っている企業はBDRではなく、まずはマーケによるリード獲得をメインとしたインバウンド施策から考えよう。
急激な事業成長を求めており、プル型施策のみだと顕在層のみの流入しかないため限界
リード獲得施策をやり切ったものの、事業成長を求めチャネルを拡張する必要がある
他マーケ施策(比較サイト等)経由でのMQLからの商談化率が低下(コスト高騰)
下記のようなケースでもBDRの開始タイミングとしてはベストになるので参考にしてほしい。
◆ケース
マーケ経由によるリードジェンを強化し、新規リード数は増えたが、商談数が増えていない場合。(特に比較サイト経由で発生する事象としてリード獲得単価は低いもののリードからの商談化率が想定より低く、商談獲得CPAが高騰している場合がある。)
◆確認事項
比較サイト経由の月間リード獲得件数、有効リードの割合、有効リードからの商談化率、商談獲得CPA。加えて有効リードが少ない課題に対する要因分析と改善アクションは具体的にどのようなことをされているか?また歩留まり改善にリソースを多く割いてSQLコンバージョンの改善を図ることを優先するのか、それとも他施策で商談獲得CPAが良い施策(BDRなど)にリプレイス、もしくは並走で検討されているのか?)
◆解決策
課題の特定を行なった上でABM戦略を用いたBDR戦略により、自社で定めているターゲット顧客、例えばACVが高いであろう顧客に対し、最適なタイミング最適な商談獲得対象者に向けて安定的な新規の商談創出を実現する。商談獲得における想定CPAはマーケ施策と比較して1/3〜1/5と量・質・ROI観点からも効果が見込める
【番外編】直販ではなくパートナーサクセスとしてのBDR施策
実はここだけの話、労務管理クラウドを展開する"SmartHR様"と面白い取り組みを行ったことがある。
マーケ及びIS領域に対してパートナーサクセスという観点からアウトバウンド専門のトスアップパートナーとして参画・長期間支援させてもらった。
固定月額制(サブスク)、SaaSビジネスにおいて受注ももちろん重要だが、受注以降の継続利用が最も重要だ。導入までの期待値と導入後の実態の乖離により短期チャーンに繋がるようでは本末転倒である。
お取り組みをさせてもらった際にカウンターパートとしてご一緒させてもらったSmartHR様側の推進リーダーの方とよく話し合っていたのはマーケ経由で獲得するインバウンドリードであれば、初回の顧客接点での期待値を自社でコントロール出来るが、トスアップの場合、初回接点はパートナー企業からの紹介になるため、「期待値を高めすぎずに、興味を持ってもらう」にはどう案内すべきか、という相反するような課題に対して「どういった形で案内することで期待値を調整できるか」この点に関して、日次・週次・月次で議論しながら改善していった。
終わりに・・
あらゆる企業が成長を求め収益を拡大していく中で、新規顧客の開拓は最重要課題の一つになっている。競合企業が増えれば解約によって既存顧客からの収益は減少するなど、新規開拓を継続して行なっていかなくてはならない。
新規開拓にはプル型とプッシュ型の戦略があり、本記事を見ている成長中SaaS企業の方ではプル型施策は既に着手しているのではないか。ただプル型施策で流入する顧客は顕在層であるため獲得出来る顧客層に限界がある。したがって自社が求めているターゲット企業に対して、能動的なアクション(プッシュ型による未接点開拓アプローチ)を行なっていく必要がある。
また、比較サイトやリスティング、SNS広告、フォームマーケ施策など、各マーケティング施策経由で獲得したリードからの商談化率が低下し、CPAが高騰しているという課題を感じているのではないか。
このような状況におかれている時に取り組みを是非検討してほしい施策が"プッシュ型のインサイドセールス手法であるミッド〜エンプラ開拓のためのBDR"である。
私の会社、DORIRU株式会社(https://doriru.co.jp/)では「成長企業の新規開拓の悩みをなくす」をミッションに掲げ、様々な成長SaaS企業のBDR支援を行なっており、未接点の中堅〜大手企業との新規商談創出を安定的に行うサービス「DORIRU顧客獲得支援」というサービスを展開し、多くのSaaS企業のBDR支援を行なっている。
単なるテレアポ代行会社や総合型の営業代行会社、立ち上げ初期のアウトバウンドを専門に行う小規模代行会社ではなく、強み・支援範囲をBDR(中堅以上の新規商談創出)に絞り、ターゲットとする顧客もIPO前後の成長中SaaS企業(自社プロダクト保有含む)に限定しているため、他社と比較して圧倒的に専門性が高いというのがDORIRU独自のケイパビリティだ。
我々DORIRUの競合企業はどこの営業代行会社なのか?ということをよく聞かれるのだが、ここは声を大にして言いたい!そもそも営業代行会社が競合ではない。セレブリックスさんやスマートキャンプのベイルズさんが競合ではないのだ。
そもそもDORIRUが提供しているサービスは"営業の代行"ではなく、「マーケチャネルの一つとした顧客獲得戦略における対象企業且つ未接点企業の中堅〜大手企業との新規商談創出」なのだ。
例えば、通常の営業代行会社が「テレアポ・トークスクリプト」と表現するところを私達は「プッシュ型の音声マーケ・音声版LP」と表現し、対象企業且つ対象となるキーパーソンの耳に届ける一つの手段としてコールチャネルをメインとしている。
※インバウンドにおけるリードジェンのケースでメディアや媒体から情報収集し、サービスLPに遷移し、視覚情報を使って最終的にCVボタンをクリックしリードが発生する。これらを私達は全て音声から入っており、途中離脱が起こらないような設計で会話を構成し、LPでいうCTAが音声で言う日時打診だ。お問い合わせフォーム内の必須入力部分は私達でいうとBANTC情報のヒアリングだ。
じゃあどこが競合なのか?、、対象とする企業様の規模感によって変わってくるのだが、スタートアップから中堅企業までであれば「新規の顧客獲得における各マーケ施策」が競合で、エンプラ企業になると「ABM戦略による営業DXツールを提供しているベンダー」が競合となる。
ここまで述べても参入障壁が低い営業代行業界は第三者からすると他社との違いが分かりづらく、理解しづらい部分でもあるので、次回は具体的にどんな部分が、どう違うのかを説明する記事を更新しようと思う。
「BDR戦略を開始するにあたって何から着手するべきか?」「インサイドセールス(SDR/BDR)業務のアウトソースを直近、もしくは今後検討している!」「インバウンド施策によるリード獲得が鈍化し、BDRによる顧客獲得を積極的に行なっていきたい!」など困っている企業、マーケ責任者(経企・ISM・営業企画)の方がいたら是非DORIRUまで問い合わせをしてほしい。
https://doriru.co.jp/contact/
もしくは、私のLinkedin宛に直接メッセージをもらえれば、即日で対応出来ますのでお気軽にご連絡下さい。
私のLinkedinアカウント:https://www.linkedin.com/in/tatsuhirokobayashi/
また、「BDR強化のためマーケ投資を加速させているIPO前後のSaaS企業様」へ、私達のアカウントセールスチームよりお手紙やDMをお送りする機会があると思いますので、是非オープンにBDR戦略や顧客獲得戦略全般について議論する機会をいただけますと幸いです。
【注意】
逆に低CPAでのSMB開拓(1アポ1万円など)や単なるテレアポ代行・アウトバウンド代行・営業代行、成果型での依頼のみしか検討出来ない企業、BtoBのマーケや顧客獲得に理解がない企業、マーケ部門やマーケ施策すら行なっていない企業(社長がトップセールス)などはうちのサービスと相性が確実に悪いため、他を当たってもらった方がいい。
また、「獲得効率の良いイノベーターやアーリーアダプターの情報産業のみの獲得」「リード獲得施策がオーガニックや紹介経由に限定されている」「リード獲得施策の拡張に積極的ではない」などこれらに該当する企業もうちとは相性が相当悪いので、成果型のテレアポ代行に問い合わせしてもらうか、立ち上げ3年未満の気合いと根性がある小規模営業代行会社(社長1名他業務委託複数名など)に問い合わせをしてもらった方がハッピーだと思う
(・・成果型はリスクがない上にCPAが安いというのが売りだが、安定供給無しと有効商談に繋がる商談トスには縁がない、小規模代行は依頼費用は中堅〜大手の半分以下で伴走も厚いというのが売りだが、立ち上げ初期のみコアメンバーが入り、一定立ち上がった段階で再委託に移行しクオリティダウンとBDRではなく単なるアウトバウンドというのが事実だ。)
申し訳ないが、これらに該当する時点で成長が失速するスタートアップになってしまうのは確実だろう。プロダクトや事業フェーズ、組織の成熟度に応じて獲得チャネルの判断をしなくてはいけないのが成長企業というものだ。
著者について
小林 竜大(こばやし たつひろ)
DORIRU株式会社 代表取締役社長
1990年、埼玉県吉川市生まれ。
BMW正規ディーラー、投資用不動産の営業経験を積み、2017年3月にギグセールス株式会社を創業。
累計300社以上の新規開拓・アウトバウンド営業と向き合い、独自のBDR理論を構築。「短期間でのBDRチーム構築」について定評がある。
2023年1月、DORIRUに社名変更、現在に至る。