Dr.コトー診療所2003第10話感想

◇宣告

巽さんの硬膜外血腫のオペを終え、すぐさましんちゃんのオペに移るコトー先生たち。
息付く暇もない……大変だ。
「傘を抜くと同時に、大出血を起こす可能性がありますから」
「はい」
「抜きます」
ここ、わかっててもいつもめちゃくちゃ緊張する。
祈るような気持ちで見ちゃう。
大出血起こらなくてほんとに良かった。
しんちゃんのオペも無事終わり、安堵する一同。
しかし、努さんだけがなんの反応も示さず……。

夜が明けて、目が覚めた巽さんは一言も喋らない状態。
そして診療所にほかの患者さんはいません。
「まだ、誰も来ないの……?」
彩佳さんと和田さんの見つめる先には、空の待合室でぼんやり佇むコトー先生。
寂しげな背中が悲しい。

努さんは港で海を眺め、星野さんに声をかけられても避けるように立ち去ってしまいました。
この辺ほんとつらいわ。
たむろしていた、いわおじや床屋さんたちに声をかけても、診療所へ行くのは避けているようで逃げられてしまいます。
ああもう……ひどいよ……みんな。

診察室、コトー先生は椅子に腰かけてぼうっとしています。
目に見えて落ち込んでるのが本当につらい。
彩佳さんが話しかけてもうわの空。
「ブッシュの前の大統領、誰だったか覚えてます?」
和田さん、唐突にクイズ!
「え、クリントンでしょ」
「じゃあ、その前は」
「ブッシュ」
「その前は」
「レーガン」
「その前は」
「カーター」
「その前の前の前は?」
「……誰だっけ」
「ほらね? すぐに出てこんでしょ。人間の記憶なんてそんなもんです。時間が経てば、またみんな前みたいに来てくれるようになりますよ! ね!」
「和田さん、それ前すぎ……」
このツッコミどころしかないクイズ! いつ見ても笑っちゃうんだよなあ。
和田さんなりにコトー先生を元気づけようと出してくれたクイズなんだけど、コトー先生の記憶力が良いせいですごい過去まで遡んなきゃいけなくなってる。(笑)
彩佳さんも、和田さんの意図はわかってるから遠慮がちに突っ込むの面白すぎる。
「……ほんとにそんな日がくるのかな……」
珍しいコトー先生の弱音……。
何も言えなくなってしまったところで、扉の開く音が!
パッと反応する3人。
「誰か来ましたよ!」
「あんまり期待しない方がいいわよ。きっと、ヤギのよしえでしょ」
と、そこで明らかに人間の咳払いが。
「ヤギはメェ~でしょ」
「ですよね」
あーーーー!!!! 2話のリフレイン!!!
感情がぶっ壊れるーーー!!!
診療所トリオへの愛しさが爆発する!!
可愛い! みんな可愛い!
嬉しくてたまらないって感じの彩佳さんと和田さんにようやく笑顔を見せるコトー先生。
愛しさしかない~~!
あーーでもこの先見たくないなあ……。やだよー!
診療所に来たのは、シゲさんや漁師たち。
「シゲさん、何よもったいぶっちゃって! どうしたの? どこか悪いの?」
「コトーはいるかよ」
「……そりゃあいるけど」
笑顔で迎えた彩佳さんが、ここで不穏な空気を感じて一気に表情変わるのつらい。
「なんでしょうか」
「あんたになあ、頼みてえことがあんだよ」
「はい……」
「……回りくどいことは言わねぇよ! な! 今すぐな、この島を出ていってくれ」
「シゲさん!」
「この島にな! 人殺しはいらねぇんだよ」
「シゲさん」
「そんな、人殺しなんて」
「人殺しは人殺しだろ! こいつは役場で言ったじゃねえか。女子高生を見殺しにしたってなあ」
むり……。コトー先生が可哀想すぎてつらい。
心がボロボロになる。
耐えられん……。
「ちょっと待ってくれよ! 何言ってんだよいきなり!」
和田さんが怒るも、シゲさんは、努さんがしんちゃんよりも巽さんを優先して手術したことに納得できてないと言います。
「だからそれは、コトー先生がふたりとも救いたかったからよ!」
「もしもあのとき、しんちゃんを優先してたら巽さん今ごろ命を落としてたかもしれないのよ!」
彩佳さんが説明しても、シゲさんは、しんちゃんが長い間放っておかれたことは事実で、努さんは今も眠れずにいるのだと力説。
「てめえ、信一を二の次だって考えてるってことじゃねえのかよ!」
「そんなことはありません! 決してそんなことは!」
黙って聞いていたコトー先生が唯一反論した言葉。
ふたりとも救けたいからそうしたんだって言ってるのにね。
コトー先生がしんちゃんを二の次だなんて思うわけがないよ。
「一週間やらあ。その間によ、この島を出てってくれ!」
コトー先生の表情が悲痛としか言えない……。もうやだよ。

◇不和

「そんなこと言ったのシゲさん!」
茉莉子さん激怒。
そりゃ怒るよ。コトー先生のこと、茉莉子さんだって大好きだもんね。
「俺はみんなのことを思ってんだよ! 俺はみんなとよ、努のこと、努のためによ……」
シゲさんの気持ちもわからなくはないんだよ。
しんちゃんの手術のあと、シゲさんは素直に喜んでたもんね。
でも努さんの表情とか、納得できないってこととか、眠れないって話を聞いて、努さんのために言ったことだってわかってる。
わかってるけどさ……。

「人殺しはいらねぇ……」
呆然と呟く星野さん。
「先生すっごくショックだったみたいでその後全然口きかなくなっちゃった」
ううう……。つらい。
「あの馬鹿」
星野さんも苦々しい気持ちだよね。
「診療所、今日も患者さん来なかった」
「土砂崩れのときだって、あんなに必死になって子供たち救け出して、一睡もしないで2つのオペこなしたのよ!」
「しんちゃんだって巽さんだって、コトー先生がいなかったら絶対救からなかった。なのに出てけなんて!」
怒りの彩佳さん。
ね、ほんとひどいよね!
彩佳さん言いたいこと全部言ってくれる。
「ねえお父さん。コトー先生、なんとかしてあげることできないの?」
「うん……」
「巽さんの事件がほんとだったとしても、今のままじゃコトー先生がかわいそうよ」
昌代さんの優しさに泣きそうになる。
星野家大好き……。
「こんなに一生懸命、みんなのこと診てくれてるんだし」
「そうよ。先生をこの島に連れてきたのお父さんでしょ?」
昌代さんと彩佳さんの問いかけに答えられず、箸を置いて外へ出てしまう星野さん。
胃の痛みを感じながら……。

診療所ではデスクに資料を広げ、ぼんやりするコトー先生。
電話の音にも気づかず、和田さんの声にハッとしました。
電話は東京の大学病院から。
広げられた資料と電話に和田さんは……。

漁港では星野さんとシゲさんが言い合い。
しかしシゲさんも意地になってるし、口が強いので決裂。
心配そうに原さんが声をかけます。
「星野さん……」
「そうなんだよ。……あいつにしてみれば、裏切られた思いなんだよ」
「星野さんがあいつを連れてきたのは、何か感じるもんがあったからだろう」
「普通の医者とは違うって、そう感じたからじゃねぇのか?」
原さん、疑問形だけどこれは原さん自身の思いでもあるよね。
コトー先生は他の医者と違うって感じてるってことだよなあ。
「俺は20年、医者を探してきた。コトー先生はそれまでのどんな先生とも違ってた」
「それを無理やり……」
「剛利さん。あの事件に触れない方がいい、誤解を生じるから黙ってた方がいいって言ったのは、俺なんだよ」
星野さん……。それで今コトー先生が責められてるのは、たまらない気持ちだろうなあ。
でも星野さんが悪かったわけじゃないよ。

◇事件の真相

病室ではコトー先生が巽さんの病後を見て、退院を告げたところでした。
「なんで俺を救けた? あのまま俺が死んでも、いや俺が死んだ方が、お前にとっちゃ好都合だったんじゃないか」
「……医者として、目の前で死にかけている患者さんを放っておくことなんかできません」
巽さん、わかっててこの質問したな。
コトー先生がこう答えることはもうわかってた。
コトー先生の真実の姿をこの島で見てしまったから、余計に悔しいんだろうな。
「じゃあなんであの日お前は妹を置き去りにしたんだ!」
そうなるよなあ。
あの日の医者と、今目の前にいる医者が、巽さんには同一人物に思えないんだろうなきっと。
「『責任はすべて自分にある』……お前が言ったのはそれだけだ。そんな言葉で納得できると思うか」
「人がひとり死んでるんだ。たったひとりの妹が」
唐突に奪われた肉親の命。
確かにきちんとした説明がなければ、納得はできないもの。
役場でもそうだったけど、コトー先生は自分が責任を負うために、真相を説明しなかった。
話せば言い訳になると思ったのか……。
でも遺族は特に、その真相の説明を望むよね。
「あの日……僕は医者じゃありませんでした」
ついに、コトー先生の口から語られる事件。

いつかコトー先生が言っていた「大学病院の忙しさは島の比じゃなかった」という話を思い出します。
長引いた手術を終えて仮眠を取ってるところに2人運ばれてきたって連絡が入るの、地獄でしかない。
人手不足どころの話じゃないよなあ。
唯一動けた研修医の三上先生は、男性の方の患者に誤った処置をしてしまい、コトー先生は厳しい口調で指示。
なんとか心拍は再開するものの、危険な状況に変わりなく、緊迫した雰囲気。
そんな中、三上先生はなんと初めての当直。
経験が少ない上に、病院関係者と聞かされてしまいすでにパニックを起こした状態でした。
治療するのに、病院関係者とか余計な情報すぎるよなあ。
誰が言ったんだかね。
コトー先生が走って巽さんの妹の方に行き、診察をするも、男性の患者がまたも危険な状態に。
まだ意識のある妹さんを三上先生に任せることにしたコトー先生は、指示をしたうえで男性の患者の方へ駆けつけようとします。
パニック状態が収まらず追いすがる三上先生へ、コトー先生は
「もう、ミスは勘弁してください」
と伝えるのでした。
「ミス……」
と呟く三上先生。
ショックだったんでしょうね。
結果的にパニックにトドメを刺されたようなかたちになってしまった。
三上先生はプレッシャーに耐えきれず逃げ出し、男性の処置を終えたコトー先生が妹さんの方へ向かったときにはすでに手遅れの状態……。
巽さんからしてみれば、診てくれるはずの医者が逃げ出し、もうひとりの医者は別の患者を優先した。妹は見捨てられたと感じたんだろうな。
「僕は心のどこかで、逃げた三上医師に責任を押し付け、傍観者になろうとしたんです」
コトー先生は、一瞬でもそんなふうに考えてしまった自分のことを許せなかった……。
だから巽さんや島のみんなに、自分の責任だって言ったんだ。
「僕は、忙しさの中で明らかに何かを見失っていた」
「ふざけるな!! 診てもらう人間はどうなるんだ! あんたら医者にとっちゃ大勢のうちの一人かもしれんが、こっちの命はひとつなんだよ!」
「その通りです、巽さん」
「だから、僕はこの島に来たんです」
扉の外で、話を聞いている彩佳さんと和田さん。
くしくも島民の中でもあの日役場へ行かなかった2人だけが、真相を知ることになるのか。
「医者として、僕はやり直したかった」
「この島では……どんな治療をするにしても、すべてが僕ひとりの責任です」
「医者がひとりであろうとなかろうと、医者である以上、人の命に責任を持つのは当たり前のことです」
逃げ場のないこの島で、自分の肩に乗る島民の命、その責任を背負いながら医者として生きること。
それがコトー先生の"やり直し"。
あまりにも重い……。
「あの夜……僕はそれを、経験のない三上医師に責任を押し付けようとした」
「あの日の僕は……医者じゃなかった」
責任感の強いコトー先生だからこそ、あの日の自分を医者だと思えないでいる……。
コトー先生は、巽さんと同じかそれ以上に、あの日の五島健助を責め続けてるのかもしれない。
「適切な処置をしていれば、妹さんは死なずに済んだんです」
後悔と申し訳なさ……コトー先生の握った拳にどれだけ悔いても悔やみきれない思いが滲んでる。
「本当に、申し訳ありませんでした」
涙を零しながら深く頭を下げる先生。
「お前がどんなに悔やんでも、謝っても、俺の妹は帰ってこない」
「あんたが人の命に責任をもつと言うなら、その重さを忘れるな」
「そしてそのことから逃げるな!」
「医者ってのはそのくらい神聖な仕事であるべきなんじゃないのか」
「だから人様から、先生と呼ばれるんじゃないのか」
巽さんの言葉もまた、これ以上ないほど重い……。
でも受け止めて、進むしかないんだ。
あらためて医者という職業の厳しさを感じます。
扉の外で最後まで聞いていた彩佳さんと和田さん。
コトー先生に声をかけることはできず、先生は2人に巽さんの退院の手続きを依頼しました。

診療所の外、座り込むコトー先生のもとへ来た彩佳さん。
「巽さんの言ってることは全部正しいよ」
「僕は、医者としてやり直したいと思ってこの島に来たけれど……結局は、逃げていただけなのかもしれない」
「そんなことないです。そんなことあるわけないじゃないですか!」
「だってわたしは、先生のそばでずっと先生を見てきたんだもん」
「先生は逃げたことなんか一度もないです」
そう! ほんとそれ!!
彩佳さんほんと言いたいこと全部言ってくれる! そうだよ!
「どうして僕は、医者をやめられないんだろう」
「あの事件があった後も、医者を辞めようとおもったことは一度もないんだ」
「誰か……僕を必要としてくれる人がいるんじゃないか」
「僕を、必要としてくれる場所があるんじゃないか」
「その僕に、手を差し伸べてくれたのが君のお父さんだったんだ」
「だから、僕はこの島に来たんだよ」
これは3話で、待合室で彩佳さんが先生に尋ねた「先生はどうしてこの島に来たんですか」に対する回答ですね。
誰かに必要とされたかった先生。
あることないこと記事に書かれ、バッシングを受けて、大学病院に責任を押し付けられた部分もあったはず。(コトー先生は自分の責任だと思ってるけど)
それでも、医師として誰かに必要とされたかった……。
わかってたことだけど、コトー先生って、本当にただただ人を救いたい人なんだなあ。

◇コトー先生と和田さん

大学病院との電話を終えたコトー先生の後ろで、話を聞いていた和田さん。
「胃がんの手術をされるんですか?」
「……うん」
「東京で?」
「聞いてたの?」
「……すみません」
コトー先生、まさか聞かれてるとは思ってなかったんだね。
帰っていいですよと言うコトー先生に、和田さんは神妙な……というか何かに気づいているような……そんな表情。
「昔から……夢があってさ」
「これ(カメラ)持って、旅に出る夢」
「ほんとは昔、そんな暮らししてたこともあったけど。プロのカメラマンに憧れて」
敬語じゃない和田さんの口調。
まるで、友だちや仲間に話すみたいに。
「色々あって諦めて、島に帰って役場に勤めて……」
「島の役場勤めはなんだかつまんないなあって思ってたけど、この半年は面白かった」
「物凄く大変だったけど、こんな私でも人の役に立てたような気がしてね」
「こんなことは私の人生で初めてだった」
噛み締めるように話す和田さん。
コトー先生が来てから、手術の手伝いをさせられるようになって、最初は巻き込まれたかたちだったけど、今では立派な助手だもんね。
なくてはならない人だよほんとに。
コトー先生が来てから、和田さんは充実してたんだなあ。
こんなことは人生で初めてって、コトー先生の存在が和田さんに与えた影響の大きさを感じるよ。
「先生がこの島にずっといてくれるなら、私はこの診療所を手伝うよ」
俯いてしまうコトー先生。
「でもそうでないのなら…………」
顔を上げない先生の正面に座り、視線を合わせる和田さん。
「先生はなんも悪いことしとらん」
「巽さんの妹さんのことは、そりゃ可哀想なことだけど、先生はその研修医のことを庇ったんでしょ」
「悪いのは先生じゃなくてその」
「和田さん。それは違うよ、違うんだよ」
和田さんはどんなときでも先生のことを一番に考えてくれる。
本当に味方なんだよなあ。
だから和田さんと彩佳さんの存在は大きいし、安心できる。
でも、コトー先生としては絶対に言わせてはいけない(と思ってる)言葉なんだよね。「研修医のせい」っていうのは。
「胃がんの手術が終わったら、帰ってきてくださいね」
帰ってきて、かあ。少なくとも和田さんは、ここがコトー先生の帰る場所だって思ってくれてる。
そのことに涙が出そうになるよ。
「でないと私、本当に旅に出てしまうよ」
応えられず、また俯いてしまう先生。
「まあ、それはそれで、いいかもしれんけどな」
カメラを構え、ファインダーを覗き込む和田さん。
コトー先生は顔を上げますが、和田さんはシャッターを押すことなく、カメラから顔を離し、部屋を出ました。
このシーン、すごく好きです。
たくさんの人の写真を撮ってきた和田さん。
きっとこれまで「良い顔してる」と思ったとき、シャッターを押してきたんでしょう。
でも今の悲しそうなコトー先生の顔は、写真に残したくなかった。
いろんな人の笑顔ばかり撮ってきたから、シャッターを押せなかった。
和田さんの優しさとか、歯がゆい気持ちとか、そういうのが伝わってくる切ないけれど好きなシーンです。

◇許すということ

居酒屋まりへ訪れた巽さん。
原親子もいます。
「東京へは帰らないの?」
「帰れないよ……あいつがこの島を出てくのを見届けるまでは」
巽さんの言葉を聞いた剛洋くん。
強い目つきで巽さんに視線を送ります。
でも巽さんのこのセリフ、果たして本心かな。
コトー先生から真相を聞いて、自分の感情も本人にぶつけて……今はどうしたらいいのか迷ってるみたいに見える。
「あいつに命を救けてもらってもか」
「あんた、そうやって一生あいつを恨み続ける気か?」
それも、苦しい生き方だよね。
何より自分が救われない。
「人を恨むのは簡単だ。憎しみを相手にぶつけるだけだからな」
「俺も最初はそうだったよ。こいつの母親は島の医者の誤診で殺されたようなもんだよ」
「いい加減な診察しかしない医者が、俺はどうしても信じられなかった」
「それが仕事で、そのために勉強して、大学出て資格まで取った人間が、なんでそういう無責任なことをするんだろうってな」
自分の一番大切な人を、そんなかたちで失ったら医者を信じられなくなるのも無理ないよね。
「俺はこの半年間、あいつをずっと見てきた」
「少なくともあいつは、あんたの妹さんのことに関して悔やんでる」
「悔やんで、その償いをしようとして、この島で必死になって頑張ってきたんじゃねぇのか」
「俺は、俺はそう思う」
涙を浮かべる巽さん。
原さん言うこと、たぶんもう巽さんもわかってる。
だって、この数日で見て、知ってしまったから。
子供たちが自分に敵意をむき出しにするほど、コトー先生を慕う姿。
土砂崩れのとき、コトー先生が危険を顧みずに子供たちに寄り添ったところ。
島民に糾弾されても、ふたりとも救けるために巽さんの手術を行ったところ。
どれも、コトー先生がどれだけ命に対して誠実かを示すものだった。
「憎むより許すことの方が難しいかもしれないわね」
「でも残された人間は、それでも生きなきゃいけないのよ」
茉莉子さんの言葉、好きだなあ。
自分が生きていくために、幸せになるために、人を許すことも必要。
人を恨みながら生きていくのは、あまりにもつらいし苦しいから。
茉莉子さん、巽さんにほんの少しお酒を注ぎ、もうひとつの杯にも。
「それからこれは、妹さんに」
巽さんの心に寄り添う茉莉子さんの優しさ。
堪えきれず涙する巽さんが悲しい。
どうかこの先、幸せに生きてほしいな。

帰路の原親子。
巽さんのことを最初は悪い人だと思ったけれど自分たちを救けようとしてくれた姿をちゃんと見ていて、「今はそうは思わない」と言える剛洋くん、本当にいいこ。
「だけど、コトー先生も可哀想だ」
「お父さん、コトー先生のこと守ってくれる?」
「ああ」
ここ、凄く印象深い会話なんですよね。
剛洋くん、さっきの巽さんと原さんの会話を聞いて、お父さんはきっと先生の味方になってくれるって強く感じたんだろうな。
最初コトー先生のことをあれだけ強く否定し、反発していた原さんだけれど、これまでの姿を見てコトー先生をちゃんと認めているんだって剛洋くんは思ったんじゃないかな。
「お前ちょっと背が伸びたんじゃないか?」
「そうかなあ」
「ああ伸びたよ」
「早くお父さんみたいにでかくなりたいなあ」(背伸び)
「そうかあ、じゃこれでどうだ!」(肩ぐるま!)
はい、超絶かわいいポイント1000000点!!!
原親子大好き!!
超可愛い息子と超カッコイイお父さん。
ここ剛洋くんの仕草とか声のトーンとかほんとかわいいんだ。
100回見てもかわいい。
「お前、本土の中学受けてみたいのか」
「え?」
「もしお前が本気でそう思ってんなら、やってみろ」
「いいの?」
「ああ、やってみろ」
数日前は、茉莉子さんに"馬鹿なこと"なんて言ってた原さんだけど、実際成績上がってるし、何より息子の成長が嬉しかったんだろうなあ。
嬉しそうな剛洋くんがほんとに可愛い。
「俺明日コトー先生のとこ行ってくる。それでもっと勉強教えてもらえるように頼む。いいでしょお父さん」
「ああ」
目を輝かせる剛洋くん。
最初は原さん、コトー先生のこと信用するなって言ってたんだよね。
本当に変わったなあ……。

診療所の外、海岸で海を眺めるコトー先生。
「救けてください」
「お願いします」
「頼みます」
そんなふうに、医者として島民のみんなから必要とされていた時間。
誰かに必要とされたかった先生にとっては、島で過ごした半年はかけがえのない時間だった……。
「先生ーー!」
一番最初に自分を必要としてくれた星野さんが呼ぶ声を思い出して、ハッと顔を上げたコトー先生の前に広がる、美しい朝焼けの海。
目に焼き付けたかったんだろうなあ。
このシーンのコトー先生、消えてしまいそうなくらい儚い。

◇Dr.コトー、島を去る

翌朝、本土の中学の案内を持ってやってきた剛洋くんと原さん。
お父さんを見上げる剛洋くんと、微笑む原さんにほっこり。
でも診療所からは彩佳さんが飛び出してきて……。
「コトー先生が……」
「あいつよお、島、出ていきよった」
内さんの言葉に、ショックを受ける原さんと剛洋くん。
連絡を受けたのか、慌てて駆けつけた星野さん。
「なんも聞いとらんのか」
「なんにも聞いてないわよ! いつも通りに出ていって、気づいたらこれが」
彩佳さんが取り出したのは、『皆さんへ』という手紙と『退職願』の2通。
「どーも様子が変じゃった! 急に家へ来てよお、いつもは食わん饅頭美味そうに食ってよ、そいであいつ『さようなら』ってな」
「『お大事に』じゃなくて『さようなら』って言いよったんじゃ」
コトー先生、最後に内さんに会いたかったんだ。
たぶん、これまで内さんの往診行くたびにお饅頭とか甘いものを勧められて、「コトー、一緒に食べんか」とか言われる度「僕は遠慮しときます」って笑いながら言ってたんだろうな。
でも、島を出る前に、内さんと一緒にお饅頭を食べてから別れを言いたかった……。
『さようなら』なんて、つらいよ。
「ねえお父さん、どうして先生にちゃんと言ってくれなかったの!? 先生はこの島に必要な人だって、どうしてきちんと言ってくれなかったのよ!!」
誰かに必要とされたかった……彩佳さんはそれを直接コトー先生から聞いていたから、余計に悔しいんだろうなあ。
身近すぎる自分じゃなく、島民の誰かがそう言ってくれれば、先生を連れてきたお父さんがそう言ってくれてれば、って……。
東京へ行くこと自体は知っていた和田さん。
嫌な予感も多分していたけれど、辞めるなんて聞いてなかったし、こんなに決断が早いとも思ってなかった。
それだけに、和田さんもショックを受けてる。
胃がんの手術に行ったことを説明する和田さん。
「前にいた大学病院の患者さんがどうしても先生にって言ったらしい。それで先生、東京へ行く気に……だけど俺は、先生は帰ってくると思っとった」
島の外の患者さんに必要とされ、また自分を求めてくれる場所へ先生は行ってしまった……それを理解した彩佳さんの表情が切ない。
和田さんの声も悔しそう。
わかってて、あれだけ言っても止められなかったから。
たまらず走り出す彩佳さん。
コトー先生の手紙は、みんなへの感謝と謝罪……。
そして自分が去った後の、代わりの医師のことまで。
こんな手紙、悲しすぎるよ。
港についた彩佳さん。
定期便はもう出てしまった後でした。
ここからの彩佳さんの叫びが、本当にもう泣いてしまう……。
「出てっちゃったのよコトー先生が! 診療所辞めちゃったの!」
流石に動揺するシゲさんや努さん。
「ひどいよシゲさん……みんなひどいよ!!」
「シゲさんにあんなこと言われて、先生がどれだけ傷ついたか……どうして先生の気持ちわかってあげられなかったのよ!!」
コトー先生のこと一番近くで見ていた彩佳さん。
きっと彩佳さんだって自分のことのように傷ついたよね。
目に見えて落ち込んで、ほとんど喋らなくなってしまったコトー先生のことが心配で、どうにかしてあげたいけれどどうにもできないことが歯がゆくて、悔しかった気持ちが伝わってくる。
「今までたくさんお医者さん、この島に来たけど、コトー先生みたいな人はいた!? あんなにみんなのこと考えて夜中でも朝早くでも、嫌な顔ひとつしないで往診までしてくれた先生はいた!?」
「みんなのために必死になって、オペまでしてくれた先生はいた!?」
遠くから医者を呼んでは辞められ、呼んでは辞められ……それを繰り返して、いつからか希望をもつことをやめていた彩佳さん。
それでも看護師としてこの島のために働いてきたからこそ、コトー先生がやってきて島の医療が変わったことは誰よりも強く感じていた。
その価値を、得難さを、みんなだって感じていたはずなのに……。
「努さん、しんちゃんを後回しにしたのはしんちゃんを見放したからじゃない。どうしてそれがわかんないのよ!!」
「みんながあんなこと言わなければ、言わなかったら先生だって!!!」
「コトー先生……」
いつも強気で、どんなときも気丈に振舞っていた彩佳さんが泣き崩れる姿がつらい。
もう、このシーン見る度にぐちゃぐちゃに泣いてしまう。
そんな彩佳さんに驚き、ショックを受ける子供たち。
しんちゃんが、
「ごめん、彩佳姉ちゃん。俺が怪我なんかしたから……俺のせいだ」
って言うのが本当につらい。
ここで、さっきなおも言い募ろうとしていた努さんが、しんちゃんにこの言葉を言わせてしまったのは自分だと気づくような表情を見せます。
ずっと、しんちゃんを後回しにされたと考えて苦しくて眠れない自分のことばかりだった努さんが、一番大事な息子に責任を感じさせてしまったと気づいて、ようやく自分以外に目を向けられるようになるんですよね。
星野さんは、みんなのせいじゃない、コトー先生をこの島に連れてきた自分が悪いって言うけれど、コトー先生は星野さんのおかげで救われたんだよ。
星野さんが悪いわけないよ。

定期便の船で島を去るコトー先生。
曇り空で白く霞む島の影を見つめて、「ありがとうございました」と深く頭を下げます。
剛洋くんに教わった、酔わないおまじないの指。
鞄には、あきおじから貰った藁草履を乗せて……。
島から遠ざかる船でエンディング。

和田さんの写真は10話からは1枚。
デスクでぼんやりするコトー先生の後ろ姿……。
悲しい顔は撮りたくなかったもんね、和田さん。
切ない1枚です。

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