Dr.コトー診療所2003第11話感想

◇再会

雑踏。
電車やモノレールに高層ビル。
Dr.コトー診療所とは思えない光景から始まりました。
大学病院へやってきたコトー先生。
うーん、違和感。
熊谷幹事長という方が今回の患者さん。
広い会議室でオペについてのミーティング開始直後、メンバーの中に三上先生がいることに気づきます。
「今度のオペで僕は先生の助手を務めさせていただきます」
「うん」
「今の僕はあのときの僕とは違います」
確かに研修医時代の自信のなさとは打って変わって、コトー先生の手術のテクニックにも引けを取らないと、自信に満ちた様子。
「ですから今回は、助手としてでなくパートナーとしてオペに臨むつもりです」
「わかりました。よろしくお願いします」
プライドが高そうな三上先生。
コトー先生は応じつつ、"それより"腹水細胞診の再検査をしてほしいと伝えます。
まあ、助手かパートナーかなんて、気持ちの持ちようというか、そんなこと手術に関係ないしどっちでもいいもんね、正直。
確かにそれより大事なことは別にある。
三上先生、危うい雰囲気出てるなあ。

「この手術成功したら、ここに戻してもらえるようじゃないか」
熊谷幹事長の言葉に、少し動揺した表情のコトー先生。
そういう話になってるのかな。
でもコトー先生から言い出したことではないだろうし……奥村教授が勝手に条件つけて言ってきたんだろうなあ。
「頑張ってくれたまえ」
どこか他人事の幹事長に、丁寧に布団をかけ、コトー先生は語りかけます。
「熊谷さん。僕は全力を尽くします」
「でも、熊谷さん自身が頑張らなければ治る病気も治りませんよ」
「ふっふっふ。相変わらずだな」
「必ず治ると信じて、一緒に頑張りましょ」
ともすれば、幹事長相手に失礼だと言われかねないコトー先生の言葉。
でも、言われた熊谷さんは嬉しそう。
先生の言葉に笑顔を見せ、しっかり頷いてくれました。
ここ、好きなシーンです。
コトー先生は患者さんの身分がどんなものだろうと、それでへりくだったり、媚びたりしない。
ただいつも通り、「一緒に頑張ろう」って言ってくれる。
「相変わらずだな」って言われたってことは、大学病院時代もコトー先生は同じようなスタンスで接していたってことだし、こんなコトー先生だからこそ、熊谷さんは信頼してるんだろうなと思いました。

SPがついてるような、立派な個室の病室。
そこから出たコトー先生の前には、咲さんが立っていました。
月末に、勉強のためにドイツのハイゼルベルク大学へ経つ咲さん。
「島のみんなは元気? 和田さんは?」
「元気だよ」
ここで咲さんが和田さんの名前出すの、なんかいいなあ。
咲さんにとって、和田さんというコトー先生をそばで支えてくれる存在に出会えたのは大きかったもんね。
「コトー先生のことだから、オペが終わったら飛んで帰っちゃうんでしょう?」
咲さんがあえて五島くんじゃなく、"コトー先生"っていうの良いな。
咲さんの認識では、以前に想像してたのとは違う、島民たちに慕われる島の医者になったんだなあって。
でも、だからこそコトー先生の、
「辞めてきたんだ、診療所」
って言葉は、咲さんもきっとショックだっただろうなあ。

診療所の裏手。
ひっくり返った自転車と、ちぎれて破れてしまった旗。
悲しい光景だけど、それでも剛洋くんとクニちゃんが黙って自転車を起こすのが、諦めない姿勢みたいな感じで凄くいい。
でも旗のないポールを見上げる和田さんは、物悲しげ。

「なにがあったの?……どうするの、これから」
「なにも考えてない。考えられないよ」
「とにかく今は、目の前のオペに全力を尽くすこと。僕にできることは、それしかないから」
咲さん、心配だよなあ。
島に行って、良い顔になったコトー先生を見て、前向きな気持ちで別れたはずなのに、こんなかたちで戻ってきた先生を見たらほっとけなくなっちゃうよね。
安心してドイツに行けなくなっちゃうよ。

◇憂いの星野さん

胃痛で寝込んでしまった星野さん。
自室にはコトー先生からの手紙と退職願。受理したくなくて部屋に置きっぱなしにしてるのか、一度村長に渡したものをまた手元に置いてるのか、どっちなんだろう。

漁協ではシゲさんがいつも通り愚痴ろうとするも、漁師のみんなは沈んだ様子。
自分たちがコトー先生を追い出すようなことを言ったから、星野さんは責任を感じてる……まあその通りだよね。
(ちょっとは反省してください)
(いや、努さんのためだったってみんなの気持ちも理解はできるけどさ……)

星野さんに責任はないという茉莉子さん。
「でも寂しいね。コトー先生がいないなんて」
茉莉子さんの悲しそうな呟き。
喪失感がすごくて切なくなる。

星野さんの家には、内さんが煎じ薬を持ってきてくれました。
家に上がってという昌代さんに、
「いやーお前の亭主の顔なんざ、見たくもない! なあんでコトーを守ってやれんかったんじゃ! まったく! しょうがないなあもう!」
星野さんに聞こえるように言う内さん。(笑)
星野さんは本当に悪くないんだけどね。でも内さんの言葉はちょっと嬉しい。
コトー先生のこと大好きなんだなあって思うから。
内さん、コトー先生に救けられてからずっと頼りにして、信頼して、味方でいてくれてるんだよね。
ハッキリ言う性格だからこそ、コトー先生への内さんの思いが嬉しいな。

星野さんは夜、誰もいないがらんどうの診療所を尋ねて、その不在を身に染みて感じたようでした。
翌朝、港へ来た星野さん。
「俺はコトー先生を連れ戻しに行くんじゃないんだ。ひと言、謝りたいんだあの人に。こんなことに、なっちまったことを」
責任感のかたまりのような人だな。
確かにコトー先生を連れてきたのは星野さんで、事件に触れないでいようと言ったのも星野さんだけど、最初から事件のことを言ってたら島民がコトー先生を信頼するのはもっと遅かったはずだし……。
謝られても、コトー先生困っちゃうだろうなあ。
しかし直後、星野さんは吐血。
診療所に運び込まれました。
どうするって聞かれても、彩佳さんが動揺するのも無理ないよなあ。
周りから急かされたり聞かれたりしてパニクるのも仕方ないよ……。
氷をぶちまけてしまって、動きが止まって言葉が出なくなるのすごくリアル。
「聞こうか……コトー先生に」
「電話番号だったら、私が」
「……無理よそんなの。どうして今さら、そんなことできるの?」
自分たちが追い出したのに、いざ病人が出たら都合よく頼るのかって、コトー先生は絶対思わないけど、彩佳さんは思うよね。図々しいって。
島に医者がいないことのつらさを誰より知ってる彩佳さんや星野さんが、こんなかたちでまた苦しむことになるの悲しすぎるよ。

◇医者のいない島

夜、診察室で医学書を開く彩佳さん。
見ているのは胃がんのページ……。
そして、大学病院で熊谷さんの手術について準備を進めるコトー先生の元に電話が。
彩佳さんは意を決してコトー先生へ連絡し、星野さんが吐血したことを伝えます。
コトー先生は動揺しつつも、状況や処置について確認しました。
「全部、ひとりでやったの?」
「みんなに、手伝ってもらって」
「そう……よくやってくれたね」
コトー先生の労りの言葉に、思わず受話器を塞ぎ涙を堪える彩佳さん。
コトー先生の声が優しくて、あったかいだけに沁みるというか……。
張り詰めてたものが切れそうになって、なんとか耐える彩佳さんの表情に胸が痛む。
泣き声を聞かせて、これ以上心配させたくなかったんだなあ。
「先生、これからどうしたらいいでしょう」
涙声になるのもなんとか抑えてるのが本当に健気で……。
本土の病院へ行ってきちんと検査をと伝える先生。
潰瘍性の吐血と推察しつつも、
「他に悪い病気があってはいけないし」
と言う先生の言葉に、胃がんの可能性を考える彩佳さん。
不安だよなあ。
「僕のせいだね。僕が迷惑をかけてしまったから」
「先生のせいじゃありません。そんなつもりでかけたわけじゃ……」
先生を責めるつもりなんて彩佳さんには1ミリもないから、そんなふうに受け取られてしまうのはつらいよね。
でも責任を感じてしまうのがコトー先生なんだよなあ。
「コトー先生……?」
「ん?」
涙を流して、続けたかった言葉を言わなかった彩佳さん。
「……いえ。お忙しいときにすみませんでした」
本当は「帰ってきてください」って伝えたかったんだろうなあ。
でも、本当に都合のいいときだけ必要としてるみたいで言えない……。
ましてや先生が傷ついて、悩んでたことを知ってた彩佳さんだから、それは言えないよなあ。
「彩佳さん?」
「はい」
「お父さんのそばに、ついていてあげてくださいね」
「何かあったらすぐに電話してください」
「今、僕にできることはそれくらいしかないけど……」
「わかりました……ありがとうございます」
コトー先生、本当は今すぐにでも飛んでいきたいんじゃないかな。
でも、もう戻ることはできない。
もどかしいだろうなあ。

奥村教授がコトー先生とした、志木那島に代わりの医師を派遣するという約束を果たしていないことに焦る先生。
「たった1800人の小さな島なんだろ」
「小さな島だから困るんです!」
酷いよなあ。
人口が少ないために軽んじられてる。
早急にお願いしますと伝えても、いまいちな反応。
離島医療への冷たい反応がリアルで悲しくなる。
コトー先生、こんなんじゃますます不安になっちゃうよね。

三上先生は、熊谷さんの腹水細胞診の結果を伏せ、良性だったと検査結果を偽造してコトー先生に提出。
まずいよ……。患者さんのこと一番に考えなきゃならないのに、三上先生の目が曇ってしまってる。

島では星野さんが本土に行くのを拒否。
彩佳さんが説得を試みても頑なになっています。
「ガンでも俺はかまわねえ」
「島に医者がいねぇってこと。それはどんなに心細いことか」
来ては辞め、来ては辞めの繰り返しだったとき、星野さんがやっと巡り会えたのがコトー先生だった。
苦労が滲む言葉なだけに、コトー先生に会えたときの感動も伝わってきます。
「コトー先生がいないなら、死んだ方がい……」
すごい言葉……。星野さんのコトー先生への思いの強さは凄まじいものがあります。
そんな話を、外で聞いていた子供たち。
剛洋くんの家で、子供だけの秘密会議。
「と、東京へ行く?」
「シーー」
「俺とクニちゃんでコトー先生を連れ戻してくる」
「東京って言ったら、船乗ってバス乗って飛行機に乗って、そんで着いたらまた電車とかに乗るんだろ?」
「飛行機乗ったことあるのか?」
「ない……でもなんとかする」
「コトー先生、帰ってきてくれるかなあ」
「絶対帰ってきてくれるよ。星野のおじさん、ガンかもしれないんだぞ」
「じいちゃんみたいになったら俺嫌だ。おじさんは絶対死なせん!」
「金は!? 何万もいるんじゃないの?」
「そうだよ!」
「お前ら小遣い出せ! 持ってるだけ全部!」
「ここに出せ!」
出てくる小銭……一円玉、五円玉、十円玉……。
「「368円……」」
「だめだあ」
「どうすりゃいんだよ~」
「オイ……なにやってんだ」
ここ好きすぎて全部書き出しちゃった!(笑)
可愛いよなあみんな!
でも全員子供ながらに真剣で、コトー先生を連れ戻すために一生懸命。
みんな優しくて思いやりがあっていいこばっかりなんだよね。
1話ではゲロゲロ先生なんて言われてたのにね、コトー先生。
それに最初はみんなの仲間に入れてもらえてなかった剛洋くんが、今ではすっかりリーダー(サブリーダーかな)っぽい立ち位置なのも成長を感じて好き。
けど4人分で368円しかないのちょっと面白すぎる。
原さんの登場で子供秘密会議は中断したけど​─────。

◇Dr.コトーのステージ

ついに始まった熊谷さんのオペ。
しかし途中でコトー先生は腹膜の表面の異変に気づきます。
「ガンが腹膜に転移しています」
「三上先生……細胞診の結果は良性だったはずですよね」
「五島先生、ご自分で検査の結果を確認されなかったんですか?」
「悪性とお伝えしたはずですが」
こ、コノヤロー!! ぬけぬけと!!
「五島先生、どうされますか? このまま閉腹しますか」
マジさー! ぶっ飛ばされても文句言えないよ三上先生!
「五島先生が決め兼ねているようなので私が閉腹します」
「……続行しましょう」
コトー先生の決断は続行。
逆に動揺する三上先生に、コトー先生は冷静。
ほかの先生が
「無理をして、幹事長に何かあったら」
って言うのに対して、
「患者に負担をかけないよう、できるだけ素早く行います」
って答えるのがめちゃくちゃかっこいい。
コトー先生にとっては"幹事長"じゃなくてあくまでも患者なんだよね。
ここで流れるStageがめっちゃ盛り上がる!
そんでここから先のコトー先生の処置が本当に早い。
三上先生が余りのコトー先生の手際に一瞬見惚れるほど。
なのに途中でさらにピッチを上げるのが凄い。
これまでコトー先生は島でたくさんの手術をしてきたけれど、大学病院で周りに医師がこれだけいる状況だと、その能力が抜きん出ていることがわかる。
いいな、と思うのがコトー先生だって涼しい顔でこなしてるわけじゃないってこと。
たくさん汗かいてるし、先生だって患者さんに負担をかけないために必死なんだなってわかる。
まさに全力を尽くしてるんだなあ。
もう最後、あとは閉腹するだけというところで急に手術着に着替えた奥村教授が登場。
「よくやってくれた。あとは私が引き受けます」
は???
あともう閉じるだけですけど??
何言ってんの??
言葉が出ないコトー先生と、ドン引きの三上先生。
コトー先生……嵌められたことをここで理解。
ほんとひどい。なんなん……。

廊下のベンチで休むコトー先生の元へ、三上先生がやってきました。
「素晴らしいオペでした」
「私は先生の腕を見くびっていました。先端医療から外れたあなたが、まさかこれほどのオペを……」
「申し訳ありませんでした」
今のコトー先生になら勝てる、そんなふうに思ってたんだろうね。
あの事件の復讐のつもりだったのか。
でも、同じ医者だからこそ、コトー先生の凄さがわかってしまった……。
自分の未熟さを感じて、頭を下げられる三上先生でよかった。
「三上先生。謝らなければならないのは、僕の方です」
驚いた表情の三上先生。
「あの日、経験の少ない君に責任を押し付け、君の医師としてのスタートを誤らせてしまった」
「本当にすまないことをしたと思っています」
深く頭を下げ、謝罪するコトー先生。
本当に誠実な人だなあ。
でも悪かったのは体制だよ、大学病院の。
あんなの1人とか2人でなんとかするもんじゃないでしょ。
コトー先生も三上先生も、ある意味大学病院の体制の犠牲者で、お互い深く傷ついたと思う。
「僕たちは、決して自分の腕を試したり、テクニックを競うためにオペをするわけじゃありません」
「僕らが患者さんの命を握っているんじゃないんだ」
「僕らにできるのは、患者さんの運命を手助けすること」
「それ以上でも、それ以下でもありません」
コトー先生の言葉に涙を流す三上先生。
大切なことだよね。
復讐に囚われて三上先生が見失いかけていたもの。
「大学病院で働くことは本当に素晴らしいことです」
「でも、そうでない場所でも、医師として学ぶべきことはたくさんある」
「どうかそのことを覚えておいてください」
コトー先生が実際に志木那島で感じたことだもんね。
日々学びだと思いながら過ごしてきたんだろうなあ。

◇告発と告白

熊谷さんの手術が終わったことで記者会見が開かれています。
奥村教授は自分が執刀したとか言ってるけど、他にも見学者いたし、手術に参加してた医師、看護師もいたでしょ。
みんな教授が怖くて黙ってんのかもしれないけど、教授の面の皮厚すぎでは? 恥ずかしくないの?
恥知らずの奥村教授がコメントする中、コトー先生は入館証を置いて、荷物をまとめていました。
こんなとこ願い下げだよね。
体良く利用されて、冗談じゃないよ。
テレビを見てる咲さんが奥村教授に(この野郎)って感じの表情してるけど、そりゃそうだ。
慎重に経過を見守りたいとか言ってる最中だけど、コトー先生は実際に自分が去る前に熊谷さんの病室を訪れてるからね……。
奥村教授が手術の詳しい内容に触れたとき、隣に座っていた三上先生が立ち上がります。
「今回、熊谷幹事長のオペを執刀したのは奥村先生ではなく、志木那島診療所から招いた五島健助先生です」
拍手!!!!
三上先生よく言った!!!
ありがとう!!! 偉いよ!!!
偶然テレビをつけていた漁協の漁師たちも、突然出てきた「五島」の名に驚きます。
「五島先生でなければ、手術の成功はありえなかったでしょう」
拍手!!!!!!
三上先生、ほんとこの状況でよく言ってくれたなあ。
渦中のコトー先生は、熊谷さんの様子を確認し、静かに頭を下げていました。
病室を出て、廊下を歩いている途中で先生を待っていたのは、原さんと剛洋くん。
「先生」
剛洋くんの呼びかけに、俯いてしまうコトー先生。
そんな先生に、少しだけ歩み寄る原さん。
「どうすんだ、これから」
「どこへ行こうってんだ」
「わかりません。先のことは、まだ、なにも」
「そうやってまた、逃げ出すのか」
「……」
「過去の事件がなんだよ。あんたそれを償おうとして、それ以上のことやってきたじゃねえか!」
「あんた知ってるか。剛洋が、子供たちが、あんたに帰ってきてほしくて、自分たちだけで東京まで来ようとしてたこと」
目に涙をいっぱい溜めて、先生を見つめる剛洋くん。
「星野さんが、あんたに診てもらいたくて、血吐いても本土の病院に行こうとしないことを」
「シゲさんが、あんたにあんなこと言っちまったことをどれほど後悔してるか!」
「内さんが、あんたがいなくて困り果てて、煎じ薬を星野さんに作ってやってることを!」
「彩佳が! ひとりで、必死で! 父親の治療をしてることを」
「みんなが!…………俺が! どれだけ……どれだけあんたに帰ってきてほしいかってことを!」
「コトー先生!」
島のみんなが呼ぶ先生の愛称。
初めて原さんが"コトー先生"と呼んだのは、自分にとって先生こそが唯一の島の医者なんだってことを直接伝えるためかな、と思っています。
島のみんながコトー先生を必要としている。
あれほど島の医者を信じられなかった原さんが、必死で戻ってこいと叫ぶほど、コトー先生を必要としている。
それは、コトー先生みたいな人は他にいなくて、島のみんなが先生のことを大好きだから。
ずっと、誰かに必要とされたかった先生は、原さんの言葉に涙を零していました。
「俺が言いたいのは、それだけだ」
「剛洋、行くぞ」
剛洋くんは後ろ髪引かれつつも、2人が背を向け歩き始めたところで、コトー先生が
「原さん!」
と呼びかけました。
「明日、朝一番で俺たちは帰る。……あとは、好きにしてくれ」
それだけ言い残し、去っていった原さんと、剛洋くん。
立ち尽くすコトー先生。
まだ、ほんの少しだけ迷いが残っているのと、勇気が必要だったのかも。
そんな先生の元へ現れたのは咲さんでした。

夜中の診療所。
星野さんの病室に現れたシゲさん。
本土の病院へ行こうと言っても返事をしない星野さんに、昔話を始めるシゲさん。
5の段(ウソ)でつっかえてたシゲさんに九九を必死で教えてくれた星野さんの話。
本当に幼なじみのくされ縁だねえ。
「お前がいなきゃよ、俺の人生に九九はなかったよ」
このセリフ、なんだか好きなんですよね。(笑)
シュールというかなんというか……。でもシゲさんにとったらでかい恩か。
嵐の夜が怖いだろうから一緒にいてやるというシゲさんに、怖がりはお前だと言い返す星野さん。
「それにお前、九九は5の段じゃなくて、2の段でもうつかえとったぞ。『2 3が5』誰もいないんだ。見栄はるな」
これは1話のリフレイン。
こんな話、きっと飽きるくらいなんべんもしてるんだろうな。
長いつきあいだもんね。
「明日よ、病院に行こうな」
ついに頷いてくれた星野さん。
「俺はよ、正ちゃんがいなくなったらよ……こ、困んだよ」
頑固ひねくれオヤジのシゲさんが素直なったので、星野さんもようやく言うこと聞いてくれるようです。
扉の外で聞いてた彩佳さんも、少し安心かな。良かったね。

◇居場所

コトー先生は、講堂で咲さんから、和田さんからの贈り物を受け取りました。
「五島くん。怖がっちゃだめ。あなたはあなたらしく生きるべきよ」
「あなたみたいに幸せな医者はいないわ。わたしあのとき島に行ってそう思ったのよ」
そう伝えて、去っていった咲さん。
咲さん、コトー先生の生き方が、もしかしたら少しだけ羨ましいのかもなあ。
わりと現実主義者の咲さんだけど、なんとなく、コトー先生に夢を託してるような気もするんだよね。
コトー先生は、和田さんからの贈り物をそっと開きます。
それは、先生が島に来た日からずっと撮っていた写真のアルバム。
笑顔になった患者さん、その家族たち。
彩佳さんや和田さん。
島のみんなのいきいきとした表情。
そして、ひまわり畑を背景にしたあきおじ。
写真を見つめるコトー先生も、知らず知らずのうちに、微笑んでいました。
白紙のページが何枚か続いたあと、現れたのは"コトー先生"になる前の、診療所に着いたばかりの自分の写真。
和田さんの勢いに押されて、だいぶ怪訝な表情です。(笑)
それを見てコトー先生の脳裏に蘇ったのは、みんなの「ありがとう」の記憶でした。
人を救って、感謝されて、交流が生まれて……そうやって少しずつ島の医者になっていったんだよね。
次のページには、コトー先生の往診の相棒、古い自転車が青い海をバックに佇んでいます。
最後のページは、剛洋くんとクニちゃんが作ってくれた『Dr.コトー診療所』の旗。
志木那島診療所の医者、コトー先生の誕生を祝うものでした。
「コトー先生の居場所はここだ」
そう告げているような、和田さんの作ったアルバム。
アルバムを閉じて、ようやく顔を上げられたコトー先生。
目に涙を浮かべ、それでも迷いが晴れた瞳で。

◇Dr.コトーの帰還

島の港では、本土へ経つ星野さんたちと、見送る面々が揃っています。
「生きてよお、帰ってこい。なあ?」
内さんいると明るくなるなあ。好き!
そして星野さんに頭を下げる努さんと春江さん。
「俺のせいでコトー先生を……すみませんでした」
そんな2人に笑顔を見せる星野さん。
あったかい人だよね本当に。
シゲさんが原さんの不在に毒づき始めたところで、子供たちがこちらへ向かってくる原さんの船を発見。
みんなが見つめるなか、最初にその存在に気づいたのは彩佳さんでした。
「コトー先生……」
船の積荷の後ろから、だらんと力なく垂れ下がる2本の腕。
"酔わないおまじない"の指。
知らない人にはホラーだけど(笑)、島のみんなにとっては、見えなくても確かにわかるコトー先生の姿。
思わず泣き笑いしちゃうシーン。
たまらず船を追う彩佳さん。
「「「コトー先生!!!」」」
気づいた子供たちも駆け出し、その後は和田さんを筆頭にみんなが船を追って先生を迎えに行きます。
車椅子に座っていた星野さんも立ち上がり、車椅子を押しながら進むほど。
コトー先生の存在が、そんなにも星野さんに生きる力を与えてるんだなあ。
傘を差して隣を歩く昌代さんの笑顔が良い。
初めてこの島に来たときは違う、みんなが先生を迎えてくれる光景に、嬉しそうにしていたコトー先生。次の瞬間、
「ヴェェ」
吐いてる……。
すごい……笑顔だったみんなが一瞬で「あ」ってなったし、子供たちは固まったし、彩佳さんに至っては引いてる。(爆笑)
またもグロッキー状態の先生の背中をさすってあげる剛洋くんは、相変わらず天使のようにかわいい。
そして原さんが笑顔! しょうがねえなあって感じでコトー先生を見て笑ってる!
本当に最初とは何もかも違う光景だよ。
もうめっちゃ泣く。
嬉しそうに先生を呼ぶ子供たち、内さん、茉莉子さんに和田さん。
そしてシゲさん。
目を合わせ小さく頷く先生。
それだけで良いんだね。コトー先生にとっては。今、言葉はいらないんだ。
少し逡巡するように俯いてしまったコトー先生の背中を、原さんが笑顔で励ますように、優しく押すようにポンと叩いて「ホラ」って言うの、めちゃくちゃ良いんだ。
フラフラのコトー先生を、船から引っ張り上げるのが元木さんたち漁師なのも良い。
みんな、先生を迎えたくて、集まってきたんだもんね。
星野さんを見つけて駆け寄るコトー先生。
「星野さん。すぐに診察します。診療所へ行きましょう」
この存在のなんと心強いことか。
あらためて、偉大だなあと思うよ。

星野さんのレントゲンを見つめる先生。
「先生に手術してもらえるなら、どうなっても悔いはありませんから」
覚悟を決めている星野さん。
「先生、お父さんの病気は……」
意を決して尋ねる昌代さんに、コトー先生は
「貧血とポリープは気になりますが、とりあえず薬で様子を見てみましょう」
思いのほか明るいトーン。
これは……。
「それでその……手術の方は……」
まだ深刻な雰囲気の星野さん。
「手術は必要ありませんよ。典型的な胃潰瘍ですから、薬で十分治ります」
「……は?」
めちゃくちゃ深刻に考えすぎてた様子の星野家。
拍子抜けって感じの星野さんのリアクションに笑っちゃう。

診療所の外では、星野さんが悪い病気じゃなくてひと安心のみんな。
というか、星野さん急に元気になったな!(笑)
病気は病気なんだけどね。
やっぱりコトー先生効果かな。

和田さんは屋上で何やらセッティングが終わったようで、写真を撮ろうと必死。
振り返って見上げたみんなは感慨深げな様子。

コトー先生は診療所奥の自室で白衣に腕を通し、あきおじから貰った藁草履を履いて、新たな一歩を踏み出しました。
待合室で、窓の外へ目を向けていると玄関に彩佳さんが入ってきました。
「先生!」
「……おかえりなさい」
笑顔を見せる彩佳さんに、先生も微笑み何か言おうとしたところで和田さんが駆け込んできました。
(何言おうとしたのかな、「ただいま」かな?)
「先生! 来てください!」
満面の笑み! 超嬉しそうな和田さんにコトー先生も笑顔。
腕を引かれて外へ出ると、そこには大勢の島民たちがコトー先生の帰りを喜んでいました。
「先生。ほら見て」
「あれあれ!」
そばにいた剛洋くんとクニちゃんが指さす先を見て、ここへ戻ってきたことを噛みしめるコトー先生。
背後の診療所、その屋上でコトー先生の居場所を示す『Dr.コトー診療所』の旗が、風に揺られてはためいていました。
破れてしまったところは、しっかりと縫われ、もうちぎれて飛んでしまわないようしっかりつなぎ止められて……。

和田さんの写真は3枚。
集まった島のみんなを見つめるコトー先生の後ろ姿。
診療所の前で大勢の島民たちと。
最後は、診療所の前でいつものみんなと。
どれも、たくさんの人達に囲まれたコトー先生の姿が収められていました。

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