Dr.コトー診療所2003第8話感想

◇運命の人

真夏も元気に往診するコトー先生。
でっかい麦わら帽子、よく似合ってます!
あきおじのところへ行くと子供たちが藁草履の作り方を教わっていました。
こういう光景、ほのぼのしてていいなあ。
「藁草履かあ」
「履き心地いいぞお。今度コトー先生にも作ってやろうか」
あきおじ優しいなあ。
胸の怪我の病後を気にするコトー先生にあきおじは、
「わしゃ健康そのもの。それだけが自慢じゃ」
「そうですか、良かった」
ホッとしたように笑みを浮かべる先生。
西瓜をみんなで食べる光景も心があったかくなるなあ。
あきおじのモノマネが完璧なクニちゃん。じいちゃんのこと、大好きなんだね。
クニちゃんのお母さん(道子さん)は、あきおじが便秘ぎみなのが気になるようで……。

出張に行っていた和田さん。
帰ってくるなり興奮気味にある出会いについて語っている様子。
「診療所に勤めておりますって言ったら話はずむはずむ! あれは絶対に俺に気があるな! 間違いない!」
断言する和田さんに、受付にいる彩佳さんは呆れ顔。
「絶対あれですよ、蜃気楼かなんかですよ」
坂野さん何気にひどい!(笑)
「なんだよ蜃気楼って! 本物! 本物! お前が蜃気楼だ!」
この会話面白すぎて大好き。
そこへ帰ってきたコトー先生と剛洋くん。
剛洋くんは和田さんから"お土産"を受け取っています。
盛り上がってる皆が気になったコトー先生。
「なんの話?」
「運命の出会いがあったんですって」
「へぇー」(嬉しそう)
「帰りの船で出会っちゃったんです。素敵な人に」
「それは良かったですねえ!」
コトー先生めちゃくちゃ素直!
彩佳さん、真に受けてるコトー先生に「は?」って顔してる!(笑)
「先生だけだよ、俺の幸せを喜んでくれる人は! 先生だけ!」
和田さん、感激のあまりみんなを押しのけてコトー先生の手をギュッ。
みんなに笑われてます。
「でも、ほんとに和田さんに気があるんならすぐにここに顔出しても良さそうなもんですけどね」
「そうだよ!」
「『こんにちは。近くに来たのでちょっと寄ってみましたあ』」
元木さんの想像モノマネにみんな大ウケ! していたところに​─────
「こんにちはー。近くに来たのでちょっと寄ってみました」
元木さんエスパーじゃん。
全く同じ言葉に反応するみんな。
声に振り向いたコトー先生は明らかに動揺したような見たこともない表情。
その視線の先には……
「咲さん……!」
和田さんは喜びに満ちた顔。
「こんにちは」
明らかにコトー先生を見つめて挨拶するこの女性こそ、原沢咲さん。
思わずコトー先生の方へ振り向く和田さんと彩佳さんですが、コトー先生はなんとも言えない顔をしていて……。

◇戸惑い、失恋、嫉妬

診療所の屋上にて。
「来るなら、ひとこと言ってくれればいいのに」
「急に休みが取れたの。……急に会いたくなったのよ、五島くんに」
「…………迷惑だった?」
「そんなことないよ。あるわけないじゃない」
独特の空気感のふたり。
なんとなく距離感を測りかねているような……。
「五島くん。話したいことあるの。それで来たの」
「……夜、時間ある?」
「……」
コトー先生、戸惑ってるのかな。
「んふっ! ふへへ、やるな! コトーもな!」
「元木さん! そんな変な笑い方しないでください!」
ニヤつく元木さんに注意する坂野さん。
坂野さん、コトー先生に救けてもらったこともあって、先生のこと茶化されたくないのかな?
話題は咲さんのお仕事について。
「OLとかじゃないですか」
「スチュワーデスとか!」
「いや、あれはモデルだな」
盛り上がるみんなに正解を教えてくれたのは和田さんでした。
「女医だ」
和田さん! すみっこで体育座り!(笑)
悲しいなあ……。唯一和田さんの運命の出会いを喜んでくれたのがコトー先生だったのにね……。
「ゆかりの出産のとき、コトー先生がいの一番で電話かけた」
「ああ……はい」
「芦田先生の娘のゆきさんの先輩でよ、ゆきさんが持ってきたラブレターの人だ」
正解!! 和田さんちょっと気づくの遅かったー。
「そうだ……あのとき確かに咲って書いてあった。綺麗な字で」
和田さん切ないよー。

居酒屋まりにて。
剛洋くんが和田さんからもらったお土産は私立中学の案内でした。
「将来は、私立の学校行って、医学部入って、あの医者みたいになりたいなんて馬鹿なこと考えてるらしい」
「別に馬鹿なことだとは思わないけど?」
「え?」
「素敵なことじゃない。もし剛洋がお医者さんになったら、この島にまたお医者さんが増えるのよ」
まだ剛洋くんの夢を本気にしてるわけじゃない原さん。
医者への反発心からなのかな。
「金だっていくらかかるかわかんねえし……だいたい俺の息子だぞ! 俺の息子が医者だなんて」
まだ現実感ないのも仕方ないかな。原さん漁師一筋って感じだもんね。
でも自分で言ったこと茉莉子さんに笑われてムッとしてる原さん面白いな。
そこへやって来たのは彩佳さん。
「もう終わったの?」
「いてもお邪魔だから」
怒ってる怒ってるー!(笑)
ごめんね彩佳さん、でも嫉妬してるところ超可愛くて大好き。
「なによ男どもはみんなして」
「そんなに珍しいのかねショートカットの美人が」
彩佳さんが不満をぶちまけそうになったところへ、更なる訪問者が。
「おいおい茉莉ちゃん! 聞いたかよお前! えー! コトーに彼女がいたっつうじゃねーかよ! それも! ショートカットの美人の女医だー!」
もう、タイミング最悪!!
同じワードに勘づく茉莉子さん。
というかシゲさん、そのリカちゃんから貰った服、ずっとタグつけっぱなし……。
コトー先生が結婚するだの東京に戻るだの子供がいるだの、根も葉もない噂をこれでもかとばら撒きまくるノンストップシゲさん。
おい誰かこのオヤジ止めてくれ。
「あんなインテリアな女医でも子供孕むことがあるんだねー」
だーれもツッコミ入れない!
「そーなるとあれだな、彩佳はどうなんだおい、可哀想じゃねえか」
原さんと茉莉子さん、さすがに止めようとするものの止まらず。
もっと強く言って引っぱたいて!
「まあ所詮彩佳じゃ無理かな! 歯が立つわきゃねえ! なんつったって相手はインテリアだもんな、んふふふブッ!!!」
彩佳さん絶対零度の視線。
視線が「コロス」と言っている……。(笑)

◇咲さんの願い

コトー先生の自室。
先生の島での生活について歌うように語る咲さん。
「足の怪我はもういいの? 山で遭難しかけた」
「なんでも知ってるんだね」
「だって、船で6時間も一緒だったのよ和田さんと」
「その間ずーっと聞かせてくれたわ。Dr.コトーのこと」
ちょっぴり嬉しそうな先生。
昼間よりもリラックスしてるかな。
しかし和田さんも自分のこと話したらいいのにコトー先生の話ばっかりしてたのは……きっと誇らしかったのかな。
コトー先生と一緒に働いてることが。
「想像してたのと、ちょっと違ったな」
「どんなふうに想像してたの」
「もっと……なんていうか、ひとりで寂しそうにしてるんじゃないかなって思ってた」
「……」
「ほんとにちょっと違った」
ここ、好きなセリフなんです。
咲さんの願望が見えるから。
咲さん、コトー先生に寂しそうにしててほしかったんじゃないかな。
最果ての島で、ひとりきりでポツンとしている五島健助だったら連れ戻したかった、きっと連れ戻すのは難しくなかった……だからそうであってほしかった。
そんな思いが、残念そうに言う「ちょっと違った」に込められてて、好きなんですよね。
ここからさらに駆け引きを挑む咲さん。
手紙に書いた『柏木先生』の名前を出して、彼の論文が認められたことをコトー先生に伝えるも、先生は素直に「すっごいね」……。
「誘われてるの」
「え?」
「向こうに行って、一緒に暮らさないかって」
結局ストレートに伝えた咲さん。
コトー先生、さすがに動揺。
「……どうするつもりなの?」
「わからない。わからないからここに来たの。五島くんに会いに」
「…………」
「五島くんは」
ここで夜分の訪問。
咲さんはコトー先生に止めてほしいんだよね。
わからないと言いつつ、はるばるここまで会いに来たんだから。
でも俯いてしまうコトー先生。
ふたりの気持ちのズレを感じて切ない。

◇愛の告白

訪問者はあきおじの息子夫婦(クニちゃんの両親)の一夫さんと道子さんでした。
翌日、往診へやってきたコトー先生たち。
「ん? あなた、どなた?」
「東京にいたときの、僕の同僚です。彼女も医師ですから」
「べっぴんさんじゃのー。さあさあさあ、まあどうぞどうぞ」
診察に不満そうだったあきおじ。
咲さんを見て一気にご機嫌に!(笑)
ショートカットの美人効果すごいな。
居間で触診中、コトー先生の表情が僅かに変化。
さらにあきおじから血便の報告もあり、咲さんも表情を曇らせます。
診療所で検査の結果、S状結腸の癌という診断に。
島では内視鏡検査ができないこともあり、コトー先生は家族に本土での治療を勧めますが……。

星野家で昼食を頂くコトー先生。
往診の途中でスイカ食べたりご飯食べたりしてるの、本当に島民にとって近い存在になったんだなあと感慨深くなります。
「やっぱり本土に行った方がいいんですよね」
「もちろんそうですね」
「でも……一夫がね、先生に手術してもらえないか頼んでくれって言うんですよ」
星野さんの言葉に驚いた表情の先生。
本土で入院するなら誰か付き添う必要があり、ひと月も家を空けるのは大変なことだと言う昌代さん。
離島に住む人々にはそういう難しさもあるんだなあ。
「それだけじゃないんだよ。あきおじ本人が先生に手術してもらいたいって言ってるらしい」
「あきおじが」
「とにかく、志木那島診療所のコトー先生にって」
思案するような先生。
あきおじの西瓜畑へやってきました。
あきおじはクニちゃんと一緒に畑仕事中。
「おー! コトー先生!」
「おーう! コトー先生!」
「こんにちは」
じじ孫同じリアクションするの可愛い。
「コトー先生」
「はい」
「わしゃ島を離れたくないから、あんたに手術を頼んでるわけじゃない。それもあるよ、もちろんそれもある。長い間丹精込めて耕してきた土地だからなあ」
「でもなわし、先生のことが好きだ」
「孫が先生のこと好きなように、わしもあんたのことが好きだ!」
「愛の、告白~?」
「あははははっ」
「あきおじ……」
大好きな、本当に大好きなシーンです。
たぶん、みんな好きだよね、ここ。
嬉しそうな先生とあきおじ。
告白を受けた先生が小さくあきおじってつぶやくの、愛しさが込み上げて思わずって感じですごく好き。
孫が先生のこと好きなように、で笑顔のクニちゃんも可愛くて好き。
「もし、わしが死んでも、あんたの手にかかって死ねるなら本望じゃ」
「何言ってるんです! あきおじは死ぬような病気じゃありませんよ。僕が絶対に救けますから」
「そう言うじゃろうと思うた! いつもそう言っとるのに、わしのときにはなんで言ってくれん。影でこそこそ息子や嫁たちに話すのは、酷いぞ、先生」
コトー先生に絶対に救けると言ってほしかったあきおじ。聞きたかった言葉が聞けたとき、本当に嬉しそうでした。
「命は神様に。病気は先生にだ」
「命のことは、神様にしかわからん」
「だったら、病気は先生に、お願いします」
「どうか、よろしくお願い致します」
コトー先生、心なしか目が潤んでたなあ。
患者さんから、ここまで真っ直ぐに、一途な信頼を向けられたのは初めてだったのかもしれない。

◇島の看護師と東京の医師

咲さんにオペの助手を依頼した先生。
咲さんは設備もスタッフも整っているとは言えない診療所で手術することに疑問を抱きます。
「なぜ今ここでオペをする必要があるの?」
「あきおじが、僕に手術してほしいって言ってるんだ」
「その気持ちを、裏切るわけにはいかないよ」
覚悟を決めたコトー先生。
そして、それぞれの思いを胸にふたりを見つめる和田さんと彩佳さん。
和田さん、咲さんに惚れてたのにその相手から手術の手伝いをしてることは問題ないとは言えないって指摘されるのつらいなあ。

海を見つめる咲さんの元へ訪れたのは彩佳さん。
「原沢先生は、ここでオペをすることがそんなに非常識だって思われます?」
「でもここは離島なんです。島を離れて入院するってことは、大変なことなんです。一度離れたら、生きて帰ってこられないことだって……」
「コトー先生はこの半年の間に何度も難しいオペをクリアしてきました。コトー先生の腕は確かです。何人もの人がコトー先生に救けられて」
「五島先生が優秀な外科医だってことは知ってるわ」
「研修医時代からの付き合いだもん」
ぬああ……。
島の看護師として、患者の立場になって訴えつつも、半年間コトー先生の近くで先生を見てきた彩佳さんの信頼の言葉を、付き合い長いから知ってるとぶった切る咲さん……。えぐい……。
でも咲さん、少しだけ苛立ったりしたのかも。
ムキになる彩佳さんの気持ちも、少しイラッとした咲さんの気持ちも理解できる。
「でもあなたたちは、危ない橋を彼の力に頼って無理やり渡ってきただけじゃないかしら」
「彼だけじゃないわ。あなただってそう。ナースひとりで本当によくやってると思う」
「島の人たちはそれでいいかもしれない。でも、診療所のスタッフの負担は大きくなるばかりよ」
「それでいいの? そんなに彼に寄りかかっていていいの?」
「この島の医療は、彼の自己犠牲の上に成り立っているように思えてならないわ」
この言葉、ずっと忘れられません。
咲さんは島の外から来た人で、だからこそ冷静に現実が見えている。
正論……間違いなくここで正しいのは咲さん。
この指摘こそが志木那島の抱える問題であり、今現在、約20年後の映画でもテーマのひとつとされるもの。
でも、島の外の人で、ある意味傍観者だから言えることでもあるんですよね。
問題提起だけじゃなくて、ではそのために何ができるのか……本当に大事なのはそこからだと思うと、島の外にも中にも、その答えを持ってる人はこの時点では誰もいない……。
「先生は自己犠牲だなんて思ってるはずありません」
彩佳さんにとっては傷つく言葉だっただろうな。
島で身を粉にして働いている先生を知ってるからこそ、見てきたからこそ、その言葉は許せなかったはず。
コトー先生がそんな気持ちで働く人じゃないと、彩佳さんはわかってるから。
「原沢先生は、何をしにここへ来られたんですか」
「え?」
「コトー先生を……東京に連れ戻すため……?」
「彼は離島の小さな診療所にいるような人じゃないわ」
んんん。
"離島の小さな診療所"で働く看護師の前で言うセリフとしてはトゲがある。
でも咲さんのスタンスはすごくわかりやすいんだよね。
電話でも、手紙でもずっと変わってなくて、最先端の医学を信仰している。
「最先端の場所で、力を発揮すべき人だと私は思うの。それが彼のためでもあると」
「それが原沢先生のためでもあるから?」
ひいい!
彩佳さんグサッといったなあ!
夢見るように願望を話す咲さんの、深層心理というか、心の奥深くに隠してた本音を暴いてみせた。
驚いた表情の原沢先生に、すぐさま踏み込みすぎたことを謝る彩佳さん。
「コトー先生は、このオペを成功させると思います」
「先生はやるって言ったら必ずやってくれる人なんです」
コトー先生へ向ける彩佳さんの信頼には少しだけ願望が込められて、それゆえに見えなくなっているものもあり、咲さんはそれに気づいているけど言わずにいる。
そんな印象を受けました。
彩佳さん、やっぱりムキになってるんだなあ。

◇救えない命

始まったあきおじの手術。
待合室には、クニちゃんを心配して剛洋くんやしんちゃんたちもやってきました。
黙り込む子供たちに声をかけた原さん。
「心配すんな。大丈夫だ」
「おじさん」
「ん?」
「俺、全然心配なんかしとらん! だってコトー先生が手術してくれるんだもん」
「そうだよな! コトー先生だもん。な、クニちゃん!」
安心するような表情を見せる父母たち。
その中で原さんだけが……。

手術中、発見されたのは癌の転移。
手をつけられない状態のため、閉腹することに。
コトー先生は、一夫さんと道子さんにあきおじの余命の宣告を行いました。
「先生、それでは先生は、親父の腹切っただけで、なんもせんと、それで閉めてしまったんですか!?」
「親父のこと救けてくれようとはなさらんかったのですか!?」
「先生は親父を救けてくれんのですか!?」
「あんたやめて」
「だって、なんのためにコトー先生に……」
言葉にならない……。
家族の苦しみも悲しみも、それらを受け止めるしかないコトー先生も、つらすぎる。
胸が痛い。
「お役に立てず、申し訳ありませんでした」
声を震わせ頭を下げる先生。
咲さんはその姿を見つめていました。

海岸の岩陰に隠れるように腰かけていたコトー先生の元へやってきた原さん。
「子供たちが、あんたのことまるで神様みたいになんでも出来るって信じてる」
「剛洋は、あんたに憧れて医者になりたいって言い出した。まだ10歳のあいつがだ」
「俺はあいつに勘違いしてほしくねぇんだ」
「メスを持った人間が、それだけで全てを解決できるって思ってほしくねぇ」
子供たちが盲目的にコトー先生を信頼する姿に危うさを感じた原さん。
咲さんはわかっていたけど、島民の中では多分原さんだけが気づけたこと。
フラットな立場だからこそかな。
原さんは岩に座り、海を見据え語りかけます。
「自然に逆らって海に消えてった奴、俺は何人も見てきた」
「漁師だって海には敵わねぇ。どんなに腕の良い漁師でも自然の力にはな」
「医者だって、ただの人間だろ」
小さく、頭を下げるコトー先生。
現実を語る原さんの言葉は、不器用な励まし。
それがわかっていたから、コトー先生も頭を下げた。
このときの、コトー先生の苦悩を理解できた数少ない人のひとりが原さんという事実。
すごく不思議で、でも当然のような気もする。

手術着の上から白衣を羽織ったコトー先生。
病室の扉の前、俯いて顔を上げた表情が胸を締め付けます。
扉を開けて、あきおじを見て、パッと笑顔を見せるところ、コトー先生の医師としての強さを感じで涙が出そうになる。
明るい声を出す姿に、彩佳さんや一夫さんや道子さんは驚いた表情。
「わしゃ健康だけが自慢……とは、言えんなあ」
「あきおじ。手術は、無事成功しましたよ」
彩佳さんたちの表情と対比するような、クニちゃんの嬉しそうな顔とあきおじの笑顔が切ない。
一瞬だけコトー先生の表情が陰るのも……。
退院はいつになるかと尋ねるあきおじに、最短の退院と在宅のケアを提案する先生。
「あきおじ、どっちがいいですか」
あきおじの答えはもうわかってるコトー先生。
「そりゃ、うちの方がええなあ」
先生の考えに納得したような表情の一夫さんと道子さん。
無理に微笑むような、みんなの悲しい笑顔に、あきおじはこの時点で気づいているような気がしました。

◇コトー先生という人

在宅ケアとなったあきおじ。
診療所の屋上には和田さんと咲さん。
コトー先生を頑固だと言いつつ、調子が良くなってきているあきおじについて話しています。

あきおじのお家に茉莉子さんがお見舞いに来たり、内さんが煎じ薬を持って来てくれたり、良いなあこういうの。
「内さん、良いですよ。煎じ薬でしょ?」
「うちのじいさんはな、これでずいぶん良うなったんじゃ」
お医者さんのコトー先生たちがいることに気づいて、笑いながら煎じ薬を後ろに隠す内さん可愛い。

「あの、咲さん」
「本当にコトー先生と結婚されるんですか」
「誰が言ったの? そんなこと」
(シゲさんです)
「島中の人間がそう思ってますよ……私的には、とても残念ですが」
和田さん超正直!(笑)
くるっと振り向いた咲さんに、
「イエ、なんでも」
ってちょっと笑っちゃう。
「そう思ってない人がひとりだけいるわ」
「え」
「コトー先生」
ここなあ! 咲さん自身は思ってるってことでしょ!
結婚したいって。みんなの思い込みが現実になればいいのにって。
ああ……切ないなあ。
コトー先生の気持ちを咲さんがもうわかっちゃってるだけにね。
「わたしね、五島くんのしてることが全て正しいなんて思えないの」
「あの人は、優しくなりすぎた」
「『医者は家族をオペできない』って聞いたことない?」
「家族をオペするときは私情が入ってしまってうまくいかないって。それと同じことをあの人、してるんじゃないかしら」
ああ……この時点で、咲さんはこの作品にまつわる大きなテーマを挙げてたんだなあ。
五島健助を思うからこそ、今のコトー先生を肯定できない咲さん。
「医者は、自分にも他人にも厳しくクールじゃないとやっていけないわ」
山下家で、まるで家族のように一緒にご飯や西瓜を食べて、花火をする子供たちを笑顔で見つめるコトー先生。
咲さんの言う医者とは真逆の生き方。
「あの、お言葉ですが、コトー先生はそれを現実にやっておられると思うな」
「……いや、やろうとしているって言った方が正しいのかな」
「あの人は、まるで何かに取り憑かれたように、みんなのために必死になっておられます」
「この島に来てからずっとそうです」
「そんなコトー先生だから、みんな診てもらいたいと思うし、私だって……こんな素人の私がなんで手術の手伝いなんかって思うけど、でも私なりに医療の勉強したりなんかして、少しでも診療所の役に立ちたいと思うのは、あの人がなんだか一生懸命だから」
和田さんのここの言葉、大好きです。
もう涙が止まらない。
和田さんだって、今のコトー先生を身近に見てきたひとり。
一生懸命な人の力になりたい、役に立ちたい、そう思ってくれる人がそばにいるのって幸せなことだなあ。
「和田さん、あなた良い人ね」
「……」
「わたし、あなた会えただけでも、この島に来て良かったわ」
少し微笑んだ咲さん。
コトー先生の自己犠牲と言ったけれど、咲さん自身、こうして先生を支えてくれる人の存在が素直に嬉しかったんだろうね。

みんなの前では気丈に笑顔を見せていたコトー先生。
往診の帰り、ひとり崖で膝を抱えて俯く姿は寂しくて孤独。
家族のような大切であたたかい人たち、理解し支えてくれる人、励ましてくれる人がいても、離島の医師としてコトー先生はどこまでも独り。
命を背負うことの重さ、苦しみを感じます。

「そう……帰るんだ」
「引き止めてくれないの?」
「引き止める資格なんて、僕にはないよ……」
「……ずるいなあ五島くん。そうやって答えを出さないまま東京出ていって、また答えを出さないでわたしを追い出すんだ」
咲さん。もう駆け引きもなにも出来ない、ただただ本音。
「そんなこと、思ってるわけないじゃない」
「君は、僕にとって……特別な、大切な人だし」
「でも、だから僕は」
報せが入ったのは、コトー先生が何か言いかけたときでした。

◇幸せ

あきおじの家に到着したコトー先生たち。
寝息を立てることなく眠る姿に立ち尽くしているところへ、内さんが訪れました。
「逝っちまったのかあ。あきおじよお。うちの爺さんにはよお効いたんだけどな」
内さんの慟哭。
クニちゃんの静かにポロポロと涙を流す姿もつらい。
コトー先生、島へ来て2度目の死亡診断書を書き終えて、一瞬放心するようにボールペンを取り落とし視線を向ける先には、あきおじの座椅子で涙するクニちゃんの姿。
「クニちゃん、ごめんね。じいちゃん、救けられなかった……ほんとに、ごめんね」
掠れた声で何度も謝るコトー先生。
そこへ、道子さんと一夫さんが。
「先生、謝ったりしないで」
「じいちゃんは先生に看取ってもらってほんとに幸せだったと思います」
コトー先生が提案した在宅ケアであきおじは、先生や彩佳さんたちが家に来てくれたこと、子供たちの遊ぶ声が聞こえたこと、家族と一緒に過ごせたこと、本当に喜んでたんだなあ。
「本土の病院に連れて行って、ほんの少し長生きしたとしても、こうしてみんなには看取ってもらえんかったもの」
「あきおじよお、幸せもんじゃ」
咲さんは、この言葉を聞いて島民の価値観に気づいたのかな。
コトー先生や彩佳さんが言っていた言葉の意味に。
「先生、本当にありがとうございました。何度も何度も足を運んでいただいて……ありがとうございました」
「ありがとうございました」
手術直後、やり場のない気持ちをぶつけていた一夫さんも、コトー先生のひたむきな治療を見ているうちに、きっと気持ちの整理をつけて今こうして感謝を口にしたんだろうなあ。
つらかっただろうに。
「先生これ、親父の部屋に……。受け取って、やってください」
一夫さんがコトー先生に手渡したのは、藁草履と手紙。
手紙を開き、思わず零れた涙を拭い、なんとか一夫さんと道子さんに笑顔を見せるも、咲さんと目が合ってしまった先生。
耐えきれず外へ飛び出し、嗚咽。
『コトー様。夏涼しくて冬温かい。わしの自慢は西瓜と藁草履。人生でこのふたつ。』
いつか約束した藁草履を、あきおじは覚えていてコトー先生のために作っていました。
みんなで食べた甘い西瓜。
子供たちに教え、コトー先生に贈った藁草履。
自慢を"人生で"と結んだあきおじ。わかってたんだなあ。

診療所で待つ和田さん。
咲さんは東京へ帰るとのこと。
「和田さん。コトー先生に伝えてほしいことがあるの」
「はい」
「コトー先生は幸せな医者だって」
「幸せな医者」
「病気が治って感謝されることはあっても、患者さんが亡くなって感謝されるなんて、なかなかあることじゃないわ」
コトー先生だからこそ、築けた関係。
家族のように島民と接することで、医者として苦しみながらも、医者として感謝される。
そんな、幸せな医者……。
もう、ここへ来ることはないと言う咲さん。
玄関で別れようとしたとき、コトー先生が帰ってきましたが、ふたりは言葉を交わすことなく……。
「追いかけなくていいのか」
和田さん!! コトー先生の気持ちわかってるから、後悔させないように……かっこいいなあ。
振り向いたコトー先生、去り行く咲さんの姿を見つめて、一瞬確かに表情を変えました。
「咲ちゃん!」
コトー先生、初めて島で医者じゃなくひとりの人間として、咲さんを呼んだんだね。
「さよなら、コトー先生」
それに対して、"五島くん"ではなくコトー先生と呼ぶ咲さん。
大好きな人からこの島の医者へ。
咲さんの感情の変化です。
「あなた、とっても良い顔になった。東京にいたときより、良い顔になった」
「さよなら」
咲さんのこの言葉、大好きだなあ。
東京にいたときのコトー先生をよく知ってる人だからこそ、言える言葉。
島にいるコトー先生を認めたくなくて、どうにか取り戻したくて、ここまでやってきた咲さんが、島にいるコトー先生を肯定して去っていく。
切ない別れだけれど、大好きなシーンです。

居酒屋まりにて。
大量の西瓜のそばで酔いつぶれた白衣のまんまのコトー先生。
口元に種がついてますね。
彩佳さんが迎えに来るも爆睡状態。
「もしかして飲んじゃった? お酒」
「ふた口くらい舐めただけだけどね」
「先生! まぁた風邪引いちゃいますよ! 先生!」
「いいじゃない……今日ぐらいそっとしといてあげよ。コトー先生だって人間なんだし、酔っ払いたいときくらいあるでしょ」
ふた口のお酒で全然起きないコトー先生。超下戸だなあ。
優しい茉莉子さん。
たぶんそんなにコトー先生に色々聞いたりせず、持ってきた西瓜を切ってあげて、「ちょっと飲む?」って言ってあげたんだろうなあ。
そのままにしておくわけにもいかず、2人で運んであげようとコトー先生を持ち上げると、先生の左手にはずっと握りしめてる藁草履が。
バランスを崩して倒れそうになったところで抱きとめてくれたのは原さん。
「診療所か」
頷く彩佳さん。
原さんの中でも、確実に変わり始めてるものがあるのを感じます。

流れ星も見える満点の星空の下、彩佳さん、剛洋くん、原さん、原さんにおんぶしてもらったコトー先生。
奇妙な組み合わせの4人が診療所への道を歩き、エンディングへ。

和田さんの写真は、退院するあきおじと一夫さんと道子さん。笑顔のあきおじ。そして、西瓜を食べるあきおじと和田さん、彩佳さん、コトー先生、クニちゃん、茉莉子さん内さん。
幸せなあきおじの人生の記録でした。

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