Dr.コトー診療所2003第9話感想

◇ある記者の訪問

いきなり手術シーン!
待合室ではしんちゃんの妹の桃子ちゃんが泣いています。
「おじちゃんじゃなーいー」
「おお、おじちゃんのせいじゃないのか」
「じーちゃん、だー!」
シゲさん、手術室にしんちゃんと桃子ちゃんを入れてひと言、「クソガキ」……。(笑)
とても手術中とは思えないシリアス感のなさだけど、コトー先生は真剣。
「彩佳さん、クーパー」
「……和田さん?」チョキン
おや、不穏な空気。
努さんと春江さんが待合室へ血相変えて駆け込んできたところで、手術終了!
「手術は無事に成功しました。ホラ! 腕も綺麗につながりました」
コトー先生が手渡したのは可愛いクマのぬいぐるみ。
「良かったな」
あ、和田さんの服の袖が犠牲に!(爆笑)
「うん! コトー先生ありがと!」
はー可愛いな桃子ちゃん。
ぬいぐるみが直ってご機嫌!
"ミーちゃん"の手術のために、コトー先生たちは手術着に着替えてまでオペしてたの本格的すぎて笑っちゃう!
コトー先生が「彩佳さん、和田さん、急患です! オペの準備を!」とか言ったんだろうなあ。
想像すると楽しい。

「そんでもってよお、ぬいぐるみの腕が壊れたってここん家の小汚ぇ娘が道端でピーピーピーピー泣くんだよ」
ひっでぇ言い草!(笑)
「と、そこへコトーがやってきて手術してやるってんだよー」
「ぬいぐるみを?」
「『脈はありますね、血管確保、点滴挿入。さ! 診療所に行きましょー』」
シゲさんそれ髪の毛かきあげるのコトー先生っていうか金八先生みたいなモノマネ!(笑)
「でもさあ、コトー先生らしいよね」
茉莉子さんの言葉にホッコリ。
ね、優しいんだよねコトー先生。
そんな和やかな漁師たちの飲みの席にやってきたの1人の男性。
「その診療所の先生って、五島健助さんのことですか?」
「五島!? おいコトーの本名ってなんだよ」
「まあまあまあそんなような名前かもしんねえな」
すっかり島では"コトー先生"だもんね。
本名が忘れられるくらい浸透してるっていうのもすごい。
声をかけてきたのは東京から来たという週刊誌の記者、巽さんでした。
シゲさんがリカちゃんの出産の話をすれば、
「産婦人科でもないのに?」
ってなんか心なしか棘が……。
さらに剛洋くんの話になると、茉莉子さんはちょっと不安そうな表情。
「船上で手術をですか!?」
食いつくところがね、そこかってちょっとドキッとする。
シゲさんの話に、レコーダーまで取り出して本格的に取材モード。
うーん……。

診療所では子供たちの勉強会。
「先生。ここは学校じゃなくて診療所ですよ」
とか言いつつ、受付にいる彩佳さんの声はちょっと優しい感じ。
その隣には和やかな風景を写真に収める和田さん。
いつもの診療所の空気感です♪

居酒屋まりでは巽さんが取材の礼にと、漁師たちの分までお会計。
茉莉子さんが戸惑いつつ精算したところで、ある特集の記事を渡されました。
勘のいい茉莉子さん、この時点で巽さんの様子にかなりの違和感を抱いているように見えます。
不穏な空気を感じ取っているような……。
早速渡された記事を開いた茉莉子さん。
そこに書かれていたのは、東京にいたときのコトー先生のこと……。

◇追いかけてきた過去

「コトー先生!!」
テストを持って駆け込んできた剛洋くん。
「へえーー! 98点かあ!」
「凄いよ剛洋!」
苦手だった算数で超高得点!
偉いぞ剛洋くん!
「コトー先生に教わったおかげだよ! 先生にもすっごく褒められたんだ!」
「それは良かったなあー。またわからないことがあったらいつでも言っておいで」
ほんとに塾の先生みたい!(笑)
お医者さんで勉強も教えてくれる優しい先生。良いなあ。
(数学、コトー先生に教わりたかったなあ……)
「ねえ先生」
「ん?」
「受験してみたいんだ、僕」
「受験って本土の中学へ行くってこと?」
「うん、まだわからないけど……」
この年で、誰に強制されるでもなく自分で受験してみたいって考えることが偉いよ。
素晴らしすぎる。
「お父さんにはそのこと言ったの?」
「ううん」
「……でも、そういう気持ちを持つのは悪いことじゃないかもなあ」
「ほんと!? 先生ほんとにそう思う?」
「だってそういうふうに思ったから、一生懸命勉強して、こんなに良い点数がとれたんだろ?」
「中学のことは、まだ時間があるんだしゆっくり考えればいいじゃない。ね?」
コトー先生は名モチベーターだわ。
まだ気持ちが固まってない剛洋くんに、現状の成果を伝えて穏やかに諭す。
剛洋くんもそりゃ嬉しいよね。
そんなところへ現れたのは巽さん。
「子供たちの進路相談にまで乗ってるわけだ。"コトー先生"は」
ここのコトー先生の表情の変化。
狼狽というほど激しくはないけれど、明らかに瞳が揺れて、動揺が見られる。
「お久しぶりですね。五島先生」
「悪徳医師の追跡取材で、しばらくここに滞在することになりそうなんで、一応ご報告をと思いまして」
うう……。コトー先生の背中が小さくなってる。
「先生。誰この人……」
剛洋くんも、明らかに敵意のある言い回しに戸惑いを感じている様子。
「おお、君かあ。船の上で腹膜炎の手術を受けた子ってのは。原剛洋くんだっけ?」
「ちょっとあなた!」
「あなたが彩佳さんですね。和田さん、和田さんはいらっしゃいませんか! 優秀な助手の。あれ? 今日はいないのかな?」
ひえ……。怖い。
「なんなんですか! いきなり」
「よかったらこれ読んでください」
「じゃあ今日はこれで」
「なにあれ。なんなのよ! 悪徳医師って」
表情の見えないコトー先生。
でも明らかに陰ってる……。
こういうとき、彩佳さんの怯まない強気に救われるなあ。
「週刊誌の記者だよ」
去り際につぶやくコトー先生。
明らかに変わった様子を訝しむ彩佳さん。
剛洋くんと彩佳さんという、島の中でも無類の信頼を向けてくれる2人の前にいるのは、つらかったんだろうなあコトー先生。

「あいつがこの事件起こしたっていうのか」
茉莉子さんに記事の相談を受ける原さん。
「こいつは預からしてくれ。このことはまだ誰にも言うな」
「ここに来るときに広子おばさんに聞かれたの。知らないって言っといたけど、きっともう島中に知れ渡ってると思う」
広子さんは純一くんのお母さん。こんなかたちで前のエピソードで出てきた人の名前を出されるの、つらいわ……。
島の噂は光ファイバー……。絶対みんな知ってるよね。
苦々しい顔の原さん。

彩佳さんが自宅に帰ると、村長、坂野さん、シゲさん、星野さんが会議中でした。
コトー先生が金で動くとは思えないシゲさん。
「最初はコトーみてぇな奴がよ、この島へ来たときは信じらんなかったけどよ、けどおまえ今はよ、コトーはこの島にとって必要な奴だろうがよ!」
シゲさん……。そうだよね、だんだんとコトー先生が島に受け入れられるようになったのは、シゲさんの態度の変化が一番わかりやすかったかもしれないね。
対して村長は、問題はそれだけじゃなく、役場の一職員である和田さんが手術の手伝いをしてることが一番の問題と説明。
島の外に知られたら大問題で、島の中でも疑問視する声がある、と。
でも、現実診療所には人が足りてないわけでしょ……。
外のことはおいといても、その恩恵に預かってる島民がそれを言うのか。みんな、文句言うのは簡単だよね……。
部屋の外で聞いてる彩佳さん、ショックというかつらいよね。
「今更こういうことを聞くのはなんだが、あんた本当に知らなかったのか」
「東京からあの人を連れてくるとき、コトー先生にこういう過去があったということを、本当に何も知らないで連れて来てしまったのか」
悲しいよ、村長。そんな連れて来てしまっただなんて。
失敗みたいな言い方。
気持ちはわかるよ、わかるけどさ。
何も答えず煙草を吸う星野さん。
1話で帰る場所がないと言ってたコトー先生。
『星野さんだって知ってるじゃないですか』
そう言っていました。
すべて承知で連れてきたんだよね。

診療所ではデスクで過去を思い返す先生。
1話のときも海を眺めながら、同じようにしていました。
コトー先生の中では、ずっと忘れられない記憶なんだ……。
明かりのついた診療所の外には、写真を手にした巽さん。
「どこへ逃げたって無駄だ」
「今度こそあいつの息の根を止めてやるからな」
「な、久美子」
巽さんの憎しみの深さ、執念を感じるシーン。
恐ろしさもあるけれど、悲しいな。

◇堕ちた信頼

自転車で往診中。
いつもならみんなに声かけられるコトー先生が、まるで来たばかりのときみたいに避けられて、遠巻きに噂されてる……。
信頼がなかった最初よりも、あった信頼がなくなってしまった今の方がずっとつらい。胸が痛いよ。
コトー先生の悲しそうな顔が……。

「ただいま。なにしてるんです?」
診療所の裏で何かを燃やしてる和田さん。
「ちょっと、いらない書類があったもんだから」
焦り気味に一気に火にくべようとするものの、風が吹いて運悪くコトー先生の足元へ。
"いらない書類"を見てしまった先生。
和田さんコトー先生に見られる前に処分したかったんだ。
「そっか。みんな知ってるんだね。この記事のこと」
あーー……先生無理に笑わないで。
先生から紙をひったくって、小さく丸めて火の中にポイッと捨てる和田さん。
何も言わずに燃やしてる姿が、コトー先生への揺らがない態度って感じで大好き。
それを見つめる彩佳さん。
少なくとも診療所でずっとそばにいた和田さんと彩佳さんは、間違いなくコトー先生の味方なんだよね。

誰も来ない静かな診療所。
「わたしは信じてませんから」
「島の人だってそうよ。あんな記事見せられて、来づらくなってるだけです」
「私もそう思うよ」
「ありがとう。彩佳さん、和田さん」
少しだけ笑顔を見せて、でも待合室へ行ってしまうコトー先生。
彩佳さんと和田さん、歯がゆいだろうなあ。
もうつらい。コトー先生の背中が本当に寂しそうで……。

「俺の話は聞かなくていいのか」
取材を続ける巽さんの元へ自らやってきた原さん。
「憎んでる?」
「ええ」
「……さあ、どうだろうな」
「だってあなたは息子さんを殺されかけたわけでしょ」
歪んでるなあ認識が。
「……俺はあいつをずっと許せなかったよ。今でもひょっとしたら許してねぇのかもしれねぇ」
初めて明かされる原さんのコトー先生への感情。
一人の人間として話をするためにレコーダーを切れという原さんがかっこいい。
「俺は今、この記事を読んでも半分は信じられねえ。なんでだかわかるか?」
「……さあ。俺には」
「あいつが誠実だからだよ、命に対して」
「少なくともこの半年、あいつはこの島で、島の人間のために必死で働いてきた」
「それだけは認める」
思えば原さんは、これまで要所要所でコトー先生に疑問を投げかけ、難しい問題への対応を迫り、それに答えようとするコトー先生の姿を見てきました。
誰よりもシビアに、でもフラットな視点で。
そんな原さんの目には、コトー先生が命に対して誠実に接していると映った。
それが事実で真実。
「あんたが記事を書くのは勝手だ。だけど書くなら事実を伝えてくれ」
「こういう雑誌ってのは、書き手の思いひとつで真実も歪められちまう気がしてな」
核心をつく原さん。
確かにあの記事から感じられるのは明らかな敵意と憎しみだもんなあ。
記者にこそ、フラットな視点が求められるのに。
それに対し巽さんは、真実を歪めてきたのは「五島と大学病院」だと反論。
「我々はできる限りのことをした。五島医師は誠意を持って治療にあたった……? 冗談じゃない! 俺はこの目で見たんだよ。救急車で運びこまれてきた女の子を置き去りにして、後から来た患者の手当をした五島を」
「その女子高生ってのは俺の妹のことだからな」
巽さんは亡くなった患者の遺族。
目の前で見たからこそ、どうしようもない憎しみに囚われているんですね。
「もしもだ。あんたの息子がその日船の上で死んでいたとしたら、あんた五島を許せるか?」
この問いかけはきつい。
ただでさえ、島の医者にいい加減な診察をされたせいで奥さんを亡くした原さんだもん。
切り刻んでサメの餌にしてやるって言ってたからなあ。
許せるわけがない……。
「俺は書くよ。それが俺にとっての真実だからな」
巽さんの気持ちになったら、許せないのはわかる。わかるよ。
でも、これは大学病院の説明が悪いのも大きい気がするなあ。

◇事実と真実

記事を前に悩む星野さん。
「コトー先生、大丈夫かしら」
「こんな噂が立ったら、この島にいられなくなるんじゃ……」
優しいなあ昌代さん。
コトー先生が島に来たときからずっと。優しいよね。
心配する昌代さんに、俺が何とかすると応えるも……。
そんな星野家を訪ねてきたのはコトー先生。
星野さんと外で話をすることに。
話を聞きたいけど自分は行けず、立ちすくむ彩佳さんが少し切ない。

「え、本当のことを話す?」
「僕のせいで、星野さんにもご迷惑がかかってるんじゃないですか」
「いや、私のことなんか……」
「みんなの前でちゃんと話をした方がいいと思うんです」
コトー先生、すごい決断だ。
怖いよ普通。
糾弾されるのわかってて、それでもみんなに対して誠実でありたいと思ってるんだなあ。
「そんなことして、もし先生がこの島におられんようなことになったら私は」
「そのときは……そのときです」
もう、この時点でコトー先生、ある程度覚悟が決まってたのかもしれないなあ。
寂しいけど。
星野さん、そんなこと言わないでくださいって言いたかっただろうなあ。
「これまでやってこれたのも、誰にも言わずにそっとしておいてくれた星野さんのおかげだと思っています」
「でも、いつかは話さなきゃいけないことだったんですよ」
「……先生」
頭を下げる星野さん。
秘密を共有していたふたり。
切ない、覚悟の夜でした。

志木那村役場で話をすることになったコトー先生。
「彩佳さん、俺たち行かんでもいいのかな」
診療所では和田さんと彩佳さんがふたりで留守番。
「行ったって同じよ。その話聞いて、何かが変わるの?」
「コトー先生を信じて、この診療所を続けていく。わたしたちにできることはそれしかないじゃない」
彩佳さんの強さ、本当に素敵。
コトー先生を信じる気持ちの強さに胸を打たれる。
「それとも、こんな診療所潰しちゃう? いっせーのせでやめちゃう?」
「彩佳さん、もしも俺が責任取って済むことなら、俺は役場をクビになってもかまわんぞ」
「問題になっとるんだろ。俺が手術を手伝っとることも」
「だから俺は、呼ばれんのだろう」
和田さん……。
和田さんの覚悟もすごい……。この診療所を守るために、クビになってもいいって言えるのかっこよすぎる。
でも和田さん悪くないよ。
もうやだよ……診療所トリオには笑っててほしいのに、ただただつらい。

続々と集まる島民たち。
茉莉子さんも意を決して……。
そしてコトー先生も。スーツ姿、見慣れないなあ。
白衣とシャツばっかりだもんね普段。
村長の話から始まったものの、なんとなく校長先生の挨拶のような雰囲気。(笑)
これは長くなりそう。
「今日の集会であいつは終わりだ」
役場に向かう巽さん。
その車の前に、剛洋くん、クニちゃん、しんちゃん、純平くんが立ち塞がります。
「お前をここから先へは行かせない!!」
「絶対通さないぞ!」
「どうして」
「お前がコトー先生を島から追い出そうとするから!」
「知ってんだぞ! 今から役場に行くんだろ!」
「ああそうだよ。だから、ここを通してくれないか」
「やだ!!!」
「俺たちはコトー先生を悪く言う奴は許さない!」
剛洋くんのこの言葉でもう涙が。
子供たちが拳を握りながら必死に叫ぶの、本当にコトー先生への思いの強さを感じて胸が熱くなる。
なんとか先生のことを守りたいんだって気持ちが伝わってくる。
「コトー先生は良い人だ! 妹のぬいぐるみだって直してくれたんだ!」
「俺は別に悪く言ってるわけじゃないんだ。ただ本当のことを言ってるだけなんだよ」
「嘘つき! うちの母ちゃんお前が酷いこと言いふらしてるって言っとったぞ! それでコトー先生が困ってるって!」
クニちゃん……。道子さん、そんなふうに言ってくれてたんだ。
ちゃんとコトー先生のこと、信じてくれてるんだね。
大雨の中道端で言い合いする訳にもいかず、巽さんは子供たちを車の中へ。

「ほら、肺炎にでもなったら大変だ。これで髪の毛拭いて」
「……いいよ」
「いいよじゃないだろ。ちゃんと拭いて」
「ほら、君も」
「おじさんも拭けよ」
この辺のやり取り、巽さんの人柄が見えて好きなんですよね。
コトー先生には敵意むき出しだけど、決して悪人ではないって伝わるシーン。
子供の体のことをちゃんと心配して、頭を拭いてあげる優しさをもってる人。
それを感じたから、なんとなくクニちゃんと剛洋くんも目を合わせてちゃんと話そうって思ったのかもなあ。
「でも、君らにとってコトー先生ってのはそんな」
「ねえ、なんの音?」
ここ、巽さんもしかしたらこの島での本当のコトー先生について、子供たちから聞くことができたかもしれなかったんだよなあ。
だけど遮るように嫌な音が聞こえてきて……。

「この記事についてですが、僕がこの女子高生を見殺しにしたというのは」
「事実です」
コトー先生……。言い訳しないんだよなあ、先生は。
"見殺し"って、そんなわけないのにね……。

土砂崩れに巻き込まれた巽さんたち。
巽さんは頭から血を流していますが意識があり、クニちゃんや剛洋くんは大きな怪我はしていません。
ただ純平くんは怪我の痛みがあり、しんちゃんは出血し意識も無い様子。
二度目の土砂崩れの音を聞き、巽さんは剛洋くんとクニちゃんを外へ。
そこへ自衛隊の車が通りかかり、2人は助けを求めます。

「コトーの話はわかったよ。金の話はともかくとしてさ、記事に書いてあったことは事実なのか?」
「はい」
コトー先生の返事を聞いて、悔しがるシゲさん。
「俺たちはよお! てめえを信用してよお! みんなもよ、お前のことを……ちくしょうみんなを信用させやがってこの野郎!」
「星野!! おめえもおめえだこの野郎!! このことを知ってててめえ、それで知ってて連れてきたのかこの野郎!!」
怒り狂うシゲさんに、星野さんは唇を噛んで耐えるように頷くのみ。
シゲさん、裏切られたような気持ちなんだろうなあ。
でも、事実が必ずしも真実ではないから……。
そんなとき、役場へ土砂崩れの連絡が。

◇車の中で

自衛隊が土砂を掘り返すも、なかなか進んでおらず、車と中の3人は生き埋め状態に。
駆けつけた彩佳さんと和田さん、そしてコトー先生。
ようやく木の根をどかして車の窓が見えました。
「その中に入れますか?」
「人ひとりくらいだったらたぶん」
「俺が入る!」
「待ってください! 僕が入ります」
努さんを止めたコトー先生。
さっきまで糾弾されてた張本人ということもあって、周囲は一瞬固まるけれど、医師としてコトー先生は誰よりも冷静で的確。
「中の、子供たちの様子を見ないと。原さん入口をもっと広げてください」
「わかった」
危険を顧みず、自分にできることをするために動くコトー先生。
「おい。……危ねえから被ってろ」
シゲさんが差し出したのはヘルメット。
ここで泣きそうになる。
あんなに怒ってたのにね。でもやっぱりコトー先生はコトー先生だって、さっきの一瞬でシゲさんにもわかったから……。
車内に入ったコトー先生。
巽さんの足の怪我を気にしつつ、純平くんとしんちゃんの様子を見ますが、しんちゃんは何度呼びかけても返事がない……。
「よおーし! それじゃあ元気になるようにしようなー!」
「もしかして……注射?」
「純平くん勘がいいねー。ちょっとチクッとするけど、我慢するんだぞ」
こんなピンチのときでも明るい声で励ましてくれる先生。
素敵なお医者さんだよ。
そんなコトー先生の様子を観察している巽さん。
頭の怪我に気づいたコトー先生がヘルメットを渡そうとしても拒否。意地になってます。
外では必死の救助活動が続くものの、上の方ではまたも土砂の音が。
「おい、聞こえないのか五島。来るぞ次が」
「……」
「お前まで土砂に巻き込まれたら誰が治療するんだよ!」
「先生行っちゃうの?」
心細さに手を伸ばす純平くん。
握っていたしんちゃんの手と一緒に、ギュッと握るコトー先生。
「僕はここにいるよ」
「ずっとそばにいるから、心配しなくていいんだよ」
優しくてあったかい声に、僅かに微笑む純平くん。
「お前、俺の前でいいとこ見せようってのか」
「今更いい医者ぶっても遅いんだよ!……五島!!」
巽さんの声が耳に入っていないように、優しく純平くんとしんちゃんの手を包み込む先生。
その手に純平くんは安心したように微笑んで目を閉じます。
この純平くんの顔が、本当に嬉しそうで、心から先生を信頼してるのがわかって、「ああ、これこそが"真実"じゃん」って思うんです。
どんな言葉を紡ぐよりもわかりやすい、この光景こそがコトー先生が築いてきたものの正体。
それがわかってしまったから、巽さんも動揺している。
だってこんな死ぬかもしれないときに、いい医者ぶる余裕があるわけないから。
これがコトー先生の真実だって、受け入れたくなくて叫んでる。

◇医者の判断

ついに車内から救出が成功。
純平くんを助け出し、しんちゃんの姿が見えたところで春江さんから悲鳴が。
しんちゃんのお腹には傘が突き刺さっていました。
「痛かったろ……今抜いてやるからな!!」
「抜いちゃダメだ!」
「診療所に着くまで傘はこのままにしてください。大量出血の恐れがあります」
努さん、目の前で息子が大変なことになってるのに、何もしてやれない悔しさで頭がおかしくなりそうな気持ちが伝わってくる。
しんちゃんは担架で運ばれて行きますが、その後ろで足を引きずりつつ歩く巽さんにコトー先生は違和感を覚えます。
どう見ても骨折しているのに歩けると言う巽さん……。

診療所にて。
しんちゃんのオペの準備を始めつつ、巽さんのレントゲンを確認するコトー先生。
「やはり骨折していますね……痛くはありませんか?」
「……ああ」
「ほんとに痛くないんですか」
「俺のことはいいから早く子供の手術をしてやれ。なんだか目がかすむ、目薬ないか?」
「目がかすむんですか?」
「たいしたことはない。目薬だったらなんでもいい。頼む」
ここでコトー先生、ある疑惑を抱き注射針を手に。(観察眼と行動力がすごい)
巽さんを座らせ、
「巽さん僕の目を見てください」
視線を合わせた瞬間、膝に針を刺しました。
彩佳さんと和田さんは驚いた表情。コトー先生の行動にか、それとも反応を示さない巽さんにか……。
「どこか痛いところはありませんか?」
と尋ねるも、痛くないとの巽さんの話にコトー先生は確信。
「あなたは脳に損傷を負っています」
「それも軽い損傷じゃない、すぐに処置しないと手遅れになります」
コトー先生は本気。
だから真剣にそう伝えているんだけど、巽さんはそんなコトー先生を信用できません。
「お前いったい何を企んでる」
「彩佳さん、開頭オペの準備を! 巽さんのオペを優先する!」
「はい」
コトー先生の勢いに、彩佳さんも少し気圧されている様子。
「冗談じゃない! 俺はお前に手術なんか頼んだ覚えはないんだよ!」
「誰か! 誰か来てくれ! 殺される俺は! 五島に殺される!」
巽さん、自分がそんな重傷だと信じられず、コトー先生の言うことを真っ向から否定。
その大声に反応したのは努さんや春江さんでした。
「信一をほったらかして、この記者を優先するって言うのかよ!!」
「コトー先生。うちの息子は、あんたのこと庇って土砂崩れに合ったのよ! それを、あんた同じじゃないですか! 同じことしてるじゃないの! 今日役場で言ったのと同じこと! うちの息子を見殺しにするつもりなの?」
ふたりはしんちゃんの親だから、やっぱり納得できない気持ちはわかるよ、理解できる。
でも、コトー先生がかわいそうでなあこのシーンは。
「出ていってください」
「真一くんを救けたいならとにかくここから出ていってください!」
「僕はふたりとも救けます! だからここから出ていってください!」
叫ぶコトー先生に、漁師たちは反論。
横暴って言われても、何を優先すべきか……それは感情じゃなく医者のコトー先生だけが判断できること。
「いい加減にして! ここは診療所よ! この診療所のドクターはコトー先生よ! どうして信じられないの? 今までコトー先生に救けてもらったこと、みんな忘れちゃったの!?」
彩佳さん……。いつでも先生の味方でいてくれる。
ありがとうって言いたいよ、本当に彩佳さんの存在に救われるよ。
「もしもふたりに何かあったら、私はこの島を出ていきます」
「ナースの仕事も、診療所も辞めるわ!」
彩佳さんの言葉に驚く星野さんと昌代さん。
これほどまでの覚悟とコトー先生への強い信頼が、彩佳さんにこの言葉を言わせてるんだなあ。
しかし、その言葉も巽さんには響かず……。
「コトー先生よ。……殺したかったら殺せよ」
「俺を殺せ。そうすりゃお前は殺人罪だからな」
コトー先生にそんな言葉向けないで。
人を救おうとして、そのために必死になってきた先生に、それだけは言わないでほしい。
巽さんからしたら、コトー先生が邪魔な自分を体よく消そうとしてるように思えたんだろうけど、そんなことする人じゃないって、もう車内で見たからわかってるはずなのにね。
なおも言い募ろうとした巽さん。
ついに倒れてしまいました。
「彩佳さん、硬膜外血腫だ! すぐにオペします!」
「はい」
「和田さん。信一くんを病室に移してください」
「はい!」
コトー先生の判断は本当に早い。
それが、努さんの目には非情に写ってしまったのかな。
「コトー! 俺の息子はどうなんだ!!」
悲痛な叫びがつらい。
コトー先生はふたりとも救うと言ったけれど、努さんは見捨てられたように感じてるんだろうなあ。
親は自分の子供が一番大事だから、理屈じゃない……それはわかるよ。
特にしんちゃんは、お腹に傘が刺さったまま……残酷で、見ているのも本当に辛いだろうから。
でも、医者としてコトー先生の判断が正しいから、わかってほしいよやっぱり。

巽さんの手術を開始すると同時にエンディング。
物語は次回へ。

和田さんの写真は診療所で勉強する剛洋くんとコトー先生。テストを広げる剛洋くん。そして、しんちゃんとぬいぐるみを直してもらった桃子ちゃんとコトー先生。
子供たちといるコトー先生、いつも優しい顔してるんだよね。
あったかい写真だなあ。

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