「できること」と「やりたいこと」は必ずしも一致しない。〜韓国ドラマ未生-ミセン-を見て考える〜
社会人のバイブルと言っても過言ではない、韓国ドラマ「未生-ミセン-」。そんなヒューマンドラマに出会えたからこそ、『働くって何だろうか』と考えてみた。
未生-ミセン-とは
2014年に韓国で放送された韓国ドラマで、2016年に日本でリメイクされた。誰にも頼れず1人で生きてきた元囲碁の棋士が、会社員となり、厳しい現実に歯を食いしばりながらも「共同作業」を通じて成長していく様子を描いた作品。
新人の苦悩と、重圧と戦い新人の言葉に突き動かされる上司の両方が描かれており、働く上で大事な事に気付かされる良作だと思う。
囲碁の才能を持ち、プロを目指していた主人公が、夢を諦めるところから物語は幕を開ける。
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働くことは、自立すること。親の負担にならず、自分でお金を稼ぎ、早く1人で生きていくことができるようになりたい。社会に出たばかりの頃の私は、少し焦っていたのかもしれない。
働き初めて感じたのは、独り立ちできた達成感とは程遠かった。「今自分の能力をかき集めて実現できること」と「やりたいこと」は必ずしも一致しないということ。やらねばならないことに埋もれ、とにかく無力だった。
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夢を絶たれ絶望的な目をした主人公チャングレは、ある商社のインターン生となり、正社員を目指すこととなる。囲碁では「天才」と賞されたはずなのに、会社では仕事に不慣れな新人だ。
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自分が成長しているのか実感を持てず、走っている方向は合っているのか、周りと比較して遅れを取っていないか、新人の私は不安でいっぱいだった。ひとしきり悩んで辿り着いたのは、「とりあえず何でもやってみる」ということ。できる事が目の前のごく僅かなことしか無いのであれば、それを全力でやってみて、積み重ねて行こうと自分を納得させていたのかもしれない。
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囲碁で培った「勝つために復習する」PDCAのサイクルと暗記力を仕事に生かして、チャングレは猛スピードで成長していく。目の前のことに食らいつき、貪欲に仕事を取りにいく姿勢はとにかく尊敬できる。
やらねばならないことを繰り返し取り組み、「できなかったことが、できるようになる」ことで、彼の周りには少しづつ機会が訪れ始める。一見まわり道のように見える努力だって、実は自分の将来の選択肢に繋がっているのだと思わせてくれる。
一方で、目の前のことに重要性を感じられない時だってある。
チャングレと同期入社で、とにかく周りの出世が気になる男チャンベッキだ。直属の上司から出される単純作業のような宿題に意味を見出せず、「この会社でずっと働くべきなのか?」「もっと仕事を任せてもらえる会社へ行くべきではないのか?」と頭を悩ませる。
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仕事の基礎や、習わしがあると気付いたのは、いつだろうか。私は人よりきっと時間がかかったと思う。「この仕事、何のためにやるのか?」が理解できない時こそ、ヒントが落ちている。
資料を読みやすくするため。相手に伝わりやすいようにするため。基本的に意味のあるルールは、協同する相手への配慮と目的達成のためにあるのだと思う。それが結果的に、ゴールまでの速度を加速させていく。さらに基礎があるかどうかで、できることの幅が広がっていくのだろう。
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貪欲に成長していくチャングレは、いつしか仕事を任されるようになっていく。大きな仕事になるほど、周囲を巻き込み協同していく必要があるが、囲碁の世界で長年1人で戦い、どんな苦労も1人で背負ってきた彼にとって、誰かと協同することは特に難しい壁だ。
信頼し尊敬する「誰かに必要とされること」「社会の誰かの役に立つこと」この喜びに触れた時、できることの延長線上で、新たなやりたいことがあるのかもしれない。
プロの棋士が夢だった彼が、社会人として成長していき、出来ることが増えたことでどんな展開が待っているのかは、是非本編をお楽しみください。
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「育った環境も、やってきたことも違うから、周りと比較しなくても良い。過去の自分と比較して、前に進んでいるかが一番重要だ。」いつもどこか自信がない私に、こんな言葉を送ってくれた人がいた。
この人のために頑張りたい。誰かの笑顔溢れる瞬間を作りたい。やりたいことの本質は今も昔も大きく変わっていないと思うが、人としてできることが少しづつ増えたことで、やりたいことの解像度がほんの少し上がり、できることの延長線上に新たなやってみたいこととも出会えたように思う。
明確にやりたい職業や夢があって無力だと感じても、そんな夢を見つけられなくても、今できることを頑張り、基礎を身に着け、とにかく日々を生き抜く。働くことは、自立することでもあるけど、できることを増やして、その先を楽しく生きるためでもあるのだと思う。
何のために働くか、正解なんてないし、今も答えは明確に分からない。悩んだら、またミセンをそっと見て考えて見ようと思う。この作品に出会えて良かった。
*画像は公式サイトよりお借りしましたhttp://program.tving.com/tvn/misaeng
ドラマは、ネットフリックスから視聴可能です。
https://www.netflix.com/jp/title/80165295
ドラマを見て感じた個人的な見所はこちらです。