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こどもそうちょう「妖美万瞳」編

岩本蓮加と連絡先を交換して以降、例の少女については、未だに名前も分からないし、会えたこともないが、○○の日常は確実に変わっていた。

相変わらず、友達の冴木寛人とは仲がいいし、いつも一緒にいるが、学校内で岩本とすれ違うと、向こうから声をかけてくれるようになり、最初こそ、寛人も驚いていたが、徐々に慣れ、寛人も岩本と話せるようになっていた。


さらに他にも変化はあり…



寛人: 昼飯食べに行こうぜ。


○○: うん。


寛人: ちょうど、あの人も来る頃だろうし笑


○○: うん…


ドタバタ


寛人: ほら笑


ガラガラ!!


??: ○○〜!!


○○: ちゃんといますから、叫ばないでくださいよ。


??: ふぅ〜良かった〜今日もいなくなってないね。


○○: だって、どこに行っても、逃げきれないんですもん。


??: 笑、そりゃ美月ちゃんと○○は、運命の赤い糸で繋がってるんだから!


○○: はいはい。


美月: もう、冴木君!○○が冷たい〜


寛人: いつも通りじゃないですか?笑


美月: いや、いつもより2℃だけ冷たい。


寛人: 笑、そうですか。


美月: さ、○○行くよ〜冴木君もね〜


○○: はーい…



それは、燦姫四天王の1人である"山下美月"が、○○に彼氏扱いをしたり、ボディタッチをしたりと絡んでくるようになったことだ。


しかも、何の予兆もなく、突然に…


◆◆◆◆◆


ある日の朝、いつも通り○○が学校に登校すると…



○○: なんか見られてるような…



自意識過剰とも捉えられる、この男の発言であるが、実際に周りから見られており、女子は動物園にいる珍しい動物…コビトカバ辺りを見るような視線を、男子は某写真集に出てくるあの熊のぬいぐるみに向けるような視線を、○○に浴びせていた。



ガラガラ


寛人: あ、○○!


○○: おはよう、寛人。


寛人: おはよう…って、そういう落ち着いた流れじゃなくて、お前!羨まし過ぎるぞ!!


○○: え?どういうこと?


寛人: どういうことも何も、みんなに話が広がってるじゃないか!お前が、あの…


ガラガラ!!


○○: ん?


美月: あ、いた!私の彼氏君!


○○: は?


美月: もう〜なんで、朝一緒に登校してくれないの?


○○: え、いや…誰?


美月: ○○君、ひっど〜い!!シクシク、美月ちゃん泣いちゃう…


○○: ちょっと…いきなり泣くだなんて…


「おい!先輩を泣かすんじゃねぇ!」


「そうだよ!」


「ひどいよ、彼女を泣かすなんて!」


○○: あ、は?いや、マジでどういうこと…


寛人: …行くぞ、○○。


○○: う、うん…



そのやり取りに違和感を覚え、○○の反応もおかしいと思った寛人は、美月が下を向いた隙に、○○を連れて教室を飛び出し、空き教室の中に入った。



○○: 助かったよ、寛人。


寛人: いや、明らかに変だったからな。


○○: マジであの人誰なんだろう…


寛人: …あの人は、岩本先輩と同じ、燦姫四天王の1人、山下美月先輩だ。


○○: え、四天王?!


寛人: あぁ、異名は…


妖美万瞳ようびばんどう


○○: あの人が四天王…いや、でもなんであんなことを…


寛人: これだけ確認させてくれ、○○は山下先輩と付き合ってないんだよな?


○○: そりゃもちろんだよ!一度も会ったことないのに。


寛人: 分かった…なら今の状況なんだが、今朝から学校中に、○○と山下先輩が付き合ってるっていう話が広まってるんだ。


○○: それで、あんなに見られてたのか…それにしてもなんでそんな噂が…


ピロン


○○: ん?あ、岩本先輩からだ。


蓮加 M: 美月と付き合ってるってマジ?


寛人: なんだって?


○○: その噂、岩本先輩にまで広がってる…


寛人: ま、だよな。


○○ M: 断じてマジじゃないです


「○○く〜ん!どこにいるの〜!!」


寛人: やばいぞ、近づいてきてる!


○○ M: 今、いきなり追いかけられてて、助けて下さい!


蓮加 M: 笑、場所は?


○○ M: 2階奥の空き教室です


蓮加 M: 了解


「○○く〜ん、出てきてよ〜!!」


○○: ど、どうしよう、寛人!


寛人: どうにかここでやり過ごすしか…


ガラガラ!!!


○○: ヒイッ!


美月: はっけ〜ん、愛しの○○君!



勢いよく扉を開けた美月は、すぐに○○に気づき、目を合わせる。



美月: もう、彼女を置いて、1人でどっかに行かないの。美月ちゃん、寂しかったんだからね!


○○: いや、あの初対面ですよね?


美月: え〜忘れたの?あの熱く激しかった夜を笑



完全に美月から存在を認識されていない寛人は、驚いた表情で○○を見るが…



○○: いやいやいやいやいや…



めちゃくちゃな勢いで、首を振りながら否定する。



美月: 笑、それとも、今、思い出させてあげようか?ニコッ


○○: え?


寛人: あ…



俺はお暇した方が良さそうだ、と考え、寛人が教室から出ようと体の向きを変えたところで…



ペシッ


美月: あいたっ!


蓮加: いつまでふざけてるの?美月。


○○: 岩本先輩!!



救世主の登場に、○○はキラキラと目を輝かせる。



美月: あ、蓮加。


蓮加: ○○君、大丈夫?何もされてない?


○○: されそうにはなってましたけど、助かりました。


蓮加: 良かった笑…で、美月はなんでこんなことを?



尋ねた蓮加も、一番答えを欲しがっている○○も、完全に存在を認識されていない寛人も、美月に注目する。



美月: そりゃもちろん、○○君に惚れたから!


○○: え?


美月: 先走って彼氏って言ってたのは、ほんのちょっとだけダメだったかもしれないけど、すぐに付き合うことになるんだから、良いかな〜って思って笑



きゅるんきゅるんの大きな目で、○○を見つめながら、そう答える。



○○: で、でも、本当に初対面ですよね?


美月: そう思ってるのは、○○君だけかもよ笑


○○: …なんで僕なんかを?


美月: んもう、自分の魅力に気づいてないなんて…これから美月ちゃんが、たくさん教えてあげる!


○○: …



助けを求める子犬のような目で、蓮加を見る。



蓮加: うん。ここまで行ってると、もう誰も止められないよ。


○○: え…


蓮加: だから、蓮加の方で付き合ってるって噂は、美月が勝手に流した噂で、美月が○○君にアタックしてる途中だよ、的な噂を追加で流しとく。


○○: 追加の噂はなくても良いんじゃ…


蓮加: 笑、そもそもなんでそんな噂が流れたのかって考えて、色々と勝手に考察するヤツらが、絶対に湧くからね。必要なことなんだよ。


○○: …分かりました。よろしくお願いします。


蓮加: うん。


美月: え?付き合ってくれるの?!


○○: そっちじゃないです!僕は岩本先輩に言ったんです!


美月: え〜そんなに私と付き合うの、嫌?



再び、きゅるんきゅるんの大きな目で、しかも上目遣いで、そう聞く。



○○: ///い、嫌ってわけじゃないですけど、まだお互いをシリアエテナイトイウカ…マダハヤイトイウカ…


美月: ん?笑


○○: と、とにかく、もう少し時間をください!


美月: 笑、分かった。絶対に美月ちゃんに惚れさせるから、改めて、これからよろしく!!


キンコンカンコーン


美月: あ。


蓮加: 美月、帰るよ。


美月: はーい。またね、私の王子様♡



○○に向かって、可愛くウインクをしながら、美月は蓮加と共に教室を出て行った。



○○: はぁ…


寛人: うん、なんというか…頑張れ。


○○: うん。



続いて、2人も自分達の教室に戻るのであった。


◆◆◆◆◆



美月: はい、○○、あ〜ん…


○○: やめてくださいって、いつも言ってるじゃないですか。


美月: でも〜美月ちゃんのを、食べて欲しくて…



きゅるんきゅるんの大きな目で訴える。



○○: ///…一口だけです。


美月: うん笑。あ〜ん…


○○: パクッ…モグモグ


美月: どう?おいしい?


○○: めっちゃ、美味しいです。


美月: 良かった〜朝から頑張って作ってきたんだよ!


○○: …ありがとうございます。


美月: 何言ってんの?大好きな人のためだったら、いくらでも作るって!


○○: …


美月: はい、○○も美月ちゃんに、あ〜んして?


○○: む、無理です!


美月: なんで?


○○: ///は、恥ずかしいからです。



顔を真っ赤にしながら、そう答える○○を見て…



美月: 笑、か〜わい。今日のところは、勘弁しといてあげよう。ねぇねぇ、このおかず、これと交換しよ!


○○: それは、良いですよ笑


美月: やった〜笑


寛人: モグモグ…



うん、俺は一体、何を見せられてるんだ。

そう考えながら、2人のやり取りを同じ席で弁当を食べながら見ている寛人。


初め、美月が一緒に昼食を食べようと○○を誘ってきた時は、もちろん遠慮したのだが、○○が、寛人も一緒じゃないと意地でも行きません、と言った結果、美月が冴木君も来て、と言い、それ以降こんな状態である。


○○: あ、取り過ぎじゃないですか?


美月: え〜そんなことないよ〜


寛人: …



美月に関して、寛人が持っている情報の中で、これまでに○○に伝えていないものがある。

それは、美月が男好きで、複数人の男と関係を持ってるらしいといった噂があることだ。


まぁ、なぜ寛人がその話を○○に伝えてないかと言うと、真偽が定かでは無いから、というのもあるのだが、一番は、この話を、初心な○○に伝えても良いものなのか、という心配があったからだ。


そんなこともあり、寛人は一歩引いたところから、大事な友達と、得体の知れない先輩のやり取りを眺めていた。

○○は美月に遊ばれているだけなのでは、という考えと、○○に手作り弁当を用意するぐらいなんだから、それはないだろう、という考えの間で揺れながら。


◇◇◇


放課後


寛人: 帰ろうぜ〜


○○: うん。


寛人: 笑、山下先輩は待たなくていいのか?


○○: 多分、あの人のことだから先回りしてるよ。


寛人: それもそうだな笑



と、2人が荷物をまとめて、教室の外に出ようとしたところで…



ガラガラ


「え、あの人は…」


「きゃーサッカー部の王子様よ!」


「イケメン王子って呼ばれてる、あの人?!」


寛人: なんか、すごい人が来たみたいだな。


○○: 誰か探してるみたいだけど…


イケメン王子: あ、えっと、齋藤○○君いるかな?


○○: ん?僕?


「そこにいます!」



教室にいた女子生徒が、勢いよく○○の方を指さす。



イケメン王子: 笑、ありがとう。君が齋藤○○君か。


○○: あ、はい。


イケメン王子: ちょっと話があるから、来てくれない?


○○: えっと……行きます。



周りの生徒、特に女子生徒から、行けよ!という視線を送られ、○○はイケメン王子について行き、空き教室へ。



イケメン王子: よし、誰もいないな。


○○: あの、お話って?


イケメン王子: お前、美月と付き合ってるんだって?



先程までのキラキラオーラを振りまく男と、同一人物とは思えないような、鋭い目をしながら、ドスの効いた声で、○○にそう聞く。



○○: い、いえ、付き合っては無いです…


イケメン王子: ふ〜ん…ま、どっちにしろ、アイツに近づくな。


○○: 近づくなと言っても、勝手に近づいてくるというか、なんというか…


イケメン王子: うだうだ言ってんじゃねぇよ。アイツは、僕の彼女なんだから。お前がどうこうしたところで、何にもなんないの。


○○: え、山下先輩と付き合ってるんですか?


イケメン王子: あぁ笑。美月は僕の彼女だ。


○○: …じゃあ、ちゃんと断った方が良いですね。


イケメン王子: 笑、可哀想に。お前は遊ばれてたんだよ。


○○: そう…ですか…


イケメン王子: じゃ、そういうことで。



美月に既に彼氏がいるという話への驚きと、少しの悲哀、そして、なんで自分にずっとあんなことを?という疑問で、頭がぐちゃぐちゃになった○○を残し、イケメン王子が教室を去った。

その後すぐに、教室にいた寛人に話を聞いた美月が、空き教室にやってくる。



美月: なんの話だったの?


○○: いえ…大した話では。


美月: …じゃあ、帰ろっか笑


○○: ……あの、山下先輩。


美月: な〜に?


○○: もう、やめましょう。


美月: え?


○○: 先輩には付き合ってる人がいるんでしょ…なら、こういうことはやめた方が良いです…


美月: …


○○: …では…さようなら。



目の前に現れた美月に対し、思考がまとまらないまま、自然と口から出てきた言葉を、ただ一方的にぶつけた○○は、走って教室に戻り、驚く寛人や他の生徒に、意識を向けないまま、荷物を持って、学校を出て行った。


そして、1人になった美月は、携帯を触りながら、一言、こう呟いた。



美月: 潮時かな。




一方、方向音痴の神様とズブズブの関係である○○は…



○○: …ここ…どこだ…



もちろん、迷子になっていた。

美月の本当の気持ちとか、これまでのこととか、色々と考えながら、走ったことで、途中で道を間違え、その結果、完全に道が分からなくなっていた。


家への帰り方が分からないという不安と、美月を冷たく突き放してしまったことへの罪悪感、そして、美月との日々がなくなることへの寂しさ。

これらの感情が頭の中をぐるぐる回っている状態の○○が、その場に立ち尽くしていると…



バシッ!!


○○: 痛っ!!


腰に衝撃が走り、○○は反射的に後ろを振り向いたが、誰もいない。

そして、これまでの経験から、流れるように下を向くと…



??: ムー



頬を膨らませた、例の少女がいた。



○○: もう、急に何するの?


??: またまた偶然、見つけちゃったから!ムー


○○: それでも叩くことないでしょ。


??: ムー


○○: ってか、なんで膨れっ面なの?


??: だって、祐希の焼き芋仲間なのに!


○○: 祐希の?


??: うん…祐希の焼き芋仲間なのに、最近は全然話してくれないし、それどころか、ずっと別の子と仲良くしちゃって!ムー


○○: う、うん、いや、その前に…祐希?



ここでようやく、しばらくの間、見逃し続けていた事実に気がつく。



??: 祐希ですけど、なんですか?!


○○: え、君の名前が、祐希?


??: そうですけど!"与田祐希"ですけど!


○○: 与田祐希ちゃん…やっと名前が分かった…


祐希: …あ、名前言ってなかったっけ?


○○: うん。聞くの忘れてて…


祐希: 祐希も言うの忘れてた……ブフッ笑


○○: クフッ笑



あまりの自分達のおかしさに、笑いが込み上げ、2人は同時に笑い出す。



祐希: 友達なのに、名前も知らないなんて笑


○○: 僕も、それでずっとモヤモヤしててさ笑


祐希: 与田祐希だよ。ちゃんと覚えてね。


○○: うん。僕の名前は…


祐希: 知ってる、齋藤○○君。


○○: なんで知ってるの?


祐希: 調べたから。


○○: どうやって?


祐希: 友達の力。


○○: さすが友達の力だな…


祐希: でしょ?笑


○○: うん笑


祐希: …って、違う違う!祐希は怒ってるの!プクーー



そう言って、再び頬を膨らませる祐希。



○○: え、なんで?


祐希: さっきも言ったでしょ!○○は祐希の友達のはずなのに、最近はずっと美月とばっかり一緒にいるじゃん!


○○: 山下先輩……なら、もう大丈夫だよ…山下先輩が僕に近寄ることはないと思う。



悲しげな表情で、そう言う○○。



祐希: …なにかあったの?


○○: 喧嘩…いや、僕が一方的に冷たく突き放しちゃってさ…


祐希: そっか…



夕日に照らされる建物の影に立つ、2人の間に、少しばかりの沈黙が続く。



祐希: ○○は美月と仲直りしたい?


○○: …うん。少なくとも、ちゃんと謝りたい。


祐希: だったら、向き合わないとね。美月に。


○○: うん。明日、会いに行くよ。


祐希: 笑、そうしな。あと、美月は、そうだな…自己犠牲の塊みたいな子で、悪い子ではないから、ちゃんと話してみると良いよ。


○○: 分かった笑。って、今更だけど、山下先輩と知り合いなの?


祐希: うん!友達の1人!


○○: へぇ〜



祐希に背中を押され、美月に会いに行くことを決めた○○だったが、祐希と同い年だということを信じて疑わないため、美月と祐希が中学も一緒だったのかな、と、またまた的外れなことを、この時考えていた。



○○: ありがとね笑


祐希: いえいて、友達ですから笑


○○: 笑


祐希: で、どうするの?この後。


○○: この後か〜………


祐希: 道案内しようか?


○○: …お願いします。


祐希: ついでに、ここの近くの美味しい餃子のあるお店に連れて行ってあげる。


○○: ありがとうございます。



こうして、2人は餃子を食べてから、再び○○の家の前で別れるのであった。


◇◇◇◇◇


翌日


昨日の放課後、祐希に背中を押された勢いのまま、揺るがぬ気持ちを持って、○○は学校に登校する。



寛人: なぁ、昨日の放課後は何かあったのか?


○○: その…山下先輩を冷たく突き放しちゃって。


寛人: いつもの感じとは、また違う感じでか?


○○: うん…


寛人: そうか…で、どうすんの?


○○: 今日会って、謝ろうと思う。


寛人: うん笑、それが良いな。


○○: ってことで、探してくる。


寛人: 俺も手伝おうか?


○○: いや、これは僕一人でやんないといけないことだから。


寛人: おう笑


○○: まずは、山下先輩のクラスからかな…



荷物を机の上に置きながら、そう言う○○。



寛人: …あ、場所は分かるよな?


○○: ……多分。


寛人: ………道に迷ったら、すぐに連絡しろよ。


○○: 分かった。



と、寛人と真剣な表情で、言葉を交わした後、学校中を探し回ったが…



○○: はぁ…


寛人: まだ見つからねぇか。


○○: うん。昼休みが終わるから、帰ってきたけど…まさか、ここまで見つからないとは…


寛人: もしかしたら、今日は学校に来てないんじゃね?


○○: かもね…



もし、そうだとしたら自分のせいかな、などと考えながら、○○は机に突っ伏す。



寛人: 岩本先輩には聞いたのか?


○○: いや、僕だけで見つけたかったから、まだ。


寛人: もうここは聞くべきだろ。山下先輩が学校にいなかったら、元も子もないんだし。


○○: …そうだね、聞いてみる。



顔を上げた○○は、ポケットから携帯を取り出し、蓮加へメッセージを送る。



○○ M: すみません、山下先輩って今日学校に来てますか?



すると、ちょうど携帯を見ていたのか、すぐに返事が返ってくる。



蓮加 M: うん、来てるよ


○○ M: どこにいるのかとかは、知ってます?


蓮加 M: さすがに分かんない笑


○○ M: 分かりました

○○ M: ありがとうございます


蓮加 M: はーい


寛人: どうだった?


○○: 学校にはいるみたい。


寛人: なら…


キンコンカンコーン


寛人: 放課後だな。


○○: うん。



◇◇◇


放課後



○○: じゃあ、行ってくる。


寛人: もう一回聞くが、手伝おうか?


○○: お願いします。


寛人: OK笑。そしたら、俺は校舎の中を隈無く探すから、○○は外を探して来い。外だったら校舎も見えるし、道に迷う可能性も少ないだろう。



ここで、道に迷う可能性がないと言い切らないところが、方向音痴の神の子とも言える○○を、寛人が信頼している証である。



○○: 分かった。


寛人: 見つけたら、すぐに連絡するから。絶対に仲直りしろよ!


○○: うん笑



そうして、2人は分かれて、美月を探し始めた。


一方、探されているとも知らない美月は…



美月: こんなところまで来て…一体、何の用かな?


暴君: まぁ、もうちょっと待っとけ。



グラウンドの奥にある体育倉庫の裏、人が滅多に来ないところで、柔道部の暴君と呼ばれているガタイのいい男と、2人きりでいた。



美月: もしかして、デートのお誘いとか?笑


暴君: んなわけねぇだろ。俺が怒ってんのが、分かんねぇのか?


美月: え〜怒ってるの?なんで?


暴君: お前のせいだよ。


美月: 私のせい?だったら、その悪かったところを教えて、直すから。


暴君: 治すか笑…よく言えたもんだ。ま、アイツらが来るまで待とうぜ。


美月: アイツらって?


暴君: お前もよく知ってるやつ。


美月: ふ〜ん。



そう言って、暴君も美月も携帯を触りながら、その時を待つのであった。



○○: ハァハァ…どこにいるんだ…



体育館側から、校舎の外を探し回る○○は、未だに美月の姿を確認できていなかった。



○○: こっちにいないとなると、校舎の中か、グラウンド側か…



と、息を整えつつ考えていると…



堀: あれ、こんなところで何してるの?○○君。


○○: あ、堀先生。



○○の担任の先生である堀未央奈が、体育館から出てきた。



堀: もしかして道に迷ってる?笑


○○: いえ、人探しをしてて。


堀: あら、探してるのは誰なの?


○○: 山下美月先輩です。


堀: へぇ、美月を…


○○: ちなみに、先生は山下先輩がどこにいるとか、どこにいそうとか、知ってますか?


堀: え〜っとね…あ、確か10分前ぐらいに、体育倉庫の方に歩いていくのを見たよ。


○○: 体育倉庫ですね!ありがとうございます!



堀から、美月の目撃情報を得ることができた○○は、感謝を伝え、すぐに走って向かおうとしたが…



堀: 笑、場所は分かるの?


○○: …いえ。


堀: はぁ…笑、教えてあげるから。落ち着いて。


○○: …はい。



そして場面は再び、体育倉庫の裏へ。



暴君: お、来た来た。


イケメン王子: やぁ、美月ちゃん。


貴公子: ふん…



男2人が合流して、体育倉庫の裏には、美月と、柔道部の暴君、サッカー部のイケメン王子、そしてバスケ部の貴公子の4人が揃った。



美月: やっほ〜笑


貴公子: …随分と呑気なもんだな。


美月: そう?笑


貴公子: ここにいるメンツを見て、何も思わないのか?


美月: いや〜仲の良い男友達が揃ったな〜ってだけだね。


暴君: 男友達だと?


イケメン王子: 美月ちゃんが、本命は僕だけで、他の男はみんなお遊びだからって言ったから、そのままの感じでも許したんだけど。


美月: そのままの感じって?笑


暴君: 未だに納得できねぇんだよな。美月はお前の彼女じゃなくて、俺の彼女なんだよ!


イケメン王子: はぁ?笑


暴君: てめぇも遊ばれてたんじゃねぇの?


イケメン王子: それは、こっちのセリフ。



美月を目の前にして、お互いに睨み合う2人。



貴公子: おいおい、その話は一旦終わったろ。この最低人間な山下美月だけが悪いっていう結論で。


暴君: …そうだな、すまん。


イケメン王子: いや、僕も熱くなり過ぎた。ごめん。


美月: ちょっと、聞き捨てならないんだけど。私が最低人間?笑、ひっど〜い!


貴公子: 笑、紛れもない最低人間だよ、君は。だって、この状況を見て分かる通り、三股かけてたんだから。


イケメン王子: まぁ、あの1年が完全に遊びだっただけ、まだマシだね。あの子も入ったら、四股になるところだったんだし笑


暴君: まさか美月が、んな事をしてるとは思ってなかったからよ。あの1年と付き合ってるみたいな噂を聞いた時は、驚いたぜ笑


貴公子: 同じく。で、その後、怪しいと思って調べたら、これよ笑。君の彼氏って奴が、俺の他に2人もいた。


イケメン王子: ほんと、悲しかったな〜美月ちゃん。


美月: …


暴君: チッ…おい!何とか言えよ!



そう、暴君がいきり立ったところで…



美月: ブフッ…アッハッハッハッハ笑



突然、美月が笑い出した。



暴君: な、何笑ってやがんだ!!


イケメン王子: さすがの優しい僕も、怒るよ。


貴公子: …何がおかしい。


美月: はぁ笑…だって、みんな勘違いしてるんだもん。


貴公子: 勘違い…だと?


美月: 私は、一度も、あなた達と付き合うなんて、言ってないじゃん笑


「は?」



思わぬ美月の返答に、3人の声が重なった。



美月: 私が一回でも、付き合うとか、あなたの彼女とか、言ったかな?ほら、振り返ってみて、私との思い出を笑


暴君: う〜ん…


イケメン王子: …


貴公子: …クソ



しばらく考えたが、全員が口ごもった。



美月: みんなが勝手に勘違いして、怒ってるだけなんじゃん。ま、人間そんなこともあるよ。だから、これからも、男'友達'として、仲良くやってこ。ね笑



そう言って、美月は3人に軽くボディタッチをして、笑う。



暴君: チッ、ふざけんな…んなわけ…


イケメン王子: でもさ、結局のところ、みんなに思わせぶりな態度を取ってたわけでしょ?


貴公子: …


美月: う〜ん、思わせぶりか〜私からしたら、ただ普通に接してただけなんだけど、'3人からすれば'、思わせぶりだったのかな笑



嫌なところを強調した言葉と、嘲笑うような美月の表情に、男達の怒りが溢れ出す。



暴君: このクソ女が!



ガタイの良い柔道部の暴君が、拳を振りかぶり、美月に殴りかかる。



美月: キャッ!!……ニヤッ笑



飛んでくる拳を前にして、美月は目を瞑り、衝撃が来るのを待ったが…



バコッ!!



鈍い音は聞こえたものの、一向に、待ち望んだ衝撃が来ない。



暴君: っ!てめぇは!


イケメン王子: あれ、この子、例の1年じゃん。名前は確か…


貴公子: 齋藤○○。



その声を聞き、美月が目を開けると、自分の目の前に、頬を腫らした○○が倒れていた。



美月: ○○!!


イケメン王子: あらら。関係ない…いや、関係はあるけど…殴っちゃったね笑


暴君: しゃあねぇだろ。コイツがいきなり割り込んで来やがったんだから。自業自得だって。


イケメン王子: にしても、ワンパンで気絶とは、情けないねぇ笑


暴君: そこまで力込めてなかったんだけどな笑


貴公子: まぁ、いいだろ。コイツも調子乗ってて、キモかったし。


暴君: だな笑…さぁ、仕切り直して…覚悟しろよ?クソ女。


美月: …ブルブル…や、やめて…



倒れる○○と、再び拳を振りかぶる男、そして笑みを浮かべて美月を見下ろしている2人の男を見ながら、美月は震えて涙をこぼす。



暴君: 今更、んなことしたって遅いんだよ!!笑


美月: …笑


??: もう良いだろ?美月。


ドスンッ!!


暴君: え?…ガハッ!!



いきなり地面に叩きつけられる、拳を振りかぶっていた暴君。

それを見て、何が起こったのか、そして今の状況が全く掴めず、唖然とする、残った男2人。



美月: あぁ〜あ、私が返事する前に倒しちゃった笑


??: でも、十分だったんじゃねぇのか?その子が殴られたのと、お前の泣き演技で。


美月: ま、そうだね。でしょ?蓮加。


「おっけ〜」



体育倉庫の中から、蓮加の返事が響く。



??: じゃ、コイツらもやっとく?


美月: うん、よろしく。


??: りょ〜かい。


イケメン王子: え?…グヘッ!!


貴公子: は?…ウグッ!!



先程、暴君を簡単に倒した長身の女が、残った2人の男も、すぐに沈めた。



ガラガラ


蓮加: いや〜想定外だったね。


美月: うん…まさか、○○が来るとは…


??: コイツ、凄かったぞ。


美月: え?


??: お前に呼ばれて、私もこっちに走って向かってたんだが、コイツも前にいてな。それで、お前が殴られそうになってるのを見た瞬間、止まるどころか、加速して、お前と拳の間に入り込んだんだ。


美月: …そう。


蓮加: 早く、保健室に連れて行かないと。


美月: うん。


??: ヒョロヒョロなくせして、度胸あるよ、コイツ。


蓮加: まぁ、与田のお気に入りだから。


??: あ、コイツが例の1年か。与田の膨れっ面を見たいからって、美月がちょっかいかけてるっていう笑


美月: …


??: 随分と、懐かれたんだな笑


美月: 保健室まで運ぶの手伝って。


??: おう笑



そうして、意識を失った○○は、長身の女に抱えられて、保健室に連れて行かれ、手当を受けた後、ベッドで寝かされた。



蓮加: 3ヶ月に及ぶ、美月の作戦は成功したわけだけど、そんな雰囲気じゃないね。


??: それだけ、アイツのことを気に入ってんだろ。


蓮加: うん。最初は本当に遊びっぽかったけど、途中からは…ね。


??: ふ〜ん。


蓮加: あの子は、与田が気に入るだけあって、良い子だよ。


??: 良い子ね〜それだけじゃないんだろ?あの、人に興味のない与田が気に入るんだから。


蓮加: さっきの話を聞いて、確信に変わったよ。○○君は、あの人に似てるんだ。与田が憧れたあの人に。


??: それは…


蓮加: ってか、苗字が同じだし、親族の可能性があるけど。


??: なるほどな…


蓮加: 隠れた正義…普段は普通だけど、いざ、困ってる人を見つけたら、助けずにはいられない。そんな正義感を持つ人。


??: 笑、それに美月は惚れたんだろ。


蓮加: 与田もね笑



保健室の外から、ベッドで眠る○○と、そばでじっと○○を見ている美月を眺めながら、2人はそう話していた。



○○: う、うぅ…


美月: あ…


○○: こ、ここは…


美月: ○○…


○○: 山下…先輩?


美月: うん。


○○: え、あっ!


美月: いや、大丈夫だから。今は横になってて。


○○: はい…


美月: その…ごめんね。


○○: …いえ…謝るのは僕の方ですよ。


美月: え?


○○: 昨日はすみませんでした。先輩の話も聞かずに、一方的に冷たいことを言ってしまって。


美月: …何を言ってるの…そんなことよりも…


○○: 僕の方は問題ないんです。見た感じ山下先輩は怪我してないみたいですし…でも、昨日の僕の言葉で、山下先輩が傷ついてしまったんなら…


山下: 笑、あれぐらいじゃ、傷つかないよ。


○○: …改めて、すみませんでした。


美月: 私もごめんなさい、巻き込んでしまって。



と、お互いに謝り合っていると…



堀: いや、いつまでもそうしてたって、しょうがないでしょ。



保健室に入って来た堀が、そう言う。



○○: 堀先生…


美月: …


堀: ○○君としては、美月になんか昨日色々言っちゃったことを謝ってて、美月は○○君に怪我させたことを謝ってる。なら、それで打ち消しで良いじゃん。


蓮加: え、打ち消しってどういうこと?


??: お互いに悪いことしたんだから、プラマイゼロってことだろ、おそらく。


蓮加: なるほど…


堀: さ、パッパと仲直りして。そろそろ完全下校時刻だし。


○○: …


美月: …



堀のむちゃくちゃな仕切りに、○○と美月は唖然としながらも、堀とお互いを見て…



○○: フッハッハッハッハ笑


美月: アッハッハッハッハ笑



めちゃくちゃ笑った。



堀: え、今の笑う要素あった?…まぁでも仲良く笑ってる事だし、いっか。じゃ、さっさと帰るんだよ〜



そう言って、堀は保健室を出て行く。



○○: はぁ〜あ笑…ほんと、堀先生は面白いな〜


美月: ほんとそれ笑……で、仲直りで良いのかな?


○○: はい!


美月: 笑



笑顔で握手をする2人。



??: もう、大丈夫そうだな。


蓮加: うん。


??: じゃ、私は先にあっちに行ってるから、色々と終わらせてこい。


蓮加: 了解。


美月: 動ける?


○○: はい、大丈夫です…ヨイショッ


蓮加: 問題なく歩けるみたいだね。


○○: あ、岩本先輩。


美月: 蓮加。


蓮加: コクン


美月: …さ、○○君、帰ろう。


○○: はい!



そうして、○○は先輩2人と一緒に、教室に戻り…



寛人: おっと、山下先輩と仲直りしたみたいで良かったんだが、どうしたんだ?その腫れた頬は。


○○: えっと、色々とあって笑


寛人: 笑、後で話せよ。


○○: うん。ってか、まだ残ってたんだ。


寛人: 残ってたんだ、って、一向に連絡が来ないから、保健室で岩本先輩に、教室で待っとくように言われるまで、校舎中を探し回ってたんだぞ。


○○: あ、ごめん笑


寛人: 笑、別に良いけど。


蓮加: なら、蓮加達はまだやることが残ってるから、先に帰ってね。


○○: 分かりました。では、また…


美月: うん、○○、また明日ね♡



いつもの調子でウインクを○○にしてから、美月は、笑う蓮加と共に去っていった。



寛人: 笑、完全に元通りっていうわけか。


○○: みたいだね…


寛人: 嬉しい?


○○: …うん。


寛人: そうか笑。じゃあ、帰ろうぜ。


○○: うん!



◇◇◇


校長室



蓮加: これで、退学になりますよね?


美月: ブルブル…


校長: …うむ……仕方あるまい。


先生1: いや、校長。コイツは柔道部の中でも…


先生2: そんなこと言ったら、うちのだって!


校長: しかし、こんなことがあった以上はな。決定的な証拠もあるわけだし。


先生1: …


先生2: はぁ…


校長: それに、前々から訴えはあり、何度も本人達と話をし、親御さんとも話し合った結果、これだぞ。もう、どうしようもないだろう。


先生3: ですね。


先生1: …分かりました。


先生2: はい。


校長: では、明日の職員会議後、手続きを始める。2人もご苦労だった。家に帰って、早く休みなさい。


蓮加: はい、それでは失礼します。


美月: 失礼…します…


ガチャ


美月: ふぅ……さ、行こう。


蓮加: みんなも待ってることだしね。



校長室を出た2人は、ある教室へと向かう。



ガチャ


蓮加: 終わったよ〜


??1: どうなった?


美月: 無事、3人とも退学になると思う。


??1: やったね、美月の作戦大成功!


美月: うん…結果的には、成功だね。


??1: ん?何かあったの?


蓮加: え、まだ言ってないの?梅。



男達をあっという間に倒し、○○を保健室に運んだ、長身の女…"梅澤美波"に、そう尋ねる。



梅澤: いや、言い難いじゃん。だって、与田のお気に入りなんだろ?


??1: 祐希のお気に入り?



自身の体格に合わないような、大きな椅子に座っている祐希が、首を傾げる。



??2: 梅。報告は正確に。



そんな祐希の隣に立っている女…美月曰く、初めて見た時は、部屋に雪が積もってるのかと思った、というぐらいに、透明感のある白い肌をした女…"久保史緒里"が、梅澤に注意をする。



梅澤: ゲッ…どうせ、美月が来てからも報告聞くんだから、良いじゃんか。


久保: それはそうですが、だからと言って、報告を偽るのはダメです。


梅澤: …この、私生活ダラダラ女が。


久保: な…この不良め。



大の負けず嫌いで、任されたことには一生懸命に取り組むということ以外は、ほぼ真反対である2人が、バチバチと火花を散らす。



蓮加: またやってるよ笑


祐希: はいはい、仲が良いのは分かったから、美月の報告を聞こうよ。


久保:ご、ごめんなさい。


梅澤: すまなかった。


美月: じゃあ、始めるよ。


祐希: うん。


美月: まず、例の噂を流してから昨日までのアイツらの動きから推測してた通り、今日の放課後、怒った状態で私に接触してきたから、そのまま時間を稼ぎ、その間に蓮加に体育倉庫に行ってもらって、その中で撮影の準備をしてもらった。


久保: 蓮加。


蓮加: そうだよ。


美月: で、蓮加の連絡を受けて、体育倉庫の裏にアイツを誘導、そして他の2人も来るまで待つ間に、梅にも連絡をして、こっちに向かってもらうようにした。


祐希: ん?梅は、この作戦には参加しないんじゃなかったの?


美月: やっぱ、梅もいた方が、安全に効率的にいけるって思って。


梅澤: だってよ笑


久保: そう。で、続きは?


美月: そして、見事に私を彼女だと勘違いしていた3人が集まり、私の煽りで激高、1人が私に殴りかかったところで…


祐希: ところで?


美月: …○○…1年の齋藤○○が間に入って、ソイツのパンチを顔に受けて、意識を失った…


ガタンッ!!


美月: っ!!!



美月の言葉を聞いた瞬間、祐希が机を叩き、身を乗り出し、美月を睨む。



祐希: それは、本当?美月。


美月: は、はい…


蓮加: で、でも、今は目を覚まして、元気に友達と帰りました…



全身からプレッシャーを放つ祐希と、それに押される美月の様子を見て、蓮加が急いでフォローを入れる。



祐希: そうか…それは良かったけど……○○は、祐希の焼き芋仲間なんだぞ…友達なんだぞ…


久保: 落ち着いて、与田。



怒りを顕にしている祐希を、久保が冷静に宥める。



祐希: …ふぅ…なんで、そんなことになったの?


梅澤: あぁ、それは、○○も美月のことを探してたみたいでな、それで私の前を走ってたんだ。


祐希: …こんなことになるなら昨日、美月と仲直りしないと、なんて言わなきゃ良かった。


美月: …


梅澤: にしてもカッコよかったぞ、○○は。


祐希: え?


梅澤: 殴られそうになってる美月を見た瞬間に、躊躇なくそれを止めに行って。あれは中々出来ねぇ。強い正義感のある男だね。


祐希: …そうだよね〜笑



梅澤の○○を褒める言葉が、余程嬉しかったのか、祐希の顔が、怒った表情から一変して、ニコニコの笑顔になる。



祐希: ○○はやっぱり、すごいんだから!笑


梅澤: 与田の見立て通りか?


祐希: うん!


久保: …美月、報告の続き。


美月: うん、○○が倒れた後、アイツらがまた殴ろうとしてきたから、怯える演技をして、いい感じのシーンを作ったところで、梅が殴り倒して一件落着。


蓮加: まぁ、美月の了承もなしに、勝手に殴り倒したんだけどね笑、梅は。


梅澤: ちょっ、おい!


久保: はぁ…蓮加が撮って、校長達に見せた動画の内容は?


蓮加: 音声を切って、男達が美月を恐喝しているような場面から、○○君が殴られて倒れて、美月が泣いて怯える所まで。


久保: 梅が殴り飛ばしたシーンは、入れてないのね。


蓮加: うん、さすがにね笑


久保: 報告ありがと。よし、この件が片付いたのなら、これで校内でやるべき事は、ある程度終了。ってことで、あとは、校外の方を終わらせよう。


梅澤: 私の出番だな?


久保: うん。なんかまた、うるさいのが出てきたみたいだから、潰して。


梅澤: 了解。


祐希: あ、史緒里も梅の手伝いね。


久保: え?


梅澤: 別に久保の助けなんか…


祐希: 協力して、外の勢力を潰して来て。


久保: …分かった。


梅澤: はぁ、しょうがねぇな。足引っ張るなよ。


久保: どの口が言ってんだか。


蓮加: なら、しばらくは蓮加と美月は休み?


久保: …そうなるかな。


蓮加: やった、遊びに行こ〜


祐希: ねぇ、美月。


美月: なに?与田。


祐希: 今回はまぁ許すけど、次同じようなことがあったら、許さないからね。


美月: …分かってる。


祐希: なら良い……あ〜次は、どこのお店に、○○と一緒に行こうかな〜


美月: あ、与田。


祐希: な〜に?


美月: 私、○○のこと、本気で気に入ったから。


祐希: え?


美月: だから、奪うね笑


祐希: なんだと?!


美月: ○○も、与田みたいなチビな子供じゃなくて、私みたいな大人の色気があるナイスバディな女性の方が好みだろうし笑


蓮加: いや、ナイスバディって笑


梅澤: 確かに、スタイルが良いのは美月だが…


久保: 現実から目を背けてやがる。


祐希: そんなことないもん!○○は祐希と友達だし!


美月: だったら、私は○○の彼女です〜笑


祐希: はぁ?それは嘘だったじゃん!


美月: 嘘?私は、本当のつもりだけど笑


祐希: プクーー祐希の友達だもん!!


美月: 笑、正々堂々勝負ね!


祐希: 受けて立つ!!



こうして、本人の知らぬところで、バチバチと火花飛び散る争奪戦が始まったのだった。



梅澤: 齋藤○○か〜ちゃんと話してみてぇな〜


久保: …



そして、○○が、燦姫四天王の全員をコンプリート(会って話す)まで、残り2人。



to be continued


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