ただ守りたい… 140話
翌日
防衛団本部
統: さぁ、改めて、○○から聞いた情報を報告してもらおうか。
森田: はい。
団長と各部のトップだけが集まる会議室で、少し緊張しながらも、森田は一連の出来事について報告する。
森田: まず、先週の金曜日、アンチが乃木坂高校の文化祭において、同時多発的なトラブルを発生させました。その際に、乃木高が捕まえた構成員からして、参加した構成員は下位が大半を占め、一部に中位がいた、という状態だったと考えられます。しかし、これは捕縛された構成員の比率から予測したものですので、逃走した構成員の中には、中位が多くいたり、もしかしたら上位もいたかもしれません。
日村: ほぉ、アンチを捕縛するとは。
河野: 風紀委員が優秀とも聞きますし、何より異名を持っている生徒もいますから。
日村: ん?異名?
かおり: あれ、日村さん知らないの?乃木高にはね、七月桜だったり、双鬼だったり、あとは、うちの子達とも仲が良い、ひょろ長亭梅マヨっていう子もいるのよ。
日村: へぇ〜〜?(ひょろ長亭梅マヨ…どこかで聞いたような…)
かおり: あと他に腕が立ちそうなのは、そのひょろ長ちゃんの舎弟って言われてる今1年生の2人組かな。
河野: それは私も初耳です。さすが、情報部ですね。
かおり: いやいや笑
統: 笑、続けろ。
森田: はい。そのアンチが乃木高を襲撃した目的は、乃木高の文化祭で、ざっと言えば、お金の管理をしていたコンピュータを破壊することであり、生徒会や風紀委員などの、目的遂行の障害となるような人物達の注意を分散させるために、同時多発的にトラブルを起こしていたと考えられ、実際に、その最中に、コンピュータを狙って1人の構成員が動いていました。
日村: それを、○○君が止めたんだよね?
森田: そうです。いち早くアンチの目的に気がついた坊ちゃんが、その構成員…本人曰く上位構成員の黒峰龍水、年齢は29歳。外見としては、身長は190cm近くで、手足が長く、黒髪。この男をおよそ40分間に渡り、コンピュータがある部屋に行かせまいと、戦い続けていました。防御に徹した戦い方で、何とか黒峰が撤退するまで持ちこたえ、我々が到着した時に、意識を失いました。
河野: その黒峰龍水についての情報は、他にないのか?
森田: 情報というか、坊ちゃんが黒峰の発言から考察したこと、ならあるんですが…
河野: それでも良い。
森田: 分かりました。坊ちゃんは、黒峰が東京を担当していると言っていたり、ボスや幹部のことを知っていたりすることから、黒峰は、幹部に次ぐ地位におり、東京にいるアンチの中でも、トップクラスに偉く強い奴じゃないか、と言っています。
河野: なるほど…
日村: 今の○○君が、意識を失うほどにダメージを負うとなると、確実に普通の上位構成員ではなく、戦闘専門の上位構成員だね。
統: あと、紫雲和麒と同格のプレッシャーを感じたとも言っていました。
日村: 紫雲か……
統: で、黒峰はなんで撤退したんだ?
森田: 明確な理由は分かりませんが、撤退する前に誰かと電話をして、作戦は失敗だと言っていたそうで、おそらく想定以上の数の構成員が捕まったことで、これ以上時間がかかれば、自分が逃げ切れないと思い、撤退したのではないか、と考えられます。
統: ま、そうだろうな。
河野: もう少し留まってくれれば、包囲網が形成できたんだが…
森田: 我々が、もっと早く気づいていれば…申し訳ございません。
統: あぁ。でも、過ぎたことはしょうがない。だから、次のためにも報告の続きを頼む。
森田: はい。黒峰は撤退する前に、坊ちゃんへ翌日の19時に町外れの工場跡地…以前、白石美月さんが誘拐された場所の隣に、1人で来るように言っていたそうで、坊ちゃんが意識を失って、乃木坂病院に入院した翌日、坊ちゃんは病院を抜け出して、指定された場所に向かいました。
かおり: …あの工場跡地、もう一度洗い直すわ。
統: その方が良さそうだな。
森田: そこで、坊ちゃんは黒峰と2度目の戦闘を行い、その最中に、第三者が乱入したことで、黒峰が拳銃を取り出し、発砲。坊ちゃんが突然の出来事に動けなくなっていたところを、同級生の伊藤理々杏さんが身を呈して助け、その伊藤理々杏さんが血を流して倒れているのを見た坊ちゃんは意識を失いました。この後のことは、坊ちゃんも人から聞いた話だそうですが、坊ちゃんは、意識がないまま黒峰を倒し、その後乱入してきた男との戦いで自分も倒れ、黒峰はその男に殺され、その男は去り、伊藤理々杏さんの親戚によって、乃木坂病院に運ばれた、とのことです。
統: …報告は以上か?
森田: 一連の出来事に関する情報は以上ですが、坊ちゃんが黒峰から聞き出した重要な情報があります。
統: 重要な情報?なんだ。
森田: それは、アンチの目的で、アンチは我々が守っている地域の治安を下げると同時に、坊ちゃんのことを探しているそうです。
統: っ!!……やっぱりか…分かった。報告は以上か?
森田: はい。
統: 報告感謝する。では、仕事に戻れ。
森田: 失礼します。
ガチャ
こうして、報告を終えた森田が会議室を出て、部屋の中には4人だけが残る。
かおり: やっぱり、○○君は狙われてたんだ。
統: 可能性はあると思ってたが、まさか…
河野: ○○君を保護しますか?
統: …いや、まだ様子を見る。アンチ全体としては、○○が、目的の深川○○であると分かってないみたいだからな。分かった黒峰も殺されたし。
河野: 状況によっては、完全に保護すると?
統: あぁ。
河野: 了解です。
統: じゃあ次は、かおり。護衛衆から聞いた情報を。
かおり: はい。護衛衆の1人が見た、意識を失った状態の○○君は、もはや人間ではないレベルの速度と力で、黒峰を圧倒していたそうです。しかし、まずは左腕が動かなくなり、次に右足と、段々と体が言うことを聞かなくなっていったように見えたと。
統: それは、第3段階の暴走状態だな。
日村: え?ってことはつまり、そこまで○○君は使用できたってこと?
統: いや、理々杏ちゃんが撃たれたことで、無意識下で昔のアレをフラッシュバックして、縛りが強制的に解除されたんだろう。
河野: 昔と同じように、一気に第3段階まで開いてしまったということですね。
統: ほぼ確実にな。
かおり: それで、さっき森田が言っていたように、途中で男が乱入。その男は小柄で童顔。髪は前髪がパッツン。数回の攻防の末、○○君は倒され、完全に体を動かせなくなったそうです。
日村: 左腕と右足が動かない状態といっても、第3段階を使ってる○○君を倒すって…相当ヤバくない?
かおり: ちなみに、黒峰を呼び捨てにし、風磨という名前を言っていたと…
統: 風磨…大阪にいる幹部の竹川風磨か。なら、同じ幹部の可能性が高いな。
河野: 愛知にいる幹部とは別…
統: それはまだ分からない。まず、幹部が何人いるのかも分かってないし。
河野: ですね。
かおり: その後、その男は、瀕死状態の黒峰の胸にナイフを突き立て殺し、外にいた護衛衆に重傷を負わせて、逃走しました。
河野: 捜索は…難しいでしょう。
統: ま、探させはするけど、期待薄だな。
かおり: そして、その男が去った後、意識を完全に失い倒れている○○君に、理々杏ちゃんが暗示をかけ直して、理々杏ちゃんも意識を失い、応援に来た護衛衆が倒れた2人と、外にいる重傷を負った護衛衆を、乃木坂病院に運んだ。ここまでが、護衛衆から聞いた情報となります。
統: ありがとう……すぐにかけ直したから、元の状態に戻ったとは思うんだが…
日村: ○○君が完全に意識を失ってたら、大丈夫なんじゃないの?ほとんど、前の時と同じ状況だし。
統: まぁ、そうなんだが…
河野: それに関しては、今後の○○君の様子を見ないと、どうか分かりませんから。今は置いておきましょう。
統: …だな。
かおり: あと、あの子からの報告で、黒峰と繋がっていた白谷直也とその父親を保護。その2人から得られた情報としては、黒峰は金山コーポレーションに、社員として突然やってきた人物で、もう1人社員に親しい人物がいるみたいだが、その社員は会社で一度も見た事がない。白谷父は、上から黒峰の下につくよう命じられ、奥さんが誘拐、そして人質にされたことで、直也君も含めて、黒峰の言いなりとなっていた、だそうです。
統: 金山コーポレーションか…最近、どんどん伸びてきてるって噂の。
河野: こちらも探りを入れなければ。
日村: その奥さんも早く救出しないとね。
統: あぁ。
かおり: じゃあ、今、確実に今回の進展として言えることは、アンチの構成員を捕まえたことと、アンチの目的が判明したこと。幹部らしき男の情報を入手できたこと。アンチの被害を受けた人物を保護できたこと。そして、金山コーポレーションとアンチに関わりがあることが分かったということ…ぐらい?
河野: ですね。かなりの進展です。
統: 進展でいえば、紫音によると、理々杏ちゃんの予知の自由度が上がったってよ。
日村: おぉ!すごいじゃん!
統: 笑、その連絡をしてきた時の、紫音の喜び様は凄かったぞ。
日村: だろうね笑
統: よし、この報告とまとめた情報を元に、これからの行動を話し合っていくぞ。
「はい!」
アンチ東京担当の本拠地
炎司 T: だから、ごめんって〜風磨。
竹川 T: 全く…ボスにはこちらから説明しとくから、そっちは……確か、阿墨ってやつがいるでしょ?
炎司 T: 阿墨?
ソファに座りながら電話している炎司は、部屋の扉の近くに立っている、右腕に三角巾をつけた上位構成員を見る。
上位: す、すぐ呼びます!
すると、慌ててそう返事をし、部屋の外に出て電話をかけ始めた。
炎司 T: で、ソイツが何?
竹川 T: その阿墨に、黒峰の代わりをしろって言っといて。
炎司 T: そんだけで良いのね?
竹川 T: あと、分からないことがあれば、私に聞くように、とも。
炎司 T: りょ〜
竹川 T: どうせお前は、長い伝言は適当に端折るからなw
炎司 T: だって、めんどくさいんだもん。
竹川 T: はいはいw。で、いつあっちに戻るつもり?赤池が悲しんでたよ。
炎司 T: 明日には戻る。
竹川 T: え、どうした?炎司らしくない。
炎司 T: それがさ、こっちで強いの見つけちゃって。万全の状態のソイツと戦うっていう目的ができちゃったから、良い時期が来るまで、仕事がてら遊んで待とうかな〜って思って。
竹川 T: 東京で、炎司がそう言うぐらいに強いヤツ……防衛団の団員とか?
炎司 T: 分からん。でも、近くに黒服がいた。
竹川 T: なら、防衛団の可能性が高いな。うちに来たのも黒服だったし。
炎司 T: あっそ。まぁ、どうでも良いけど。
竹川 T: ww炎司からしたらそうだろうな。よし、私も仕事があるから、もう切るぞ。
炎司 T: うん。またね。
ピ
ガチャ!!
炎司: おっと…
電話を切ったと同時に、勢いよく部屋の扉が開かれる。
阿墨: す、すみません。遅くなりました。
炎司: あ、君が阿墨?
阿墨: はい。上位の阿墨誠吾といいます。
炎司: ふ〜ん、じゃあ早速、風磨からの伝言。黒峰の代わりをしろ、だって。あと、分からないことがあったら、風磨に聞くように、だって。
阿墨: 分かりました…
炎司: じゃ、帰っていいよ〜
まるで興味がないように、最初に顔を一瞥して以降、全く阿墨の方を見ず、携帯をいじったまま、そう言う。
阿墨: あ、あの!
しかし、阿墨は部屋を去ることなく、炎司に話しかける。
炎司: なに?
阿墨: 黒峰は殺されたんですか?
炎司: ん?いや、俺が殺した〜
阿墨: そう…ですか…
炎司: なに?嫌だった?w
阿墨: いえ、そういうわけでは。
炎司: あっそ。聞きたいことないなら、邪魔だからさっさと出て行って。
阿墨: はい。失礼します。
ガチャ
阿墨: 黒峰君…いや、黒峰が死んだか…
と、1人、阿墨は呟いた。
乃木坂高校
放課後
○○: じゃ、先に帰っといて。
美月: ほんとに早く帰ってくるんだよ!
○○: 分かってるって笑
美月: ホントのほんとにだからね!
○○: はいはい笑…ほら、美波来たから。
梅澤: おい、美月!帰るぞ!
美月: 絶対に絶対だから!!
○○: 分かったってば…
美月: 約束だよ!!!
○○: えっと、美波。美月連れて行って。
梅澤: ん?あぁ、了解笑
そう言って、教室の中に美波が入ってきて、美月を抱える。
美月: あ、ちょっと美波!まだ○○に言い足りないんだって!!
梅澤: ほら、帰るぞ〜
美月: うわぁ〜○○〜!!早く帰ってくるんだぞ〜!!
梅澤: 笑、またな。
○○: うん笑
昨日もあんな感じだったし、しばらくはアレが続くんだろうな…
まぁ、僕が1人で行動した報いか笑
○○: …よし、僕も行こう。
美月と梅澤が見えなくなったのを確認して、○○は荷物を持って、特別教室校舎の空き教室に向かった。
空き教室
ガラガラ
??: あ、やっと来たか。
○○: ごめん、待たせた?なぁちゃん。
七瀬: いや、全然。ほんの5分前に来たところや。
○○: なら良かった。
七瀬: それで、ななに聞きたいことって?
○○: 笑、いきなり本題に入るの?
七瀬: おっと、その言葉は、なんか体育祭を思い出すな〜笑
○○: 体育祭?…あぁ、なぁちゃんが僕達だけにドッキリを仕掛けたやつか。
七瀬: せや。あれは、今思い出しても、面白いわ笑
○○: 僕は、本気で心配したから、そこまで面白いと思える出来事じゃないんだけどね笑
七瀬: ふ〜ん笑
○○: 僕としては、なぁちゃんとの面白い思い出で、今パッと思いつくのは、小学生の時に、鳩をバカにしてたクラスメイトに放課後、鳩についての授業をしてたことかな笑
七瀬: あぁ笑、そんなこともあったな。
○○: 一緒に帰ろうって思って、教室に行ったら、死んだ魚の目をしたクラスメイト相手に、なぁちゃんが教壇に立って、鳩の習性を熱弁してたんだもん。もう爆笑したよね。
七瀬: で、それに気づいたななが、○○も授業に参加させたんやったっけ?
○○: そうそう笑。先生に見つかるまで、ずっと聞かされたな〜あの時は。
七瀬: そういう昔のことやと、○○が寝てる祐希を無理やり起こそうとした結果、寝ぼけた祐希にのしかかられて、動けなくなってたのも面白かったで笑
○○: それって、いつの話よ笑。ほんと出会ってすぐぐらいの時じゃない?
七瀬: 確か、初めて○○が、うちに泊まりに来た時や。
○○: あ〜そうだったかも…懐かしい笑。まだ僕と祐希が小学1年生で、なぁちゃんが2年生の時だね。
七瀬: こうして考えると、○○とはいっぱい思い出があるわ笑
○○: うん…それに、僕はなぁちゃんに、たくさん助けられてきた。僕が困ってる時も、泣いてる時も、いつも助けてくれた。そして先週も、僕が黒峰との戦いでボロボロになった時も、すぐに僕を見つけて、救急車を呼んでくれた。
七瀬: …
○○: 改めて、ありがとう。
七瀬: 笑、ななも○○に助けられてるから、お互い様やで。
○○: いや、僕の方が助けられてる…ずっと……それで、なぁちゃんに聞きたいことがあるんだ。
七瀬: …なんや?
○○: なぁちゃんってさ…
先週の文化祭最終日、意識が薄れゆく中で、七瀬の声を聞いてから、ずっと疑問に思っていたこと。
それを今、○○は七瀬に尋ねた。
○○: 防衛団?
七瀬: …
その質問に対し、七瀬は驚くことも無く、ただ○○を見つめた。
そして、少しの沈黙の後、七瀬が口を開く。
七瀬: そやで。ななは……防衛団情報部1級団員の西野七瀬。
○○: っ……やっぱりか。
七瀬: いつから気づいてたんで……いや、まだ仕事モードじゃなくてええか。いつから気づいてたん?
○○: そうかもしれないって思ったのは、ほんと最近だよ。黒峰と戦った後、倒れてた僕に声をかけた時、一緒に森田さんがいたでしょ?
七瀬: 笑、それがマズかったか。あん時は、とにかく○○を見つけることに必死やったから。
○○: そして、入院してる時になぁちゃんが話したこと。これが、決め手だったかな。僕が入院してるってことを話したのが、祐希は別として、春時と美波の2人っていうのは、防衛団員として、僕がその2人に秘密を共有していることを知ってないとおかしい。普通、家族に優先的に話すだろうからね。
七瀬: まぁ、その2人だけには、全部話しても問題あらへんからな。
○○: そういうこと。あと、僕の回復速度について知ってた。これは、昔から僕を見てるってことで、説明がつくかもだけど、それでも打撲や骨のひびが半日で治るなんて、思わないはず。僕の異能のことを知ってないと。
七瀬: うん。知ってるで。○○の異能「解放」については。
○○: 父さんから?
七瀬: ○○の護衛を頼まれて、しばらくした時に、教えてもらったわ。
○○: …いつから僕の護衛を頼まれたの?
七瀬: ○○が、ななと同じ小学校に入学してきた時から。
○○: …そっか……って、少なくとも小2の時には、防衛団に入ってたの?
七瀬: その時はまだ、仮団員やな。ななが正式に団員になったのは、中2の時。それまでは、両親が防衛団員ってことで、特別に訓練を受けさせてもらってたんや。
○○: あの優しそうなおばさんとおじさんも団員…じゃあ、祐希も?
七瀬: いや、祐希はまだ仮団員で、正式な団員やない。だから、防衛団員としては動かんけど、防衛団のことはよう知っとる。もちろん、○○のこともな。
○○: そうなんだ……なぁちゃんが防衛団員なら、それこそ、あの体育祭の時に不審者役をやってたのは、団員の誰か?
七瀬: うん。事前に頼んでたんや。不審者役をやってくれ〜って。
○○: それなら、改めて聞くけど、あのドッキリの意味は?
七瀬: そりゃ……○○が次期防衛団長としての振る舞いができるか確かめたかったっていうのが、あのドッキリをやった意味。そして、防衛団員として、ななが○○に望んどった答えは、久保ちゃんを犠牲に○○が逃げるという選択をとること。次期団長だったら、まず自分が生き残ることを1番に考えて欲しいからな。
○○: なるほど…でも、僕の答えはアレからずっと変わってないよ。この先も、きっと変わらない。
七瀬: 笑、分かっとるわ、そんなこと。やから、これからも、ななが○○を守るって決めてるんや。○○は逃げてくれんから笑
○○: うん…
七瀬: で、○○の聞きたいことって、ななが防衛団員かどうかってことだけ?
○○: …いや、あともう一つだけ………なぁちゃんにとって、僕はどんな存在なの?
七瀬: どんな存在…質問が抽象的過ぎて、答えずらいわ笑
○○: …幼なじみなのか、仲の良い後輩なのか…それとも、護衛対象なのか……防衛団の次期団長なのか。
七瀬: あぁ、そういうことやったら…ななにとって、○○は……
なぜ、これまで、七瀬が自分に話しかけてくれていたのか、仲良くしてくれていたのか。
その理由を知るために、○○は七瀬の答えを欲していた。
この答えであってくれ、という願いを持ちながら。
しかし…
七瀬: 未来の上司で、護衛対象や。
その答えは、○○が望むものではなかった。
○○: ………分かった。
溢れてくる感情を押し殺しながら、何とか返事をする。
七瀬: 笑、この前も春時に同じ質問されたわ。これ、流行ってるん?
○○: そ、そうなのかな?笑
そして、必死に笑顔を取り繕う。
七瀬: あ、じゃあ、そろそろ仕事に戻らなアカンから、またな。
○○: うん…頑張って。
ガラガラ
こうして、空き教室には○○1人だけが残り、その背中は、すごく小さくなっているように見えた。
to be continued
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