何もかも憂鬱な夜に

美容院に行くときは小説を持って行く。

子供と暮らすようになり、本を読むまとまった時間を作るのが難しくなった。

もはや小説を読み切るエネルギーはなくなってしまったようにも感じていたが、髪を整える間に読み始めた物語は、たいてい帰宅後も読み続け、その日のうちに最後のページを迎える。

新しい本を買うことは随分減ったが、一度読んだものの内容を覚えていないため、以前読んだ本も夢中で読めるから、記憶力が悪いのも悪いことばかりではない。

「何もかも憂鬱な夜に」中村文則

体温と同じぐらいの生温い湿気った空気の中で、泥沼に足を取られているような苦しさ。

もがくほど沈むその中にあって、こちら側になんとか留まる主人公。

「地球に最初の生命が誕生してから長く繋がれてきたのは今、あなたがここに存在するためだったと考えてよい。」

命そのものを丸ごと肯定する言葉を知る主人公だからこそ、責任はあるが命に罪はないと言う。

一方で死刑制度というルールの中で刑務官として命を奪った主任は「どちら側の人間」なのだろうか。

#読書記録



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