リモートでもスクラムイベントはできる
リモートワーク初のスクラムイベント
リモートワークへの切り替えがあったのは、スプリントの半ばだった。
つまり「その期間中に目指すところ・やるべきタスク」は明確になった状態であり、極端な話どう手を動かせばいいかはわかっている状態だ。
そのためか、全員が初のフルリモートという条件だったにも関わらず驚くほどスムーズに開発が進んだ。なんなら、全員が「対面じゃないからちゃんと言語化しないと伝わらないぞ」「うまくいってなかったら早めに共有しなきゃ」というマインドを持ったためか、いつもよりコミュニケーションが活発なくらいだった。
しかし、スクラムイベントはどうだろう。
成果物の価値を見定めるレビュー、プロセスをふりかえりカイゼンを見出すふりかえり、そしてスプリントで生み出すべき価値と優先順位を定めるプランニング。これらは、対面じゃなくてもうまくいくものなのだろうか。
リモートで「自分たち対課題」の構図が自然にうまれる
まず迎えたスクラムイベントは「スプリントレビュー」。
優先順位の高いストーリーから成果物を確認していくこのレビュー、結論からいうと何ら問題なく実施できた。強いていえば、ときどき回線の調子が悪くてコミュニケーション取りづらい、ということくらいだ。
いや、「問題なかった」どころか、普段以上にメンバーから意見や質問がでており活性化されていた。いつもはPOである私以外からはなかなかコメントが出てこないのだが、バーチャル空間では課題からの距離が全員等しいためか、活発に意見が交わされた。これはうれしい誤算だ。
時空を超えたワイガヤ
つぎのイベントは「ふりかえり」。これこそ、オフラインじゃないとできないのでは?という疑念があった。
しかしこれも、結果からいうと非常によいふりかえりができた。
なぜうまくいったのかを考えると、下記のような工夫があったためかもしれない。
・スプリント中の気づきはあらかじめメモしておくようにした
・ふりかえり前にそのメモを各自で読み返すようにした
・ふりかえり時には、そのメモを直接は使わず改めて気づきの共有を行っていった
事前共有で情報格差をなくしつつ、メモをそのまま参照することを封じライブ感を醸成する。それがうまく機能していたように思う。
そして、ふりかえりを行う上で強い味方になってくれたのがGoogleの「Jamboard」だ。
同時編集できるこの仮想ホワイトボード上で、ワイガヤしながら付箋を書く状況は驚くほどリアル世界のワイガヤ感を出せていた。
書かれた付箋をいい感じに分類し始めるメンバーがいたり、協働も自然に発生していた。
わかっていなかったということがわかった「プランニング」
最後が「スプリントプランニング」だ。スプリントの時系列では最初にくるこのプランニングだが、今回はスプリント途中でリモート移行という形だったので、リモートで経験するスクラムイベントとしては最後になった。
プランニングに関しては、だいぶ手こずった。
レビューの結果や外部環境の変化からストーリーの優先順位を変え、スプリント中に達成したいことを定める。基本ラインは問題なかった。
しかし、新しく取り組むストーリーがうまくブレイクダウンできない。
というか、メンバーがこのスプリントで取り組みたい(※うちのチームでは、ストーリーはPOのトップダウンだけではなくメンバーからボトムアップで提案する場合もある)といっているストーリーがいまいちどのような価値を生み出したいのか、判然としないのだ。
この時は2件ほど、そういうストーリーがあった。
その2件についてはそのあと、Slack通話などを通して価値が明確になり、POの自分が感じていた疑問も解消された。
そして、その時に気づいたことがある。
「この2件、いつもの対面のプランニングなら疑問をもたず通していたかもしれない」、と。
対面で直接話をする場合、本当はわかっていないのに「わかった」と判断してしまうことがある。それがなぜなのかはわからない。(もしかしたら、対面であまり「ごめん、よくわからないんだけど」と言い続けることが気まずいとかそういうのもあるかもしれない)
これまでは、そういう「実はわかっていない」ことに気づいていなかったり、信頼という名のもとにちゃんと理解することから逃げていたのかもしれない。
実際、時間をとって対話することでこちらの疑問は解消されたし、担当しているメンバーにも「確かにそういう視点もあるかも…」という気づきがあり、ストーリーの精度はあがっていった。
そう、リモートでのスプリントプランニングはいつもよりも手こずったわけだが、実は気づいていなかった課題に気づいただけなのかもしれない。
どちらが絶対的にいいということはなく、どちらの良さも活かせればいいね
リモートワークでのスクラムイベントに対しては、うまくいかないような印象をもっていた。Twitter等でも「リモートだと難しい」というような言説が多くみられる。
しかし、実際にやってみると予想外にうまくいった。
これはなぜなんだろう、と考えてみると、下記のような理由なのではないかと思い至った。
・現代においてはリモートで協働するためのツールが充実している
・リモートであることを前提に下準備したため、リモートゆえの弱点が出づらかった
・もともとオフラインで協働しているメンバー同士だった
一番最後が、一番重要かもしれない。信頼関係がすでにあるからこそ、仮想空間での協働もうまくいったのだろう。
リモートだからこそ気づけたこともある。逆に、やはりこれはオフラインでやりたい、と思ったこともある。
どちらか一方が優れているとかではなく、両方をうまく使いこなしていくスタイルこそが望ましいだろう。
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