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レベル99プロダクトへの道のり

紅に染まったこのオーシャン

ブルーオーシャン戦略、という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。競合のいない領域で価値を生み出していく戦略だ。

理にかなった戦略ではあるが、魅力的な市場を創造するということはその市場に競合を呼び込むことに他ならない。ことソフトウェア業界では設備投資などの参入障壁が低いことから(もちろん法令や業界の慣習などによるバリアが存在する場合もあるが)、旨味のある市場には次々とプレイヤーが参入してくる。

かくしてブルーオーシャンは紅に染まる。

レベル上げは大変。そこに差別化の芽がある

ドラクエウォークというゲームが流行している。乱暴にいえばポケモンGoのドラクエ版だ。プレイされている方はわかると思うが、このゲーム、後半にいくに従ってひとつレベルを上げるために必要な労力が跳ね上がっていくのだ。

これはプロダクトにも同じことがいえる。

たとえば、世の中に乗換案内やカーナビのような経路探索アルゴリズムをベースとしたサービスが存在する。おそらく最もポピュラーなアルゴリズム、ダイクストラは実装するだけであれば多少プログラミングを学んだ者であれば数日で開発できる。

では、それはそのまま市場で通用するかというとそれはノーだ。既存のプロダクトが回し続けたカイゼンサイクルに追いつくことは一朝一夕ではできない。そしてドラクエと同様、レベルが、品質が上がれば上がるほど次のステージに行くことは難しい。

イノベーションのジレンマ的な話はありつつも、継続的イノベーションの世界でいえばこのレベル上げの辛さに耐えぬきレベル99を目指すソフトウェアこそがレッドオーシャンを生き抜くのだ。

レベル上げを阻む負債

以前、技術的負債についての記事を書いた。

様々な理由により先送りした設計面やコーディング面の課題はリボ払いの利子のように膨れ上がり、ソフトウェア開発のスピードを損ねてゆく。ただでさえ、高いレベルでのレベル上げは困難だというのに積み上げたソフトウェアの負債がそこに拍車をかけるのだ。

t-wadaさんがeof2019でお話されたスライドが、SNSで大きな話題を呼んでいた。私が所属する会社でも少なくないメンバーがこの資料を自分のtimesで共有していた。

「質とスピードはトレードオフの関係ではない」というのは驚きがありつつも、身の回りのエンジニアリングを思い返すと実感を伴って納得できる事実だ。だからこそ、これだけ多くの人が話題にしているのだろう。

ソフトウェアの世界では、ブルーオーシャンはあっという間に赤くなる。新たなブルーオーシャンを見出すという戦略もあるだろう。

しかし、もしその赤い海に留まり生き延びるつもりならば、険しいレベル上げの道のりをゆくことになる。

そして、そのためには初期段階から「質とスピード」を前提としトレードオフに逃げこまない覚悟が必要なのだ。





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