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【参加レポート】『SCRUM BOOT CAMP THE BOOK 増補改訂版』出版記念イベント

スクラム開発入門者のバイブル改訂版

スクラムガイドだと抽象的すぎる。エッセンシャルスクラムは分厚すぎる。
ちょうどいい入門書はないものか…そう悩んでいる人に悩まずおすすめできるのが、この「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK」だ。

一種のバイブルのようなものだが、このほど増補改訂版が出た。さっそく買ったが、最新のスクラムガイド、現代の現場にフィットさせつつも普遍的な名著として、相も変わらず金色の輝きを放っている。

そんなバイブルの出版記念イベントは、コラム執筆者も登壇する豪華なものだった。

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20時を少し過ぎたころにイベントは始まった。司会進行はコラム執筆者の一人、及部さん。

Mentimeterを使って質問・アンケートをとりながら進行する。双方向感があって楽しい。

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さすがリモート、様々な場所から参加している。

いいかんじに場があったまり、いよいよ本題が始まった。

なぜ、今改訂版なのか

・2013年以降、コンスタントに売れ続けている
・Amazonレビューも増え続けている
・特に2017年くらいから、アジャイル系書籍の潮目が変わった
・電子書籍での売り上げがかなり多い
・市場はアジャイル/スクラムの初学者向け書籍を欲していた
・RSGT2020の好きな本投票では総合3位。愛されている本
・アジャイルやスクラムで事業がどんどん立ち上がってきた。
 これからは産業になっていくだろう

自分が手にとったのは「潮目が変わった」とされる2017年だった。自分自身含め、アジャイル開発を始めよう、勉強しようという空気感みたいなものはあったかもしれない。

永瀬さんのブログにも詳しく経緯が書かれていた。

そういった状況の変化、スクラムガイドの改訂などが本書の改訂につながっていったようだ。いわきりさんの語り口が感動的で、胸が熱くなる。

パネルディスカッション

西村さん

飲みに行くたびに(改訂しよう、と)言われてた。「やるか!」といっていたら7年経っていた
アジャイルネイティブが当たり前になってきた。前の本だと現状にそぐわない部分が出てきた

及部さん

新人研修でオススメするのはこの本。改訂されて助かってる。

永瀬さん

スクラムガイド最新版を底本とし、全編見直しているところ。
根本は変わらないが、7年で自分たち自身が成長したことでアップデートできている部分もある。
若いコラムニストの声を載せられたのがよかった

吉羽さん

2013年出版、書いていたのは2012年。アジャイルやっている人のほうが少なかった。エンタープライズでやっているような人は相当とんがっている人。
7年経って、大きい会社が普通に「アジャイルやってます」というようになった。キャズムを超えたのが初版との大きな差
当時はAWS使ってる人もほとんどいない、そういう時代

西村さん

泣く泣く削ったものなどは特にない。ページ数が足りなくて漫画を足したけど日の目を見なかった、というのはあった笑

森さん

削られた「ふりかえり」を日本中で広めています笑
初心者の相談を聞いていると「ふりかえりがうまくいかない」というものがとても多い。それもあり、ふりかえりに関するコラムを執筆した
楽しく、少しづつふりかえるマインドを伝えられれば。

よたさん

初版のときは、うまくチームに広げられなかった
イベントに参加することで熱量が上がり、カイゼンがめちゃくちゃまわるようになった
改めて読んでみると「チームでコミュニティに参加するくらいはできるだろう」と書かれている。まさに自分がやったことだ。憧れの「ボクくん」のチームと一緒に本に載ることができてうれしい。

すどうさん

2013年頃はSIに勤務していた。スクラムどころではなかったが、そんな状況でもこの本は刺さった
(スクラムを)やってようがやっていまいが課題のない現場はない。現場をもっとよくするためのヒントがつまっている本。

いいださん

マネージャーに「全然わかってねぇ!」といわれ、基本からおさえようとチームで読書会を行った
会社の中でも広まっていった。社内で4回以上、読書会が開催されている。
思い入れがある本。

およべさん

最近の話も入れたいよね、ということで自分たちに声をかけてもらった
たとえば森さんならふりかえり。それぞれ思い入れがあるところを書いている。
ぜひコラムも読んでほしい

とにかく、著者からもコラム執筆者からも愛があふれている。素敵な本だ。

Q&A

Q. スクラムに興味はあるものの、ウォーターフォール型の委託を受けており、変更できそうにありません。従来の開発形態にも活かせそうなエッセンスがあれば教えてください
【吉羽さん】 一番失敗するパターンは「黙ってスクラムやる」。やるとしたらふりかえりとか、デイリースクラムとかポイントを差し込んでいくのが常套手段
【西村さん】ダマで全部やっちゃえばいい。ひとりぼっちだとすると、吉羽さんのやり方がよいが。すどうさんの昔話をきけばよい
【すどうさん】 ムチャぶり笑 吉羽さんが言っているのはしっくりくる。ふりかえりからやるのは大事。自分がSIでやってたときは、1時間チームで話せる時間をどうにかして確保するところから始まった
【森さん】はじめてのふりかえり。上司が巻き込めているかいないか?巻き込めていないときに、「カイゼンしなきゃ!」という思いがつよすぎる場合がある。立ち止まって現状を確かめるだけでも価値がある。そこからはじめよう
Q. 応用的な続編を出す予定はありませんか?
【永瀬さん】ないです。改訂でも大変だった。二次創作など進めてくれていいですよ。
このチームのやり方が唯一のやり方ではない。本にとらわれすぎず、現場のやり方をみつけていってほしい
【吉羽さん】エッセンシャルスクラムという本もある。これも翔泳社

続編は自分たちの現場で、っていうのはすごくいいな。

Q. 日本特有のスクラムの傾向はありますか?
【吉羽さん】お金のやり取りの話は日本独特。
Q. 本に書いてあること全てを実践するのが大変だな・・・と感じているのですが
【永瀬さん】めちゃめちゃ聞かれる。聞かれるたびに、状況が違うので違うことを答えている。
「スクラム」というのであれば、フルセットでやったほうがよい。相互作用で効果が出てくるから。
一方で、まずはふりかえりから、ウォーターフォールの中で朝会から、というのでもよい。そしてそれをスクラムと呼ばなくてよい。
【よたさん】きょんさんの思想に影響を受けているので、どんどん改変していってる
【およべさん】どっちがいいかわるいかではなく、そのときに何を大事にしているか。スクラムと呼ぶかをふくめちゃんと考えてね
Q. 出版した時と今回の改訂で、どのように開発現場は変わったか、もしくは変わってないと感じてるのか
【永瀬さん】2013年から大学の仕事を始めた。
いまはアジャイルネイティブが出てきている。「チームをよくすると考えるのは当たり前じゃないのか」といわれるようになった。衝撃を受けるくらい、よくなってきている
【飯田さん】うちの場合、SIからくる人もいる。マネージャーの在り方に驚きを感じる人はいる。
【吉羽さん】クラウドの普及によって開発のスピードが求められるようになってきたのも大きい
Q. 終盤では深夜まで残業しているようですが、なにが原因だったと思われますか?
【西村さん】何回かミスをしている。メンテしにくいコードを書いたり、オーバーコミットをしたり、営業部長が欲しいものを見間違えたり。
期間が重要視されているチームなので、残業でカバーした。スクラムは銀の弾丸ではない、ということを伝えるためにもそういう状況にした。万事うまくいってしまったら、現場と乖離してしまう。自分の記憶とも合致する笑
【及部さん】7年前と今では残業に関する意識が違った。ガッツリ残業する、というのは今より全然あった記憶
Q. どういう風に(どんな内容で)チームでこの本の読書会をするのが効果的でしょうか・・・?
【飯田さん】30分読んで内容理解、30分読んで議論。現場とのdiff、わからなかったことについて話した。現場の実態とオーバーラップさせながら進めた
【永瀬さん】このご時世、読書会は難しそう
【いわきりさん】リモートだからこそ、みんなで知の交換をすることが大事。リモート読書会は、よい
【西村さん】はじめたての人たちで集まってやってみるのもおもしろそう
Q. 英語バージョン出してほしいです
【いわきりさん】どうしたらできるか?の答えはないが、やってみたい。アルゴリズム図鑑はアメリカでも売り出されたが、翔泳社の歴史で初めてのこと。英語圏で売るためにどうしたらいいかはみんなで考えたい
Q. スクラム開発はチームとしては素晴らしい手法だと思いますが、個人のキャリアとしては器用貧乏になる恐れはありますでしょうか?
【吉羽さん】技術の変化が速い時代なので、自分の技術も新陳代謝していかなければならない。一つの技術で食っていける時代ではないので、ここが恐れだと感じたことはない
単に幅広いだけだと拠り所がなくなる。深く知っている領域が自分としてあればよいのでは
Q. 本の中身で著者自身が一番気に入っている好きなシーン、決め台詞はどこですか?
【永瀬さん】シーン22、バッチくん。いまだと「batchって何?」って言われるかも笑
【吉羽さん】若いころ「ヨシバッチ」→「バッチ」と呼ばれるようになった。リアルなエピソード。
【西村さん】ブチョーが成長したチームと現場を褒めるシーン。こういうのを上司に言ってもらえるといいなぁ、という希望を込めたシーン。
【森さん】はあくちゃんが二コマ連続で「はあく」「はあく」っていってるのがかわいい。ほんとにわかっているのか?感が好き
【よたさん】僕もバッチくん関係。バッチくんがガッツポーズしながら「次はもっとうまくいく自信があります」というシーン。
Q. ちょっと本から離れるんですが、皆さん仕事以外で実践してるスクラム何かありますか?
【永瀬さん】・・・アハハッ(乾いた笑い)
アジャイルマインドは持っている。ただ、フルセットのスクラムは私生活ではやっていない。
【森さん】フルセットは自分もない。同人誌を作る際にアジャイルマインドはもっている
【及部さん】スクラムをフルセットでやるというのは大変、というのがよくわかる
【西村さん】仕事のときだけでええやん
【永瀬さん】イベント運営はアジャイルっぽくなってきている

質疑応答も大盛り上がり。あっといういまにイベントは終了時間をむかえてしまった。

参加しての感想

著者陣、コラム執筆者、いわきりさん、全員の熱量が大きく、かつ双方向性がありワクワクするイベントだった。およべさん仕切りがうまい。

7年の年月が生んだdiffと、それでも変わらない不変のバリュー。この本を起点に、いろいろな現場が変化した/していくことを感じるエモ戦闘力530000なイベントだった。

いま、チームでは「チームジャーニー」を読んでいるけれど、あらためてこのスクラムブートキャンプの読書会をやろうかな、という気持ちになる会だった。

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