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エンジニアの多様性と育成

はじめに

この記事は Engineering Manager vol.2 Advent Calendar 2019 24日目の記事だ。12/23以前にこの記事をみかけてしまった人は見なかったことにして、↓のリンクからこれまでの記事を読んでいただければ。

エンジニアの多様性

あなたは何を得意とするエンジニアだろうか。ひとくちにエンジニアといっても、ネイティブアプリ、Webアプリ、ミドルウェア、アルゴリズム、データアナリスト、アーキテクチャ、インフラ、DevOps…得意とする分野は千差万別だろう。近年では単一の専門性を磨くというよりは、ある程度複数の分野を経験しているエンジニアが多いかもしれないが、多様であることに変わりはない。

エンジニアリングマネージャーの守備範囲

エンジニアリングマネージャー(以下、EM)の定義については様々な主張があるが、本稿では「育成」がEMの重要な役割であると定義したい。

私がエンジニアの「育成」に対して明示的にコミットするようになったのは2015年。いまは5年目だ。それまで経験していたOJTトレーナーとEMとしての育成で決定的に違ったのは、その守備範囲だ。
自分が携わるエンジニアリング領域を後進に伝え育てるOJTトレーナーに対し、 EMが育成の対象とする領域は非常に広範だ。

未知

私の場合、自分自身はサーバプログラミングやアルゴリズム、データ分析といった分野が既知の領域だった。一方でネイティブアプリやクラウドインフラ、アドテクノロジーといた分野は未知の領域だった。

自分が経験していない、ナレッジのない領域のスキルをどのように教育すればよいのか。また、どのように評価すればよいのか。

そのスキルで何を目指すのか

未知の領域においていかに育成するか。その道しるべとなるのは
「そのスキルで何を成し遂げるのか」というゴールだ。そもそも、なぜスキルを身につけたいのか?成長したいのか?個人個人にはそれぞれの思いがある。しかし会社という組織体においては、達成したいゴールが先にあり、それを実現する手段としてのスキルがある。

意外なほど、「そのスキルをもってして何を達成するか」という観点は抜け落ちやすい。スキルを身に着けること自体が目的化してゆく。エンジニア個人としてはもちろんそれはアリだが、繰り返すようだが組織体においてはそのスキルの先にあるゴールを見据える必要がある。

EMとしてやるべき育成の第一歩は、この「目指すゴールへと目を向けさせる」ということだろう。それは自分の専門領域でも、未知の領域であっても変わらない。

知ったかぶらない

育成をするにあたってもう一つ大事なのが「知ったかぶらない」だ。未知の領域についてはもちろんだが、自分が得意分野だと思っている領域においてさえも知らないことは出てくる。EMがどれくらい手を動かすか、というのには濃淡あるが、現場で100%開発にコミットしているメンバーのほうが先端領域に触れており、EMが知らないことを知っているということは往々にしてあるだろう。メンバーとしては「知っているでしょ」と思っているであろうことを「知らない」というのは勇気がいる。しかし、「それが生み出すべき価値に結びついているか」を正しく判断するにはそれを「知る」必要がある。「それ知らないから教えてください」と素直に言う姿勢が、メンバーのスキルを正しく理解・評価し、あるべき方向へ育成するにあたっては必要なのだ。

そしてこれはEMの特権(だと私は思っている)なのだが、そういった育成を通して広範なナレッジを習得することができるのだ。それも、自分の組織で使われている実践的な技術について知ることができる。また、そこで得られた知識をもとにwebで学びを広げていくこともできる。

共に学び成長する

前述したように、知らないことを知らないと認めることは重要だ。しかし、知らないままでいては成長しないし、何も知らないEMに対して信頼が寄せられるかというとそれもあやうい。

最終的に大切なのは、「共に学び成長する」という姿勢だ。自分がこれまでやったことをいくつか紹介する。

・Unityの勉強会を開催
・React Nativeの勉強会を開催
・Code Kataの勉強会に参加
・Androidアプリ開発の勉強会に参加

前ふたつは何人かのエンジニアが「勉強したい」という声を上げていたので有識者に講師をお願いして実際にモノをつくる勉強会を開催した。
自分はReact Nativeのほうにのみ参加したのだが、サーバーで動くC++、ときどきJavaとPythonみたいな世界で生きていた自分にはとても新鮮だった。

Code Kataは現在進行形で実施中だが、エグい要求で設計が汚れていく様などが体感できる超実践的なものだ。これをエンジニアたちとワイワイいいながら取り組むのは楽しい。

Androidアプリ開発は、講師が「@dora_e_m にモノを教えられるチャンスだ!」と張り切ってくれていた。EMが学ぼうという姿勢自体が好意的に迎え入れてもらえるようで、ありがたいかぎりだ。

このように様々取り組むことのメリットはいくつかある。
自分自身が学ぶ姿勢を見せることでエンジニアたちの学ぼうという意欲を喚起できること。
未知の領域に実際に触れることで、育成をする際にある程度の肌感覚をもつことができること。
なによりも、自分自身が成長できること。

多様性の中で育て、育つ

多様性が増加し続けるエンジニアリング。
その中でEMが守備範囲を広げ、育成にコミットしていくためには何をするべきか。
まず自分自身に未知の領域があるということを認める。
未知の領域について、組織の中で何を達成するためのものなのか明確にする。
知らないことは知らないと認め、そこから知っていることへと変容させる。
新しいことに飛び込み、ともに学んでいく。

こういった姿勢が自分自身とエンジニアと、そして組織を成長に導く。それが、EM5年目の自分としての解だ。

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