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アウトプット至上主義の環境にいる人こそ「プロダクトマネジメントービルドトラップを避け顧客に価値を届ける」を読むべき3つの理由

プロダクト開発に関わる全ての人へ

10月に出版された「プロダクトマネジメント」を読んだ。

「なんのためにプロダクトを開発するのか」
「なぜ、そのあるべき姿にならないのか」
「いかようにして、あるべき姿になってゆくのか」

プロダクトマネジメントが目指す方向を示しつつ、「つくらなくていいものを作ってしまう」問題を生み出す構造を暴き、改めてあるべき方向へ向かうすべを綴った本書は200ページ弱の軽量なボリュームながら、プロダクト開発に関わる者にとって非常に学びの多いものだと感じた。

私が紹介するまでもなく売れているようだが、なぜこの本を推しているのか説明させていただく。

読むべき理由.1 プロダクト開発で目指すべきものが示されている

読み始めてすぐに「本質的に、プロダクトやサービスに価値はありません。」という衝撃的な一言が飛び込んでくる。

これは、プロダクトそのものに価値が内在しているのではなく、顧客やユーザーの問題を解決したりニーズを満たすことで初めて「価値」が生まれるのだ、ということだ。

プロダクトを開発していると、それそのものに愛情が湧いてくる。作り上げる自分たちからするといとおしいものだ。「これはよいプロダクトだ」「プロダクトを育てたい」そういう気持ちを抱いたことは誰にでもあるだろうし、それ自体は持っていてしかるべき気持ちだと思う。

だが、これは親の欲目というものだ。プロダクトを使う側からすると、自分の課題解決したりニーズを満たしたりしないのであれば、そこに価値はない。ジョブを満たしてなんぼなのだ。(そう、ジョブ理論が伝えるところと同じことだ)

読むべき理由.2 なぜあるべき姿にならないのか、構造的問題がわかる

本書においては「ビルドトラップ」という言葉が使われているが、プロダクトを開発しているとアウトプットを大量生産することが目的化してしまうことがある。

これには様々な原因がある。

・「ものを作る」ことがビジネスの重要な指標となっている
・アウトプットの総量が個人の評価軸になっている
・ものをつくると楽しい

こういった組織構造の中では、たとえばカイゼンによるコストダウンを図ったチームに待ち受けるのは「予算削減」だ。

そういえば大学院生だったころ、年度末になると先生が「予算使いきらないと来年の予算を減らされる」という理由で使いもしない機材を買っていた。
そんな「予算消化」自体が目的化したようなプロダクト開発は、往々にしてあるのではないか。

そして「ものをつくると楽しい」、これは真理でありながら厄介な性質だ。
アウトプットの数で評価したい組織側と、評価されたいと考え、またものをつくること自体が楽しいと考えている個人の間に共犯関係が生まれてしまうのだ。

読むべき理由.3 ビルドトラップを乗り越えていく術がわかる

・正しくアウトカム志向でプロダクト開発するための「カタ」が提示される。
・アウトカム志向と親和性の高い海賊指標、HEARTフレームワークといった成功指標の提示。
・問題やソリューションの探索方法。(オズの魔法使いのメタファーは聞いたことがあるかもしれない)
・ビジョンの進化、優先順位のつけ方。
・そして、組織への浸透のさせ方。

もちろん、一読すればこれらが身に付き、立ちどころにアウトカム志向の組織へとトランスフォームできるわけではない。全ては積み重ねだ。(そして、積み重ねであることを理解するために本書ではとある企業のトランスフォームを擬似的に体験できるストーリー仕立てとなっている)

しかし、こういった具体的な武器が提示されていることは、これから改革に乗り出すプロダクト開発者に大きな勇気を与えてくれる

マネージャーもメンバーも、経営者も

私がかいつまんで紹介したものは、一部の要素に過ぎない。プロダクトづくりをもっとよいものに、と考えているのであれば、そしてこのnoteで興味をもってくれたのであれば、ぜひ一読することを勧める。

そして「自分は1エンジニアだから…」「デザイナーなので関係ないかな…」「QAなのでテストにしか興味がない」そんな風に自分の内側と外側を決めてしまう人ほど、読んでほしい。だって、コードを書くのは手段であって、なんならプロダクトをつくることも手段であって、課題を解決したりニーズに応えたりすることが目的なんだから。

というわけで、プロダクトづくりに関わるあまねくすべての人々よ、ぜひ本書を手にとってみてください。

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