堀川・さくら夢譚6

「足元にお気をつけて。明日のお帰りもここでお待ちしております。あ、お足元、滑りますんでゆっくり、ゆっくりお願いいたします・・・」 佐平次がなんども注意を促したように、普請中の界隈は歩き慣れた人足でも戸惑うことがある。踏み慣らされた轍が続く通りがあるかと思うと、砂利を敷きつめたような狭い筋道もあり、人通りも多いので注意が必要だった。さらに、新築の町家百五十あまりが焼失した慶長十六年正月二十五日の火事以来、城下町の復興はより慎重に行われている。武家屋敷が城郭を囲み、東西をはる街道筋には寺院、碁盤割に町家を配置し、防備と防火を考えた計画的な町づくりが進行していた。

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