大学4回生、はじめてのボドゲ制作

ゲムマ出展に至るまで

 私は普段は某大学にて、週2日、月曜と金曜の放課後に2時間程度ボードゲームをするというサークルに所属し、カタンやラブレターといったメジャーなタイトルから、ゲムマで買ったインディーズのゲームまで、時折TRPGやマダミスなども交えながら気は合うが気の置けない仲間たちと遊ぶ、しがない留年生だ。
 在学中にいつか自分もゲームを作りたいーーーそんなことをコロナ前のゲムマ土曜、バカみてえに長い一般入場列で考えていた。
 それは、出展側に立てば待機列に並ぶことなく早期入場できるという、浅はかな考えから生まれた動機だったかもしれない。
 ただ、”いつか”やれるといいな、は自発的には達成されることはない。
少なくとも私のような怠惰な人間にとっては。
 気が付けば一年の留年を挟んで、大学卒業まで1年を切っていた。
 ゲムマ秋の申し込み期限が迫る中、早めに就活が終わり作業時間が確保できる目途が立ったのにも関わらず、うだうだと悩む私の背中を押したのも、同サークルに所属する同期で友人のSだった。
 震える手で、何を作るのかもあやふやなまま、6月中頃、1次申請期間中に申し込みを行い、当選の連絡を受けた。
 出展名は、所属するサークル名である「高崎経済大学TG同好会」
 文字通りサークルの看板を背負っての背水の陣。万が一にも当日に出店を行わなければ、ペナルティがゲムマ運営から課され、最悪の場合二度とサークルでの出展ができなくなる。人生何度目かの重責であった。

ゲームを作ってみよう

 余談だが、サークルの活動で最も気を遣う瞬間がある。
 それはゲームのインスト(遊び方の説明)だ。
 極論かもしれないが、ゲームのインストの巧拙でそのゲームの魅力の七割が決まると私は考えている。いかに面白いゲームでも、最初の一回を楽しめなければ、2度目はないことが多い。全員がボドゲカフェの店員のように、一発でルール把握と魅力を伝えるというのは難しいし、説明者自身のゲームの経験値や、意図を正確に伝えるという意味でのコミュニケーション能力によって左右される。
 よって、インスト問題はサークル運営をしている者からしたら、部員の増減に関わるので、最重要レベルで頭の痛い問題である。

 だから、ゲームを作るにあたってまずコンセプト(方針)を決めた。
 それは『誰でも三分でゲームをはじめられる』だ。
 ルールの簡易さはそのままインストのしやすさにつながると考え、ゲームの奥深さや作りこみを削ってでも、コンセプトを達成できるようにゲームを考えていた。
 結果、大喜利のようなコミュニケーションゲームならば、コンセプトを守ることが出来、複雑なルールでなくても楽しめるだろうと思い、制作にあたった。
 
 ただ、ゲームの案があっても、それを制作できなければ販売できない。
 その為、次に取り組んだことは「印刷業者の決定」だった。
 貧乏大学生が自分の懐から出せる予算は、どう頑張っても企業ブースの足元にも及ばない金額であるので、印刷クオリティを担保しつつ、できるだけ安くかつ、発注後、ゲムマ当日まで確実に手元に届く会社はどこか。
 自分たちで家庭用プリンタと100均を駆使しながら粉骨砕身制作に励むという案も考えながら最善を模索し、今回は萬印堂様のベーシックパック【カード36枚・箱・取説】が最も条件が良いと判断し、規格が決まった。

 三番目に『題材・テーマ』を考えた。
 ゲームの草案自体は、出展申し込みをする以前から考えていたので、コンセプトと企画に合いそうな案で、私が納入期日までに作れそう、などの条件を加味した上で、
「オタクは再会系幼馴染が遺伝子レベルで好き」という勝手な偏見で、
今回のテーマが『再会系幼馴染捏造系コミュニケーションゲーム』になった。地獄か?大学の名前を借りているという自覚はないのか?
 あとはざっくりゲームのルールを決め、ターンサマリーを考えたうえで、
今回の場合は『属性カード』と呼ばれる幼馴染の設定を決めるカードのデザインなどをPhotoShopやillustratorを使いながら作っていった。
 ここまでは申し込みから1週間であらかた形になり、あとは制作に入るわけだが、制作期間は約4ヶ月かかった。
 はじめは愚かにもパッケージデザインや名前を含めてすべて一人で携わろうとしていた。自分の能力を過信しすぎている。カスが。一か月で音を上げ、属性カードの案出しをはじめ、製品名の案、パッケージデザインの他、当日頒布予定のポスターイラストなど、部員を巻き込みながらなんとか完成にこぎつけた。みんなありがとう。無茶ぶりすまんかった。


制作スケジュール


 一応このノートは来年以降ゲーム制作にあたる後輩に向けて書いているという建前なので、スケジュールをまとめてみる。
 締め切りと開催日だけ載せるが、当選連絡から納品までずっと制作してたので、細かい制作スケジュールは割愛します。
 ただ、開催日を含め毎年少しずつ日程は変わると思うので、参考程度に。

【ゲムマ2022秋・出展者一次募集期間】
6月2日~6月23日23:59 (6月14日に申し込みしました)

【出展当落連絡と出展料の振り込み】
当落:6月29日(落選の場合2次募集)
出展料入金締め切り:7月12日 14時
ここまでに料金を払えなければ、出展中止になるので気を付けよう。

【カタログ記載用のブースカット入稿】
締切:8月7日 23:59
 提出用原稿用紙の仕様や提出先等はメールに添付されてます。
 出さなかったら事務局からメールがいっぱい来ますし、期日に間に合わなければ、サークル名だけの何売ってるかわからない所になります。
 これは反省ですが、サークルカットの出来が良ければ来てくれる人がかなり増えると思います。常連サークルとか企業ブースなら知名度や、新作に対する信頼で来てくれますが、初出展や零細サークルはブースカットに力を入れれば、当日来てくれる人は増えてくれると思います。(売れるとは言ってません)

【印刷業者が設ける期限までの印刷物入稿】
締切:9月30日 23:59
 まずこの締め切りですが、今回利用させていただいた(株)萬印堂様は月末までに発注したものをその1月後(4週間)に納品する。という形をとられています。
今年は10月29~30日に、ゲームマーケット秋が開催されたので、萬印堂様のほうが融通を利かせて、今回出展する製作者サイドに配慮した締切日になっています。なので来年の春秋のゲムマの開催日次第では、締め切り日の変更が予想されるので、あくまで目安です。
 萬印堂様の設定する様式(制作物はPhotoShopもしくはillustrator)での制作や、発注にあたっての注意事項のほか、印刷に当たって拘りたいことの相談などをオンラインで行っていたので、7月中頃にオンライン相談会に参加し、様式を聞いた後に、2か月間の本格制作を始めました。
納品した後も、こちらの制作ミス(印刷が様式からはみ出している。解像度が低く、ぼやけて納品される恐れがある)などあった場合は連絡いただき、そのつど訂正することになります。

【当日までの準備・当日の頒布】
期限:10月29日(本番)
制作物が届き、販売活動が可能になった後は、どうやってこの商品を売るかを考えなくてはなりません。
今回は販売する場所と日時は事前に決まっているため、具体的に考え用意するべきものは
・販売員
・テナントとなるスペースの装飾
・上記に加えて商品の移送方法
だと考え、販売員はサークルの仲間に有償で依頼し、
装飾はテナントの飾りつけ(テーブルクロスや商品展示の棚など)の他に
・商品のイメージチラシ・ポスター
・ルール説明動画
の二点をサークル有志に制作していただきました。
この二点は当日にテナント前で立ち止まる方が近くの参加サークルに比べ多い時間帯があるなど、かなり効果的であると思いました。


今回参加しての反省点

ここに書ききれないくらい、めちゃくちゃあります。
ですがいくつか大きい反省点を述べると
・結果的にコンセプト通りの作品が作れたのか
・目標販売本数を達成できるような製品の出来、提供方法であったか
・トータルで見て投入コストが適正であったか
の三点を挙げます。
 まずコンセプトですが、個人的には半分は達成できていないと考えます。
半分というのは、制作者である私がその場にいて説明できるなら、おおむねコンセプト通りであると思うのですが、
商品に付属するルールの説明書の出来が非常に悪い、と感じました。
というのもB5程度のサイズの紙に、両面とも文字がびっしり書かれていたら、単純に読み物として読みづらいという点。そしてその説明が回りくどく、言葉を尽くせば尽くすほどより難解になってしまう。
つまりルールの簡略化に失敗しています。
4コマ漫画のような、イラストで図式しながらルールを解説するという手法を取られる商品は多く、そちらのほうが単純にイメージが掴みやすいでしょう。コンセプトを徹底するならそうした配慮も必要であると痛感しました。
 二点目の製品の出来・提供方法であったかです。
こちらについては、出来としては悪くないが、ゲムマに来るようなユーザーに対して需要が低い・テーマとジャンルがあっていない、という点。
提供方法については、販売員の方たちに、ルールのインスト+商品の魅力を伝える、いわばセールストークを伝授できなかった反省があります。
参加者分布の統計なんて出てませんが、出展しての体感だと、
男性:女性 8:2
若年層(10~20代):中年層(30代~) 4:6
くらいで、特に中年層は今回販売した「大喜利」系のゲームはニーズとして弱いなと販売員しながら感じました。
そして、仮に大喜利系のゲームに需要があったとして、幼馴染育成という
ゲーム性はまあ当然ですが人を選びます。面白いと思ってくれても(実際に来場者に説明しても割とウケはよかったです)2000円という価格設定は、
コンポーネントの内容と鑑みても手が出しにくいです。
作っているときに、なあなあにしていた(するなよ)部分がもろに弱みとして出ました。価格部分や売り方は2ヶ月くらい時間かけて徹底的に議論した
ほうがいいでしょうね。
 三点目の投入コストですが、制作費、特に販売員に対する補償金をかけすぎました。結果、完売したとしても赤字になる計算となり、予算は事前に厳格に決める必要性を痛感しました。
とはいっても同人活動で利益を出すというのは難しいので、ある程度赤字を覚悟して挑んでいました。
ですが、制作費が安くなれば、その販売価格を下げる余裕ができるので、
より販売本数の達成を狙いに行きやすいですし、購入してくれる方も価格が安くなってハッピーなので、長期的に見ればWinWinになるはずです。


終わりに

そもそもゲムマ秋が終わったのが1か月以上前なのに、なぜ今更。
と思われるかもしれません。僕も思います。気が向いたときにちまちま書いてたらこうなりました。すいませんでした。
いろいろ反省はありますし、惨敗に終わったので涙も出ましたが、
出展者側として参加できてよかったと思います。
後輩はじっくり時間と予算をかけて、めっちゃ面白いゲームを作ってほしいですね。
僕は気が向いたら頑張ります
ここまで駄文を読んでくださりありがとうございました。
もっと有意義な時間の使い方があったと思います。


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