鏡川源流のFIRST DRIP COFFEE
またまた高知の土佐山アカデミーに来ている。
1年かけて土佐山のツアーをつくる「旅づくりワークショップ」第二弾。前回の「水源を巡り妖怪と出会う旅」に続き、今回もまた水がテーマである。
高知市の水道を支える鏡川。その源流点で水を汲み、バリスタの方にコーヒーをつくっていただく。そしてその場で味わう。という贅沢な旅だ。
参加者は、山梨の大学チームや、高校の先生、病院勤務の方などなど、旅をつくることだけではなく、土佐山そのものや水に興味がある方々。
菖蒲(しょうぶ)という集落で有機農法を手掛ける優作さんにご案内いただき、源流をいかに維持管理し、守ってきたか、市民の水道に連なる川をキレイに保つための有機農法などについて話を聞かせていただいた。
今ではこの源流から水を汲んでいる世帯は5軒ほどであり、元々は3世帯て共同して切り開いたという。前回も書いたが、この令和の時代に水道が開通しておらず、水を汲んで生活する山の暮らしに驚く。
源流の維持管理は、高齢化によって後継がいない問題により、先行きが不透明である。そしてまた、土佐山全体のすべての生活インフラ、暮らし、文化そのものか、後継不足に悩んでいる。
そのことを、高知市民、県外、国外の人たちに知ってもらうことが、ささやかなこの土地への貢献となる。
それも、楽しんで。遊ぶように。
今回は、舌で味わうという身体的な体験によって、源流の価値や課題を感じてもらうことが狙いである。
といいつつも、やはり、おいしいかどうかが気になるところ。市内でCOFFEE plus+(コーヒープラス)という店を営む林さんに源流を沸かし、その場でドリップしていただいた。
ちなみに菖蒲地区の水は硬度が45程度。軟水の中では少し硬め、とはいえ硬水に比べると柔らかい、という塩梅の水である。
しっかり3分間蒸らした後に一気に液体を落とす「漬け込み」法で淹れていただいたコーヒーはとってもまろやかで、体内に溶けるような優しいコクがおいしい。
一方、硬水であるエビアン(硬度300程度)で淹れたコーヒーは、ぶっきらぼうでクールな苦味。イタリアやスペインで飲んだコーヒーを思い出す。ちなみに筆者はこの突き放したような苦味が好みである。
はっきりとした水の違いを感じながら、林さんのお話を聞く。コーヒーにおける水の割合はなんと98%であり、コーヒー成分は1〜2%だとか。つまり、水の違いがかなりの味の違いとなって現れるのだ。
個人的には、ヨーロッパなどの湿度の低い場所で飲んだ時の味わいと、日本という高湿度の場所で飲むコーヒーでは、大きく感じ方が変わるようにも思った。
湿度が高いと、酸味が舌に残りやすくなり、より後を引くのではないかと思ったりも。
後半はアカデミーへ戻り、このツアーそのもののレビューをした。よかったところ、改善できるところなど意見を出し合い、ワークショップは無事終了。有意義で楽しい回だった。
反省点としては、せっかく「旅づくり」ワークショップなので、インプットとしてコーヒーを味わうだけでなく、自分でつくったり、ツアーに名前をつけたり、値段を設定したりと、なんらかのチャレンジとアウトプットをしてもよかったなと思う。今後に活かしていきたい。
ただ、楽しく土佐山で遊ぶことが、結果的に山の課題を学ぶことにつながっていて、今回はかなり手応えがあった。
より直接的に課題を解決するやり方もあるだろうけど、やりすぎると仕事になってしまう。いかにお金を払ってでも体験したい遊びにできるか、が、この取り組みの難しいところであり、面白いところである。
今後は水だけではなく、地域のゆず農家、宴会、キャンプ、月見などなどの遊びに混ぜてもらい、DEEPな体験をツアーにまとめていく予定である。
旅を楽しみながら、実は地域課題の解決や学びにつながっている、という良いバランスを引き続き探っていきたい。