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土佐山モンスターハンター入門
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今回の旅づくりは、「土佐山モンスターハンター入門」。つまり、狩猟である。イノシシを狙った罠を事前に設置しておき、それらを周ることで、狩猟の前後を体験する。
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狩猟の一連を教えてくださる達人は、土佐山在住の高橋正蔵さんと高橋幹博さん。それに、幹博さんの孫のかずとくんも。
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自治体によって、一人につき、罠の設置数は30箇所までと決められており、設置する箇所には白い札を下げることになっている。ゲリラ的に狩猟をしていいわけではないのだ。
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達人によると、獣道にも本線と支線があり、本線だけに罠を掛けても避けられてしまうため、支線にも掛けるという。
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掛け方にも工夫がある。イノシシは木の根っこを避けて歩くため、根っこのそば、イノシシの足がつきそうなところに罠を設置し、土をかけてカモフラージュする。
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ここまでやっても、翌年には通じなくなっていることがあるという。イノシシは男女ペアで活動することがあり、一方が罠に掛かった時、もう一方はその罠を覚える。そして二度とかからなくなる。という仮説を聞いて、種としての知恵や賢さの積み上げがある可能性に驚いた。面白い。
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山を見る目の解像度の違いにも驚かされる。イノシシが歩いた後の木や根には爪や牙による跡が残り、泥のついた体が葉や茎を汚す。これらを注意深く見ることで、どれくらいの体格のイノシシが山を登ったのか降りたのか、そこまで分かるという。
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同じ景色を見ているはずなのに、見えているものが違いすぎる。暗視ビジョンをつけた特殊工作員のような目を持っている達人によって、なんてことのない山道が、手がかりだらけの現場になる。
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今年は豚コレラの影響により、そこまで獲れる数は多くない。山道を進む途中にも、倒れて死んでいるイノシシがいた。病気で死んだイノシシは他の動物も食べない。
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今回のパトロールでは残念ながらイノシシは掛かっていなかったが、4日前に捕らえて絞めた映像を見せていただき、そのリアリティに釘付けになる。
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映像の中では、幹博さんが、罠によって脚を固定されたイノシシの鼻先にワイヤーをかける。まるでカウボーイだ。そして2方向からの張力で固定され、身動きが取れなくなったイノシシの心臓をナイフでひと突き。まもなく命は失われた。とても鮮やかな手つきだった。
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狩猟には、複層的な意味がある。ひとつは害獣の駆除であり、もうひとつは食材の確保だ。どちらにしても、命を奪うときには贖罪と感謝の気持ちがあふれるという。初めて命を奪った時にはなかなか死なせてあげられなくて、肉も硬くなってしまった。
そこから何度も締める経験をして、手早く処理して、美味しく食べることが供養になるという考え方に辿り着いたという。
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そして、もちろん、そこには楽しさもある。頭を使って作戦を立て、罠を仕掛ける。掛かった時の喜びがある。また、掛からなかったとしても、そこからさらに工夫し、勝負する感覚があるという。
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獲れた猪はすぐに軽トラに乗せて持ち帰り、毛や内臓を処理する。2〜3時間もすれば店で見慣れた「あの肉」の見た目になる。普段は思い出さないが、牛も豚も鶏も、みな命を奪われる瞬間があるのだ。
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参加者同士で話し合い、狩猟の難しさ、複雑さ、命を奪うこと、そのあとの解体のこと、圧倒的なリアリティに体と心を震わせながら、今回のワークショップは終了した。
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そこからは、映像で見た4日前のイノシシをいただくことに。幹博さんの奥さんの手による「しし汁」や各種料理をいただき、芯からあったかくなった。
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しし肉は、柔らかく、とても食べやすかった。臭みはなく、豊かな滋味を感じて、何杯もおかわりしてしまった。なんでも、今回のような3〜4歳の出産前のメス肉がいちばんおいしいのだとか。
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参加者の中には狩猟免許をとられている方もいたが、罠のかけ方を知っていても、実際にはその前後でやるべきことがたくさんあって、なかなか狩猟をすることはできなかったという。
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イノシシの数は年々増えており、狩猟に従事できる人材は減っている。今回のような機会が、狩猟のできる人が山に入るきっかけとなればいいことだなあと感じた。
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