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高知で「旅づくり」はじめました

土佐山アカデミーのこと

設立10年以上になるNPO法人「土佐山アカデミー」。その代表である吉冨さんとスタッフの下元さんとの出会いは、4年前のことだった。

「高知行かない?」と誘われたのだ。誘ってくれたのは高木健太さん。「ごきげんでおなじみ」という最高の屋号でプランナーをしている。「air AIR JAM」というコピーバンドのイベントで対バンしたり、JAAAという広告業界団体の若手が集まる会で会ったり、なにかと縁がある関係だ。吉冨さんは昔、高木さんと同僚だったらしい。

当時は(今もだけど)軽い気持ちで「行く行く〜」といって参加した。高知には行ったことなかったし、かつおを塩で食べたかった。そしたら土佐山アカデミーは想像以上に山だった。

ハイジみたいなブランコがあるくらい山

きっかけはマフラーしまい髪

初めて訪れた時の仕事は確か「講義」。ワークショップだったかもしれない。本業以外に面白いことをしてる人を呼んで話してもらうことで、土佐山やその周りの高知の地域を盛り上げるヒントにしよう、みたいな会だった。

筆者は「マフラーしまい髪」の話をした。「マフラーしまい髪」というのは、マフラーにしまわれた髪の曲線やその状況を愛でるというフェチ的コンテンツで、当時少しだけ話題になり、雑誌やラジオに取材されたりもしたのだ。

このカーブがね

そこから、土佐山アカデミーとの縁が始まった。

ずっと謎だった

今回は「世界一周の話をして欲しい」ということで連絡をいただいた。(筆者は2022年に半年間、世界一周している)だけど、それだけじゃない。定期的に高知を訪れて、もっとアカデミーをよくするためのアイデアや動きも求められていた。

だから、今回は、1人で高知に来た。今までは、毎回(コロナ禍の時はオンラインだが)3名ほどの講師陣がいて、そのうちの1人として担当していたので気が楽だったのだが、今回は責任重大だ。ジェットスターが飛び立つ成田エアポートの第3ターミナルで、まだなんの準備もしていない自分に愕然としながら、ようやく焦り始めた。

初日は特に予定があるわけではなく、打合せなどしながら、山口出身の吉冨さんお手製「瓦そば」を食べるのみ。だから、とにかく話を聞いて、何をすれば良いのか、そもそも、この組織の目的はなんなのか、どうやって存続しているのか、課題は何なのか、ていうか、吉冨さんってなんなんでしたっけ???という、超今さらながらのそもそも&そもそも論から話をした。

山口名物「瓦そば」はホットプレートでそばを焼く

そうしたら、なんかちょっと分かってきた。

アクティビティ・デザイン

今までやってきたことを改めて振り返ってみた。土佐山の急な斜面を活用した「世界最速の流しそうめん」。土佐山で竹を切ったりごはんを炊いたりする企業研修、行政と組んだ観光ポスターの制作などなど、やってることが多種多様すぎて、なんだかよく分からない。

土佐山でいろいろやってることだけは分かる

筆者自身も、「高知に何しにいくん?」と問われた時に、「なんか、ワークショップ?みたいなんをやってるNPO?的な団体の人と仲良くしてて?で、世界一周の話をする?みたいな?」「お、おう」みたいにふわっとした話しかできてなかった。

でも、よくよく話を聞いているうちに、これは「アクティビティ・デザイン」なんじゃないか?っていう理解に落ち着いた。旅行中に、何か面白い体験ないかな〜と調べた時に「ACTIVITY」と出てくることがある。何泊もするツアーではなく、もう少し分解された個別のモジュールというか、「体験」が数時間にパッケージングされているようなイメージだ。「地元料理を習う」「夜の街に繰り出す」「グランドキャニオンを見にいく」「民族衣装を縫ってみる」などなど。つまり、個人向けのワークショップも、企業向けの研修も、行政と取り組む観光キャンペーンも、全部アクティビティだなあ、と思ったのだ。それは、口だけ、形だけの納品物じゃない。パワポだけつくるコンサルとか、映像だけつくる広告代理店や制作会社と違って、必ずそこに、アクションが伴っている。地に足がついているとでもいうのか。

土佐山の価値を上げる

そのアクションが、何を元にしているのかというと、土佐山である。土佐山の場所は、高知市内から車で30分くらい。意外と街に近い。だけど人口は800人程度に落ち込んでおり、高齢者が多い。他の田舎と同じく、人口問題・空き家問題・働き手不足などの問題に悩まされている。

市内や空港からも意外と近い

しかし、街の近い山だからこそできる気軽なアクティビティがたくさんある。街で材料を買ってきて、山で料理することもできるし、そうめん流しだってできる。そういう動きが何をゴールにしているのか。ひとことで言うと、「土佐山のブランド価値向上」である。

究極の目標、ラスボスは、「移住の促進」なのだが、それはハードルが高すぎる。だから、もうちょっとその手前の、たまに遊びにきてくれる、だとか、二拠点生活のベースにしてもらえる、だとか、ワーケーションしてくれる、などの「関係人口を増やしていく」こと。そのために土佐山アカデミーは活動している。

だから、土佐山でワークショップをやり、土佐山で企業研修をやり、求められれば、日本中の市町村にコンサルティングをしにいく。それは、土佐山で実験したことをシェアする動きなので、結果的には「土佐山っておもしろい場所なんだな」と認知とブランド価値をあげているのだ。そういうことをしていたのか。

瓦そばで満腹になった状態で、そのへんを理解して、ようやくこの組織が何をしてきたのか、何をしていきたいのか、が、わかってきた。しかし、もうひとつ分からないことがあった。

言葉が濃縮還元すぎる

それは、土佐山アカデミーの、特に、吉冨さんの「言葉」である。何度も何度も反芻して考え、練りに練られた言葉は、意味や文脈が何度も濾過され、すべての成分が高密度に濃縮されていたのだ。言葉の濃縮還元だ。

バリューが多い。そして濃縮度が高い。一見して分からない言葉も。

これらの言葉を浴びて、こう思った。「全部聞かないと」
だから、次回からは、吉冨さんについて、rockin'onばりの1万字ロングインタビューを敢行することを決意した。なんなら本にした方がいいのかもしれない。しかし、吉冨さんと下元さん(正式なメンバーはなんと2人だけなのだ)は、そんな暇もなく、次々に新しい仕事に取り組んでいる。せめて、このタイミングで、自分が理解できる範囲はすべて紐解いておかねばならない。謎の使命感を抱えたまま、初日の夜は更けていった…。

地元で狩猟されたイノシシ肉。大量に分けてもらったとか
リノベーションされた仕事場などの拠点が土佐山近辺にいくつかある
地元の好意で無償で使える仕事場兼宿泊所は、企業研修などにうってつけ

国土交通省の見通し

国土交通省が未来のことをレポートし、HPにアップしている。それを読むと、どうやら、今までは30万人都市をつくって、そこに医療やインフラや教育などの最低限の機能があれば、周りの村々もそこに紐づけていく、という方針だったらしい。ところが、人口減がはっきりと見えているため、DXの活用によって、10万人都市とその周りの5万人都市でもなんとかなる、という方針に転換したようだ。

↓「国土の長期展望」最終とりまとめ資料

右側は生活圏増えてるでしょ?DXすればOKっしょ!という資料

しかし、ここに抜け落ちている視点がある。DXというツールだけでは、お年寄りは置いてけぼりになりそう、ということである。結局は、人と人のつながりなど、国家単位に頼らない自治やコミュニティの強化しかなさそうなのだ。簡単に言うと「もっと助け合おうぜ」ってことだ。

そのためには、関係性をリ・デザインしていくことが求められる。「半径100mの人と人のつながりを」というテーマの会社を最近紹介してもらった。なんらかの引き寄せだろうか。自分の興味がそこらへんにあるのだろうか。

世界一周からのヒント

お花まで…ありがとうございます

日は明けて、ワークショップ当日。なんとか午前中の間で資料を完成させる。テーマは「旅づくり」。この土佐山の魅力を掘り起こして、ひとつひとつのアクティビティを見つけていく。そして、毎月このワークショップを繰り返す事で、1年経ったらひとつの(または複数の)ツアーができている、というのが理想である。

旅から導き出した、たったひとつのこと。
「土地の魅力は、欠点の裏返し」これである。

お酒が飲めない宗教圏→ノンアルコールの天国(インド)
落ちたら死ぬ超危険地帯→唯一無二のスリル&絶景(ノルウェー)
自然もエネルギーもない国→デザインが発達した国(デンマーク)

ほとんどの場所において、魅力的なことはいつも、欠点をうまく活用していた。宗教的にアルコールが出せない店はノンアルコールを洗練させていたし、安全な手すりのない崖はスリル満点の冒険登山だった。山もエネルギーもない国は想像力を働かせてデザインを得意分野にしていた。日本のアニメーションも近いと思う。

これを、ひとつの発想法として、ワークショップで試してみた。

WORKSHOP
1.地元のダメなところを書こう
2.「よく言えば」とひっくりかえしてみよう
3.ツアー名をつけてみよう

ダメ出しほど盛り上がる

ペンの音が鳴り止まないダメ出しタイム

ワークショップに参加する人たちは民泊を経営していたり、役場で働いていたりと、普段から問題意識のある方々だ。主体的に取り組んでくれていて、とても嬉しかったのだけど、それにしてもダメ出しの筆が進んでいる。笑いの絶えない5分間。みんなA4の紙が地元の悪口で埋まってしまった。

内容は割愛するけど、田舎ならではの大変なことがいっぱいある。そこから、その紙をひっくりかえしてもらった。つまり、概念的にも、物理的にも、ダメだしの裏を考えてみよう、という取り組みだ。これはみんな頭を悩ませていた。でも、いつもは使わない脳の筋肉をフル回転させて、無理やり、いいところを見つけてくれました。

そして、そのいいところを売りにしたツアーを開発してもらった。ワークショップは60分程度。参加した人たちから出たアイデアは、少なくとも今まで見たことのない独創的なものばかりだった。アイデアや企画を本業にしている自分から見ても、面白い視点や切り口が並んでいる。

こうして、ワークショップは大成功に終わり、「ダメ出し発想法」という、謎の武器がひとつ手に入った。この形式はすごく楽しいので、ワークショップの仕事、お待ちしています。紙とペンだけでいいので準備も楽です。

それは本題ではない。

酒豪の国でノンアルバー

実は、今回のワークショップの後に、「世界一周ナイト」という純粋なトークイベントも用意してもらっていたのだ。しかも、手作りカレーとともに、ノンアルコールのモヒート「ポヒート」をふるまう、という体験つきで。

農園で摘みたてのミントは葉っぱがデカかった

つまり、2回目の出張ノンアルバーである。(バーそのものも、まだ3回しかやってないのに)

材料はすべて現地調達。ミントはなんと農園で朝摘んできた無農薬のもので、葉っぱがデカかった。野生がすごい。香りもワイルドでした。

いただいた手作りカレーはスパイスからこだわった本格派

そこいらじゅうでお酒を飲む「おきゃく」など、お酒文化の強い高知でノンアルはどうかな〜なんて心配していたが、逆に、こういう土地柄だからこそ、飲めない人にとっては救いになる、という意見もあり、なるほど〜と納得した。

とんでもない街に来ちまったぜ…

最終日は、高知大丸で行われていた好日山荘×Snowpeak「三度の飯よりギアが好き」イベントを見学。これも土佐山アカデミープロデュースなのだ。本当にいくつのアクティビティを手がけているのか底がしれない。

日曜市というマーケットを歩いていても、「ああ、吉冨さん、買ってってよ」なんて声かけられていて、地元との関係があってすばらしいなあなどと思いながら、土佐山ジンジャーエールをごちそうになりました。(ゆずスカッシュもうまかった)

そして、今回は全国旅行支援のクーポンが3,000円ほど手に入ったので、高知大丸のオシャレショップ「LOKA」で、いくつかのノンアルを仕入れてきました。次回のノンアルバーにもし来る方がいたらお楽しみに…。

毎月高知

これから1年くらいかけて、毎月のように高知に行くことになると思うので、遊んだり、仕事したり、ノンアル仕入れたりと、色々したいです。お声がけ待ってます!

(ちょっとワークショップ・デザインの楽しさに目覚めたので、そういう仕事もやってみたいかもしれません。ダメ出し発想法は、どんな業種でも使えそうな気が)

ありがとう!Thank You!谢谢!Gracias!Merci!Teşekkürler!Asante!Kiitos!Obrigado!Grazie!Þakka þér fyrir!