見出し画像

山菜採りはめっちゃサバイバル

山菜採りを舐めていた。小高い丘にピクニック気分で入り、ほんのちょっと山菜を摘んで、そしたらすぐに天ぷらにして、ああおいしい空気もいいし、的なライトアクティビティだと思っていたから。

甘い考えだった。

山菜採りの集合場所
満開の桜


今回でラストになる高知土佐山での旅づくりワークショップ。「山菜クエスト」と称して、土佐山の野山を訪ねた。桜は満開であり、天候は温暖。山菜採り日和である。

山や畑に入れさせてもらい、タケノコやタラの芽、クレソンなどを採らせていただく、ゆるふわ楽しいイベントかと思いきや、いきなりの急崖。

急斜面にふんばってタケノコを掘る
名人は流石にすぐ見つける
竹林は空気が清浄な気がする

泥だらけの足場で転倒しないようにふんばりながら、タケノコを探す。しかし、これがまったく見つからない。素人の目にはタケノコの頭が認識できない。山の師匠である優作さんに教わりながら、なんとか発見するも、今度は掘るのに一苦労。本体を傷つけないように、周りの土をどかし、地茎とタケノコをつなぐ根っこを見つける。タケノコと茎は、まるで貝柱のように2cmほどの根でつながっている。これをクワで切断して、タケノコが手に入るのだ。

腰にこたえるクワ作業
根っこはホヤのよう
とれました!

土佐山では、例年より開花が遅れている。タケノコの頭が土から出てくるのも少し遅いらしい。そのぶん、まるで宝探しのように必死に探さないと見つからなかった。地面の割れが目印らしいが、素人の自分には、どれがもぐらの穴で、どれがタケノコの割れなのか、まったく判別がつかない。

もう少し時期を待てば地表にタケノコが出てくるが、それだと食べごろを逃すという。小さく白くえぐみのない美しいタケノコは地中に隠れており、それを長年の経験と勘から掘り起こすのがタケノコ堀りの要諦なのだ。

軽トラを駆使して移動
クワを振り下ろす
迷うと抜け出せなさそうな竹林

参加者がみな満身創痍になりながら、タケノコを探し、掘り、明日の筋肉痛を予感した頃に、時間が来てしまい、次の現場へ移動する。こんなにハードだとは誰も思っていなかったが、肉体を酷使した面々の目はなぜか輝いていた。

場所を変えて、イタドリの採取へ。伸さんのゆず畑にお邪魔して、その奥のイタドリを目指す。ゆずの木は、本体のかわいらしさに反してトゲだらけである。昼ドラで薔薇と柚子という名前の姉妹がいたら、どちらにも要注意である。イタドリは土佐山にいると頻出する食材であり、煮物がとてもおいしい。

暮らしと自然が融合する山
親子参加も
イタドリとれた

また、高級食材であるタラの芽を採取。高枝切り鋏でつまんでゆく。山の中においては、価値に上下など感じないが、街の市場経済では高値がつくから不思議である。

トゲの多い枝の先に芽が生える
昔からある保管庫
クレソンは葉の模様がきれい
わさび菜を発見

山の公民館に戻り、調理を開始する。参加者が手伝い、ガヤガヤとした修羅場が生まれる。それは切って洗って、そいつはザルにあげて、それを上に運んで、やっぱり戻して、醤油はどこだ、トングをとって、ゼンマイは灰汁が抜けてない、鹿肉は間に合うのか。

ちょうど最近、ディズニー+で「THE BEAR」というレストランの映像を見たが、すべての忙しさを詰め込んだような大修羅場映像で、その現場を彷彿とさせる調理場であった。

調理場は戦場に
イタドリの皮剥きは無口になる
文旦の差し入れも

公民館の2階では、今回の参加者、山や畑や山菜を提供していただいた山の師匠、学校関係者などなど、たくさんの人が入り混じり、酒を飲み、料理をいただいた。元々の趣旨は旅づくりツーリズムであるが、飲めば飲むほど本来の主旨とは関係なくなっていくのが楽しい。

みんなで大宴会
地域おこし協力隊の交流
なんとがんもどき。複雑で豊かな味わい

今回のツアーに参加した方で、もしかしたら移住するかもという人が、既に移住し民泊経営している家族と話したり、地域創生に興味のある方が、地元の自治に携わる人と話したり、他県の学術関係者が、高知大学の人と話したり、ゆるやかな場の中で、いろいろな関係性が生まれていくのもまた豊かさを感じてよかった。

コックはマー坊さん
ヘルシーな山菜料理が並ぶ
差し入れの鹿肉が香ばしい

その中心にある料理をつくってくれたのは、山村の整備や再生を担っているマー坊さん。絶品の料理を捌き、土佐山アカデミーの下元さんと二人三脚で調理場を取り仕切っていただいた。この修羅場を笑顔で乗り越えるお二人には頭が上がらない。

タケノコは刺身と天ぷらに。タラの芽も天ぷら。クレソンは白和えになり、文旦はサラダに。イタドリは煮物。そして、鹿肉を焼き、山菜の混ぜごはんに、なんと、山の幸のがんもどき。これらと日本酒が振る舞われ、参加者の腹を満たした。

あげたてがんもどき
山菜まぜごはん
タラの芽とタケノコの天ぷら

現在制作中の土佐山ガイドブックについても、参加者の意見をいただく。観光気分のツアーではなく、ほぼ冒険であり、その困難や予測不能性を主体的に楽しんでいく姿勢こそが、この山との向き合い方である。そのことを理解したメンバーが集まり、とても前向きな会となった。

山の幸に箸が止まらない
これまた差し入れの刺身が登場
捌いたのは大崎さん

ほぼ1年間、旅づくりワークショップに取り組んできた。講師という肩書きで参加したが、ほぼ体験リポーターであり、写真が捗る旅だった。この先の続報はまたいつか。とりあえず、この旅は一区切りを迎えます。(ワークショップは形を変えるにせよ続いていくはず)

ありがとうございました。
観光ではなく、冒険がしたくなったら、
また土佐山で会いましょう。

山に点在する桜もまた美しい

ありがとう!Thank You!谢谢!Gracias!Merci!Teşekkürler!Asante!Kiitos!Obrigado!Grazie!Þakka þér fyrir!