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木曽ぶらぶら、プロジェクトハウスごしごし

長野県の塩尻からもう少し先に木曽と呼ばれる一帯がある。そこは山々に囲まれながらも、中山道という江戸から京都への通り道であることから、宿場や工芸、商売などが栄えた地域でもある。

山々を背負う街並み

特にうるしが名産であり、長野オリンピックの際は、その技を活かしたメダルなどもつくられたという。

うるしメダル
最初に削ったろって思った人すごい
すんごいたくさんの工程

今回この地域に訪れたのは、半分仕事、半分遊びである。

仕事として、ミッション、ビジョン、バリューを定め、カンパニーブックをつくったGoldilocks(ゴルディロックス)という会社がある。「半径100mの人と人をつなぐ」がミッションの、「関係工学で人と人をつなぐソーシャル・キャピタル・カンパニー」である。

デザインして入稿してブックにしました

シェアスペースなど、人と人がつながる場所とルールとソフトウェアを用意してコミュニティをつくり、そのメソッドを再生産可能な理論(工学)として、展開していくところが特徴だ。

イベントで説明してるところ

そのG社が展開するプロジェクトのひとつが塩尻市の団体と進めているもので、プロボノで集まる数十名が、これからの街づくりを企画する。そのためのプロジェクトハウスを「ハウスにする」ために、片付け、掃除、家具設置などをする。

ハウスは川沿いの青い屋根

それをちょっと手伝い、その合間に、観光したり、リモートワークしたりをする。今ふうに言うとワーケーションというやつかもしれない。なんかちがうかもしれない。誘ってくれたのは同じくG社のPRを担当しているでんさんだ。

でんさんの記事はこちら↓

こごみが庭に生えていた。天ぷらにするとうまい

この文章は帰りの電車の中で書いている。新宿から塩尻までは特急「あずさ」が走っていて、2〜3時間程度で移動できる。東京と二拠点生活をするのにちょうどいい。

奈良井川は流れが速い

宿は、木曽の奈良井宿という重要伝統文化なんたらかんたら歴史地区であり、街並みがキレイにコントロールされている。京都や川越やアンティグアやタリンのような雰囲気である。ジョンレノンが美味しいと言ったソフトクリームも売られている。

日中はにぎわう

トレッキングの格好をした人たち、家族連れ、海外からの観光客、カメラを下げた人たちなど多くの人が訪れて、通りは賑やかになる。しかし宿が少なく、近くにもっと大きな街があるため、宿泊する人はあんまりいない。18時を超えるとほとんどの店はバタンと閉まり、ひっそりとする。

山とともにある暮らし

宿はこの地域特有の古民家。間口に比べて奥行きがあり、そのぶん光が入ってこないから、中庭がある。京都の「うなぎの寝所」にも似た建築様式である。地元の建築家の方に聞くところによると、税金が通りに面している間口の大きさに比例するからこうなったとのことである。政治と経済から産み出される文化が味わい深い。

天井が高く、ひっそりと静謐な空間
小物のセンスがめちゃいい
オーナーは花道家
中庭が嬉しい
とろろをぶっこんで食べました

宿は花道家の方がオーナーで、そこかしこにセンスのいい家具や漆器や古い壺などがあって使うのに緊張した。というか、使わないようにした。ドキドキする。

近所の宿「百」のランチ。至高。

プロジェクトハウスは奈良井宿から一駅離れた木曽平沢にあり、ハウスのオーナーであるSさんのご好意で、車で迎えに来ていただき、ランチや道の駅や街の案内などしていただいた。そして、本命であるハウスの手伝いも、少しだけ。

ハナモモの3色の桜色がキレイだった

キッチンの扉の油汚れをごしごしする。意外としつこい。ベッドを組み立てる。壁を拭く。釘を抜く。テーブルを設置する。古い家を掃除して使えるようにする経験なんて、一生のうちに数えるほどしかなさそうなので、なんだかとても楽しかった。もちろん、ほんの少しのお手伝いだけなので、もっともっと大変な工程がたくさんあったのだろう。でんさんは水回りの仕事人となり、ピッカピカにしていた。すごい。

長泉寺は江戸の要人が宿泊していた
天井画の龍が見事

ある日、雨が降った時に移動手段に困り、タクシー会社に連絡すると、「ちょっと今日やってなくて」「隣の街だから遠くて」みたいな感じで断られる。ひとつの街と街の間は大きな隔たりがあって、あまり隣同士で交流することがないそうだ。だから、飲み会をやるにしても、歩いて行ける範囲の人と接する。

苔がキレイについていた

資本が建造物を建てようと市といっしょに物事を進めようとすると、光の速さで噂が周り、「あらかじめ説明がない」ことに住民が不満を持つこともあるとか。自治の意識が高く、休日には公道にも関わらず車が入れなくなったりする。「ガンニバル」を視聴していたのでワクワクしてしまった。この土地の神と民とルールを知りたい。

昭和50年代から「伝建」を守り続けている
同じような木の色に統一
「絶メシ」指定の定食屋「SS」

このような隔絶された街と街が中山道の一本道に沿って配置されており、峠や山を越えていく道中にある。歩いてゆく旅人だったら、その差を楽しめるのだろうか。と、江戸の参勤交代を思い浮かべた。

昔の人はひたすら歩いてこえた山

近くで有名な山は御嶽山(おんたけさん)であり、行者が滝を浴び、参拝しながら登っていく。山岳信仰が強く残り、宗教心が色濃くある。自然の恵みである山菜やそばはおいしく、水がきれい。山と共にある暮らしのいいところも悪いところも味わい深い。

テリーヌ激烈に美味かった

次は仕事で来るかもしれないが、一番興味を持ったのは滝を浴びながら行く行者の登山である。たぶんウルトラライト装備で行くだろうけど。

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