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パラサイト図解もろネタバレ

パラサイト〜半地下の家族〜を見たので図解してみた。

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映画をつくる時に、どんな手順を踏むのかはわからないけど、テーマやコンセプトのような「ゴリっとした塊」があったとして、それを構造化してキャラクターの役割を決めて、そこまでやって初めて、アウトプットとしての映像やセリフや音楽の話が始まる気がしている。

パラサイトは、その構造部分がめっちゃしっかりしている印象。格差社会を象徴するような2つの家族を対比させよう。そして、前半はその金持ち家族に寄生していくサクセスストーリーにしよう。でも実はもうひとつの地下に暮らしている夫婦を出そう。その瞬間に3つの階層を意識させ、コメディからサスペンスへ変えよう。地下と半地下の人たちでモメて、最終的には悲劇を起こそう。そしてそれは、階層間の闘争を象徴するように描こう。登るはずが降りていく家族。一人一人の人間性ではなく、社会の構造がそうさせたのかもしれないって感じで描こう。

ここまで考えて「構造と役割」ができた。「それは社会との相似形」になっている上に、「コメディと思ったらサスペンス」っていうエンターテインメント上の裏切りもある。だから「ヒットの種」になっている。

映画のステップを、「企画」→「制作」→「配給」に分けるとすると第1の企画の山はこえた?っていうイメージ。

ここからは「制作」の話になっていく。主演は誰だ?構造をわかりやすく表現する世界観は?ロケ場所は?全体の映像のトーンはどうする?衣装は?小道具は?そもそもこの家族を魅力的に描くための脚本は?どんなセリフとシーンを重ねていけばいい?キャラクターをどう説明せずに感じさせる?対比構造を感じさせる映像上の伏線は?そもそも人が殺人を犯すくらい傷つくのはどんな時?感情を増幅させる音楽は?メタファーとしての映像表現でできることは?それぞれのパズルを埋めていくのは監督の役割だが、ここらへんのプロダクション・クオリティに一切妥協がない。雨だってガンガン降らせる(雨は金がかかる)。

企画段階での優れた点として、①社会を反映したテーマ②それを象徴する構造と役割③ストーリーの構造的新しさがあって、制作段階での優れた点として④構造を説明的でなく映像で感じさせる演出⑤演技・撮影・音響・美術・衣装・編集の質の高さ⑥社会テーマをエンタメに昇華しているサービス精神がある。

逆に言うと①社会をみていないサブカル的テーマ設定②よくある役割設定③構造的新しさのない手癖のストーリー④事務所と知名度ありきのキャスティング⑤いろいろ節約されたクオリティ⑥テーマは原作マンガに聞いてくれ だと、ちょっとつらいなと思いました。

神はディティールに宿るという言葉を信じて、腕利きの職人が、後者のような企画をなんとか形にしていっているのが映画の現状だとしたら、もっと企画や脚本を頑張らないといけないなあ、と感じたので、今後自分がつくるなんらかの制作物については、テーマと構造とディティールのすべてを考えよう・・・と思わせられた映画でした。おもしろかった。

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