見出し画像

【総まとめ】2019年観た 怪映画 6選 【なんだこれ……?】


■2019年観た映画ベストは ☆こちら☆


 2019年に観た映画ベスト20で終わると思ったか! そうは問屋がおろさねぇ!
 映画にはベストもあればワーストもある! しかし俺はつまらなかった作品をけなすなんて野暮はやらねぇのさ!!
 俺が選ぶのは、

「なんだこれ……???」

 と困惑せざるを得なかった怪映画だ!!
「おかしい。何かがおかしい」、そんな作品を2019年観た中から6本ばかり選んだのだ!!


 1929年から2019年まで、新作、旧作、短編、大巨編なんでもアリ!
 劇場、ソフト、配信、無料公開、そんなものは無関係!
 括りはひとつ! あとはナシ! 【俺が今年観た映画】だ!! これでも喰らえ! 


 ⚡⚡2019年 怪映画 6選⚡⚡


 やっていくぞ!!!!!!




①『養鬼 (悪魔の胎児)』(1980)


 俺は無法者なので、ベスト20の次点に食い込んだ作品をここにもぶっこむ。何故なら本作はすごい怪映画だからだ。
 前半こそ地味だけど、香港のひとが「タイあたりにはこういう謎の呪術あるやろ」と適当に考えたであろう儀式あたりからおやっ? とおかしくなりはじめ、
(☆2022年2月追記:東南アジアにはクマントーンやトヨルなどという胎児を使った呪術が本当にあるそうです。 スタッフの皆様にお詫び申し上げます)
 どう見てもサルの死体を使った儀式から「消しゴムを削ってローション塗った」みたいな胎児の御神体のチープさ。胎児の霊にとりつかれた男の「椅子に上がって、ちょっと高い位置から人の頭に向かってテレビを落とす」などの暴力。そして悪霊vs額にちょび髭みたいなんが生えてる霊能者との超絶バトルなどなどなど、ライブ感あふれる映像が爆裂する。
 巨大資本Amazonには思うところが多々あるのだが、これ1本を配信しているという事実だけで許せてしまう気すらしてくる。香港三級片(エログロ暴力)怪映画の一級品と言えよう。




②『それいけ! アンパンマン キラキラ星の涙』(1989)


 あなたはアンパンマンを知っているか? ではアンパンマンの映画を観たことがあるか? そしてそれを、大人になってから見返したことがあるか?
 これは劇場版アンパンマンの第1作目であり、その分気合が入っていたのだろう。いや入りすぎていたに違いない。明らかにやり過ぎている。凄みのようなものがムンムンと沸き立っている。

 たとえば、OPで歌いながらパンを焼いているジャムおじさんとバタコさん。軽快でたのしい曲調だが、歌詞が剣呑である。


♪赤ちゃんは はだかで うまれてくる
 ドジョウも はだかで カエルもはだか
 しかし食べずには生きられない
 ひもじいことはがまんできない
 どんな小さな 虫だって 
 食べずにいれば 死んでしまう


 ……赤ちゃんとドジョウとカエルを、みんな「はだか」だと括って並べてしまったり、「しかし」の逆接の意味がわからなかったり、弩ストレートに「死んでしまう」と歌うこのOP。
 作詞は作者のやなせたかし。「本当の正義というのは、お腹を空かせている人に食べ物をあげることだと思います」との思想が「メシを喰わないと……死ぬ!!!」に反転するやなせイズムの炸裂である。
 しかも「死んでしまう」と歌う瞬間は、ジャム&バタコが出来立てのアンコを味見して、手で丸を作っているショットなのだ。「死んでしまう」と歌いながら手で丸を作るな。

 この冒頭だけで、本作が並大抵のモノでないことがわかる。
 その後にも雷が直撃して墜落する宇宙船の「これは死んだやろ……」的ガチ描写。
 我らがばいきんまんがフルコーラスで自己紹介ソング(♪俺はすごいぞばいきんまん!ってやつ)を歌ったのに、ヒロインのナンダー姫は小鳥と戯れてて1ミリも聴いちゃいねぇシーン。
 吹雪の雪山で遭難しかけたアンパンマンたちが、「よし、こんな時は歌を歌おう!」「体も暖まります!」と言って腕を振りながら熱唱したはいいがその直後普通に雪に埋もれて凍死しかけている場面。
 探し物である「キラキラ星の涙」があるかもしれない、と、宝石を集めているという氷の女王の城に不法侵入、果てはアンパンマン号の火炎放射で氷の女王を溶かし殺す、人でなしの所業。
 そしてラスボスたる「どろんこ魔王」の、幼児映画にしては本気すぎるおっかねぇデザインと作画…………

 紹介が長くなってしまったが、この映画はそういう怪映画である。どういう映画か俺の筆の力では書ききれぬので、是非観てほしい。幼児向けアニメを舐めていると足元をすくわれる。




③『デビルシャーク』(2015)

 観るな。




④『サタンタンゴ』(1994)


 今年最大の話題作、『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、上映時間が180分ということでちょいとした話題になりました。
 あなたが観たことのある中で一番長い映画ってどれくらいですか? 180分? 200分? 150分くらいでしょうか?
 ぼくが映画館で観たこの『サタンタンゴ』という映画はね、 438分ありました。
 えっ、438分って、何分? ってなりますよね。438分です。7時間18分です。途中休憩が2回入ります。『アベンジャーズEG』も『ロード・オブ・ザ・リング』も遠く引き離すこんな長尺怪映画がこの世には存在するのです。
『サタンタンゴ』はアクション映画ではありません。ファンタジーでもない。貧困の農村に死んだと思われていた男が戻ってくるというドラマ映画であります。しかも白黒。94年なのに。
 しかしながら監督のタル・ベーラは観客を、驚異的な長回しと前後する物語とによってグリグリ引っ張り回してしまう。雨が降り風が吹きじめついた農村に、救世主なのか悪魔なのかわからぬ男がやって来るヒヤヒヤ感。そしてその前に起きる悲劇。それらが余すところなくたっぷりと語られている。438分。
 休憩があったとは言え、そしてそれなりに楽しめたとは言え、さらに限界突破の映画体験だったとは言え、「やっぱ438分は長いッス!!」という小市民的な感想を持ってしまった。サーセン。映画館の粋なはからいにより休憩が5分しかなかったので全然体が休まらねぇことも一因だったかもしれない。しかし5分て。トイレ行ったら終わりですやん。
 ともあれそれまでは238分が最長だったのでそれを軽く越える映画体験ができたことは得難い怪体験でありました。それはそうと、世の中にはもっと長い映画があります。観てみてはいかがですか? 





⑤『死体解剖医ヤーノシュ エデンへの道』(1995)


 タイトルから秒でわかるように、これはハンガリーに住む死体解剖医のヤーノシュさんの日常を撮ったドキュメンタリー映画である。冷たい台に乗っけられた死体(病院で亡くなった人が多いので、死体は綺麗)が出てきて、サクサク、ゴリゴリ、ジョリジョリと解剖されていく様が眺められる。
 陰部にも内臓にも脳にもモザイクはない。最初こそウワァ……と思うのだが、ヤーノシュさんのテキパキした仕事ぶりに引きずられるようにどんどんこっちも慣れてきてしまい、「内臓って割と綺麗なもんなんですね」「頭蓋骨って意外とパコッと外れるもんですね」「顔面の皮って、そんな簡単にペローッとめくれちゃうんですね。あっ、戻せるんだ……」と寺社仏閣でも眺めるみたいな気持ちになってくる。
 そうら死体解剖だぜェと見せつけるような、センセーショナルな作品ではない。体温は低く、作業的で、淡々としている。解剖され元に戻される死体によって、人の死・死体というものが「このくらいのものなのか」と思わされてしまう。自分の中の死生観が静かに揺らいでいく。これもまた怪映画であろう。
 
 



⑥『劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer』(2019)


 今年の新作で、最強にして最高の怪映画はこれであることに異論はないだろう。仮にあっても、まぁそれもまた平成だよね。
 謎の未来人・ウォズにより与えられたベルトで「仮面ライダージオウ」となった、王様になることが夢の普通の高校生・常磐ソウゴ。
 彼は「お前は将来、魔王になる」と語る未来から来たゲイツ、ツクヨミと仲良くケンカしながら、ソウゴに代わる王の擁立を狙う時間改変者・タイムジャッカーと戦いつつ、時空を越えて「平成ライダー」たちと交流を持っていくのだった、というのが大まかなあらすじ。

 この劇場版では、平成ライダーたちの力を受け継ぎついに王様になったかと思いきや、それもこれも全部、歴史の管理者「クォーツァー」(なんかよくわからない組織)の策略だったことが判明。
 クォーツァーのボス(ISSA)から 

「お前たちの平成って、醜くないか?」

 と平成仮面ライダーどころか平成という時代を全否定する暴言を吐かれ、投獄される失意のソウゴ。そしてクォーツァーによる「平成をなかったことにして、歴史をやりなおす」計画がはじまるのだが……

 このあたりで、この映画はひとつの時代を締めくくらんと「平成」を肯定しようというメタ的な試みであることがわかる。

 そしてここでもし、初代平成ライダーのクウガ=オダギリジョーが登場してソウゴを励ましたら、劇場は感涙に包まれたであろう。
 あるいはあえて、昭和の初代こと藤岡弘、でもいい。もしくは仮面ライダーWの菅田将暉桐山漣でもいい。
 前回の劇場版では電王=佐藤健がサプライズ出演した。今回もそれくらいのキャストが出てくれるはずだ……。
 だがスクリーンに現れたのは、


 木梨憲武であった。


 劇場はあたたかい失笑に包まれた。


 …………いや、わかるよ? 確かにね? 90年代前半にさ? パロディとはいえ「仮面ライダー」のイメージをキープし続けた偉大な存在だよ? 仮面ライダーじゃないけど。彼の台詞もなかなか熱かったけどさ? でも…………

 そんな混乱は承知とばかりに、映画は「平成」を守るため、戦慄の加速をはじめる。
 なんかよくわからなかった5色の仮面ライダー「仮面戦隊ゴライダー」(平成29年)が現れる。
 バラエティのいち企画で稲垣吾郎が変身した「仮面ライダーG」(平成21年)が戦う。
 巨大なスクリーンにいきなり吹き出しが現れ、マンガ版・白黒・切り抜きのような仮面ライダークウガ(平成26年から連載)がバイクに乗って現れる……

「平成の全肯定」は、私たちの想定を遥かに越えていく。文字通りに、全ての、肯定である。
 平成に現れたライダーは三次元も二次元も企画モノも何もかもすべて「平成ライダー」であると宣言し、よかったことも悪かったことも、よく出来た展開もトンチンカンな展開も、そして「平成」という時代も、それを生きた私たちをも、頭の先からシッポまで肯定してしまうのだ。

 最後は巨大化したボスに、ジオウをはじめとした主だった平成ライダーたちが全員でライダーキックを決める。
 防御に使っていた鉄板をキックでブチ抜かれ、「グ、ググッ……!」と悶える敵のボス。彼が正面を向くと! なんと巨大な鉄板には!



    
    成


 の文字に穴が空いているではないか!!
「平成」の文字を掲げつつ「グワァーッ!」と爆発四散するボス。そう、平成は、ライダーたちによって守られたのであった…………



 …………自分で書いていて何がなんなのかわからないのだが、これらの光景が実際に映画館で繰り広げられたのだから仕方ない。俺の頭がおかしくなった結果の脳内映画という可能性は排除しておきたい。
 
 ひとつの時代の終わりを象徴する作品として、『劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer』は燦然と、なんかやばい幻覚のような輝きを放ち続けるだろう。この怪映画を劇場で観たことを、私は忘れない。ありがとう平成。ありがとう平成ライダー。でも作った人たちはなんか大麻とかキメてたと思う。

 




 この他にも、

 原作ゲームへの敬意もなんにもなしにはい一丁!とばかりに安く仕上がっている『ハウス・オブ・ザ・デッド』
 チャチなCGで作り上げたホームメイド・ホンワカスリラー『恐怖!キノコ男』
 スーツの造形がやけにしっかりしてる分あとはしっかりしてない『メタルマン』
 ゴジラとギドラの戦いよりも形而上的議論バトルの方が圧倒的に長い『GODZILLA 星を喰う者』
 後半30分間、森の近くの池の映像が流れるだけの環境映像心霊DVD『あなたの知らない呪いのビデオ』

 などがあったが、世間にはまだまだ筆舌に尽くしがたい怪なる映画・映像作品がある。
 少数の傑作や駄作、多くの普通の作品やなんのとっかかりもない作品があふれる中で、時折こんな悪魔的なモノが顔を覗かせる……映画とはかくもおそろしいものなのである。



 来年もこのような、逆方向に実のある映画に出会えますように……

 いや、そんなにたくさんじゃなくていいけどね…………2本くらいでいいかな…………




(おしまい)

サポートをしていただくと、ゾウのごはんがすこし増えます。