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【怖い話】 長い単語 【「禍話」リライト 即出し番外編】

 Bさんが小学生の頃の話。

 当時、こっくりさんが流行っていた。

 Bさんのクラスでも「やろうぜ! こっくりさん!」と言い出すAというヤツがいた。
 面白そうだなと思ったBさんは、参加してみることにした。

 放課後の教室、4人で寄り集まって紙を囲む。

 こっくりさんは無事に降りてきた。
「わ。降りてきた降りてきた」
「ホントなんだ」
「やべぇ~、マジか~」
 などと驚きつつ、とりあえず質問をしてみる。

 ところが、こっくりさんは質問に答えなかった。
 十円玉は五十音表の上を滑っていく。
 滑っていくのだが、それがやたらと長く動いて、平仮名を拾い続ける。
 文章ではない。名前っぽいけれど、あまりに長すぎる。
 単語というか、そういったものらしい。

「え、なにこれ?」
「なんだろ……?」

 15文字ほどの平仮名を拾った十円玉は、鳥居に戻った。
 これで終わりらしい。
 子供ながらに、デタラメな文字列ではないように思える。
 しかし意味はよくわからない。

 はてな、と思って、別の質問をしてみた。
 十円玉はツ、ツ、ツ、と動きはじめて、さっきと同じ平仮名に向かっていく。

「うわ何だこれ」
「さっきのと同じだよな」
「なんか意味あんの……?」
「いや、わかんねぇ」

 怯えながら会話していると、15文字ほどを拾って、また鳥居に戻った。

 それからいくら質問をしても、たとえそれが「この言葉はどういう意味ですか」という質問でも、十円玉はまったく同じ15文字を示し続けた。

 誰かが適当に動かしているのなら、こんなに正確に再現はできないはずである。

 怖かったものの、面白さの方が強かった。
 終わり頃には4人とも、その15字の文字列を覚えてしまっていた。

 こっくりさんに帰ってもらってから、
「何だったんだろうなアレ」
「あんな長い名前ってないよな?」
「呪いの呪文だったらヤベェよなぁ」
「やめろよ~!」
 などと言いつつ、4人は夕方の校舎を後にした。
 単語の意味がわからないせいもあって、怖さはあまりなかったという。

 翌日の朝のこと。
 こっくりさんをしよう、と言い出したAが、青い顔をしてBさんたち3人を呼んだ。

「わかったわかった。昨日のアレ……」


 Aは家に帰ってからも、例の15文字が相当に気になっていたという。

 あ、そうだ、と彼は思いついた。
 大人ならわかるのではないだろうか。

 さっそく両親に、
「ねぇねぇ、この言葉って知ってる?」
 と、例の15文字を暗唱してみせた。

 すると両親に、
「なんだお前、いつの間に覚えたんだ。えらいもんだなぁ」
 と感心された。



 曾祖父の、戒名だったそうである。




【完】


★本記事は、無料&著作権フリーの怖い話ツイキャス「禍話」、
 禍話アンリミテッド第三夜
 より、編集・再構成した上で、放送終了1時間ほど後に書き上げたものです。獲れたてピチピチです。

 

★「禍話」はオリジナルの怖い話をするネットラジオです。
 毎週土曜23時に無料放送。累計放送回数300オーバー、たぶん2800話くらい話されています。
 詳しいことは有志の方がされているありがたい情報サイト、「禍話wiki」をご覧ください。


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