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オシャレな人

その人はいつもお洒落だ

高そうなカッコイイ服を着て

髪もきちっとまとめている

その人の隣にいるといい匂いがして、つい

その服を崩してしまいたい気持ちに駆られる


その人が吸い殻を置くとき横目で背中を見る

どこまでが本音でどこまでが嘘かと頭をよぎり

にやついた口を隠す だって嘘しかないのに

本当のふりをするその人が面白くて、つい


その人自身でもわかっていないであろう寂しさを

くだらない液晶で誤魔化している背中と腕

食いちぎって楽にしてやろうかなと

上目を使い、ん、と見る


その人は気まずそうに質問を投げかけてくるが

美味しそうな身体にしか興味のない私は

その人が好きそうな答えを

適当に優しそうな日本語で発して

ぐらつきそうな理性にエンジンをかける


おちてしまえばいいのに

いくらだって食べてあげるのに

どうしようかな、どう料理しようかなと迷っていると


「50年位待ってね」と笑われる

やっぱり嘘つきなその人は

憎たらしい綺麗な模様の服に袖を通して

この汚い街を出て

その服が似合うキラキラした街にいくんだろう


お上品なコロンの香りなんて

もうとっくに消えているよと内心

ふふんと上機嫌に笑いながら

改札で手を振る


背中と背広の寂しさの違いが

あまりにもおかしくて、でもかわいくて

マスクでにやついた口元を隠しながら

見ないふりをして帰っちゃうのだった



生活費の足しにします! ありがとうございます!感謝の極み!