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【ゲームレビュー】アンリアルライフ

喋る信号機と歩む”先生”を追う優しさの物語

今回は、「アンリアルライフ」というゲームについて書いていきたい。
このゲームは、Nintendo SwitchとSteamにて販売されている横スクロール型ドット絵アドベンチャーゲームだ。

このゲームはYoutubeに動画投稿しながらプレイしていた作品ということもあり、思い出深いゲームだ。加えて、このゲームのストーリーやテーマ、キャラクターの心情(というより性格?)が印象深く、今回書いていきたい。

はじめに言っておくが、ちょっと扱うテーマとして、一部人によっては気分の落ち込み等を受ける危険性があることに留意してほしい。
だが、このゲームは一言で言えば、”優しさと愛情の物語”だ。
そこも含めて書いていこう。

(今回は、かなりネタバレを含むため、未プレイの方は、概要までで読むのをやめることをおススメする)


ゲームの概要

まず、ゲームについての説明文を引用させてもらおう。
(以下Steamストアページより)

”記憶喪失の少女は、しゃべる信号機と出会いました。
少女には「さわったモノのキオクを読み取る力」があるようです。

──少女は自分の記憶の手掛かりとなる「先生」を探すため、
信号機とともに不思議な夜の街へと旅に出るのでした。
記憶をたどった先に、待っているのは……。

アンリアルライフは、記憶を読み取るなぞ解きアドベンチャ-。
モノに触れ、今と過去を比較して謎を解いていきましょう。”

この”キオクを読み取る能力”を使って、記憶喪失の主人公「ハル」が失った記憶、そして”先生”の痕跡をしゃべる信号機「195」と共に、旅することで解き明かしていくといった大まかな話の流れをしている。

初めにハルが思い出した記憶は、「先生を屋上から突き落とした」という辛い描写。ハルはその後、悲しい記憶のフラッシュバックに苦しむのであった。

だが旅の先々で出会う様々なキャラクターとの出会いを通して、ハルは記憶を取り戻していくと同時に、ふさぎ込んだ心を開いていく…

注意!!
再三になるが次項から思いっきりネタバレを含む!


凍った少女の心を溶かすキャラクター達との出会い

このゲームの大きな魅力の一つとして、私はハルと登場キャラクターとの出会いを取り上げたい。
というのも、とにかく登場キャラクターに味があるのだ。
中でも次の2人にフォーカスしたいと思う。

喋るマリモシェフ”マリー”との出会い

まず、喋るマリモ”マリー”さんとの描写について感想を書きたいと思う。
最初に思ったのは、「ま、マリモ!?」ということ笑。
こういうシチュエーションだと、牛とかワニじゃないかな?という先入観によるものだが。(板垣巴留先生の漫画の影響だろう…)

そしてハルとマリーさんの出会いについてだ。
先生の痕跡を追ってたどり着いたホテル”くじら”、マリーさんのいるカフェテリアに訪れたハル、もちろん最初は困惑したり、思い出した悲しい記憶からくる不安を感じていた。

そんなハルをマリーさんは包容力のある優しい口調で出迎えてくれ、先生の情報をくれるのであった。そして「お腹空いてない?」と温かい料理を作ってくれたのだ。

ハルはそれを涙を流しながら食べるのだった。「からっぽだった」お腹と心にマリーさんの料理は沁み込んでいった。
精神的に辛い時、「食事によってその気持ちが楽になること、自分にもあったっけな…」なんてことを思い返していた。

美味しいと感じられる安心感、それも料理の味以外に人の心を満たしてくれるものなのだ。
そんなことをマリーさんは思わせてくれるキャラクターだった。

咥えタバコのペンギン運転手”カセリ”

マリーさん同様に、くじらで出会う電車の運転手”カセリ”。
本作で一番好きなキャラクターだ。
咥えタバコに、居眠りと決して真面目ではないペンギンだ。

ハルとは、くじらの内部に繋がっている電車のホームで出会うことになるのだが、成り行きで情報の代わりに、ちょっとした嘘をついてハルに駅のトラブルを解決してもらおうとしてくる。

無事ハル達はこのトラブルを解決するのだが、カセリから情報に関して嘘が発覚する。「うそつき…」とハルはその言葉から過去のフラッシュバックを起こし、パニックになるのだが、カセリは「俺はもう嘘をつかない、本当にすまなかった。埋め合わせはする。」となだめるように謝るのだった。

その後、ストーリーが進み先生の居場所と思しき”幻の駅”に向かう際、カセリは駅に向かう旅のために、運転手として駆けつけてくれる。
仕事が忙しい(本来駅長のため)はずなのに、しっかりと借りは返す。意外と律儀なヤツなのだ。

「中々こういう借りをしっかり返すやつって貴重だよな。。」なんて思ったりしながら見ていた。
口調は所々荒かったりするのだが、基本的に面倒見がよく、
兄貴分のような友人という立ち位置なわけだ。

道中カセリとハルは、他愛のない話やアクシデントの中で交流を深めていくのだが、「先生を見つけたあと、ハルはどうする?」という話題になる。
「わからない」と答えるハルに「やりたいことをゆっくり探せばいいんじゃ
ないか?」と返すカセリ。

私はこのシーンが自分の記憶とダブる所があった。
仕事に行けなくなって、これからどうしていけばいいかわからなくなった時、学生時代の友人からかけられた言葉だ。

ありきたりかもしれない、適当に聞こえるかもしれないが、あの言葉でハル同様に少し前向きになれたと今は思う。
カセリとハルのやり取りにはそんな「前向きさ」というのが詰まっているように感じる。


このゲームを終えて思うこと

このゲームのテーマ、それは「思いやる優しさ」、そして「変えられない記憶(過去)をどう乗り越えるか」ということにあると思う。
そしてそれが心に沁みてくる、そんな作品だ。

物語を通して、ハルと関わるキャラクターの多くは、カセリのような交換条件を出しつつも、最終的にはハルのために行動してくれる。(それにもちゃんとしたストーリー上の理由があるのだが)

そうした姿は、色んな物語を読んできた人からすればありがちに思うかもしれない。ただ、その行動の節々に「ハルに前に進んでほしい」という言葉や思いを感じることができる。
その先にそうした思いの根源となる”先生”の所にたどり着く。
この”思いの流れ”のようなものが見えるのもこの作品の面白い所だと思った。

暗い消してしまいたいような過去、それに囚われてしまうことも時としてあることだとは思う。人によってはそれで命を投げうってしまうこともある位なのも事実だ。

それを出来るなら乗り越えたいとどこかで思っている。でも、直視したくない。それに苦しめられることが分かっているから。しかも、乗り越えたくてもそのためにどうしたらいいか冷静に考える余裕なんてない。
そんな姿がハルのキャラクターには映っているのではないだろうか。

そして、それを乗り越えるためのきっかけが他のキャラクターたちとの出会い、そしてハルの持っている能力である”キオクを読み取る力”にあるのではないかと思う。誰かの思いやりを受け止め、辛くとも少しずつ過去を直視すること、それが前に進むための一歩。

そういうことを伝えたい作品なのかなと思ったりするのだ。
異論は認める!笑。ただ私はそう感じた。

だから、一度この作品をプレイして、あなたがどう感じるか、何を思うのか試してみてほしい。


最後に

思い入れがあっただけに、えらく長いレビューになってしまったが、是非プレイしてみてほしい作品であるということが伝わればいいと思う。

勿論ドット調のデザイン、様々な描写もよりストーリーをより深いものにしてくれている。必見である。

最後に、制作者様へ…
ありがとうございました。



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