大好きだった人を1年数ヶ月ぶりに見た話 2 彼がいた
ついさっきまでは見に行かない方がいいという気持ちもあったはずなのに、走り出した瞬間からそんな気持ちはすっかり消え去っていた。
私は応援団のいるエリアへと全速力で走った。
とにかく彼の姿を見たかった。
数分走り、ようやく応援団のいるエリアに入った。
入った瞬間まず目に飛び込んできたのは、彼と仲良くしているのをSNSでよく見かける30歳の女性だった。
髪型と持ち物と着ているユニフォームの背番号ですぐにわかった。SNSで何度もチェック済みだったから。
応援団のエリアの端の席で1人で座っていた。
私は立ち止まって彼女のことを見た。
SNSの写真で見るよりも大きかった。(失礼ながら、縦にも横にも)
そういえば身長が180cmあるって書いてたっけ。
彼が私とハグする時、
「あのこさん小さくてかわいい、こうしてる時あのこさんの顔が僕の胸のとこにくるのかわいい、頭ごとぎゅってしちゃう」
と言っていたなあと思い出した。
その女性と付き合っているかは定かではないが、もし付き合っているのだとしたら自身より大きい女性とどんなハグをしているのかな、なんて考えた。
より顔が近くてハグからのキスがしやすいんだろうか。
私とキスする時は私が目一杯背伸びをして彼が屈んでくれていたな。
一気に辛くなってきた。
まだ彼の姿を見ていないというのに。
彼女と彼が恋愛関係にあろうがなかろうが、しょっちゅう会って仲良くしていることがたまらなく羨ましくなりそんなことを考えてますます苦しくなった。
彼女を見ることをやめ、応援団の中心部のエリアへと歩いた。
すると、いた。
応援団のエリアの中心最前列。
拡声器を持って大声を出しながら客席に向かって何かを指示する彼が、確かにいた。
垢抜けておしゃれになっており、大人っぽい顔つきになっていた。かっこいいなと思った。
私と一緒にいた頃の、まだまだ子供でちょっとダサい彼とは全くの別人だった。
見つけた瞬間撃たれたかのような胸の痛みを感じ反射的に涙が出て、これ以上ここにいたらダメになりそうだと思い、走って自分の席まで戻った。
試合はボロ負けだったけど久しぶりの現地観戦はやはり楽しくて、試合中は彼のことを忘れて楽しむことができた。
しかし、試合が終わってからは彼のことで頭がいっぱいだった。
遠目に一瞬彼の姿を見ただけであんなにも苦しくなるとは。
その日は彼との思い出を反芻し、今とのギャップに絶望し、彼の周りにいる女性たちを羨ましく思いながら眠りについた。(翌朝、なぜか女性用風俗に行く夢を見て目が覚めた。)
翌日は1日中彼のことが頭から離れなかった。
結局まだまだ忘れられないらしい。
しかし、久しぶりに見た彼は上にも書いたようにまるで別人のようになっていた。
私がまだ好きなのは今の彼ではなく、あの頃の彼であり、彼の幻想なのだろうと思った。
それに気付くことができただけで大きな成長だと思う。
まだまだ時間はかかりそうだけど、少しずつ私の中でいい思い出としてきちんと昇華できますように。
何度も未練がましく申し訳ない。
また彼にまつわることがあった際はここで吐かせてください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
終わり
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