33歳人妻が16歳の少年に恋した話 22 気まずい空気

私とフラッグ君は、手を繋いで図書館の隣の公園に移動した。

公園のあらゆる場所に、制服を着た高校生がいた。みんなスケッチブックを持って何かを描いている。
美術部かな?
それにしても結構な人数だった。

「ちょっと嫌なタイミングで来ちゃったね。移動する?」
「大丈夫です、見せつけてやるぐらいの気持ちでいましょ」
「そうね(笑)」

私たちは、空いているベンチに座った。

フラッグ君は
「僕も普通に生きてればああして制服着て普通の高校生活送ってたのかなあ」
と言った。寂しそうな顔だった。

「ああいうの憧れたりするの?」
「そりゃたまにはね」
「でも、フラッグ君よりつまんない高校生活送ってる子なんてたくさんいるよ。フラッグ君はアクティブに応援してていつもイキイキしててすごいよ。私は君の方が輝いて見えるよ」

「そんなこと言ってもらえて嬉しい。ありがとう。本当にあのこさんに話してよかった」

フラッグ君は肩を抱いてきた。

私は思わず
「うわっ」
と言ってしまった。

抱かれている肩がものすごく熱くなっているのがわかった。

「やめて恥ずかしいから」
「やめてほしいんですか?」
「………」

フラッグ君はニッコリして、そのまま私の肩を抱いていた。
本当に恋愛経験のない16歳なんだろうか。

私たちの会話は、応援しているチームの話が大半である。
あとはお互いの友達の話や家族の話。趣味の話などなど。

会話の中で、自分の顔が母親似か父親似か、という話題になった。

「僕の目は母親似なんですよね」

私は、彼のお母様の顔を思い出していた。

彼と初めて会った日、つまり一目惚れした日。ネットストーカーをしてチームの公式Twitterを遡って特定した画像。
彼の隣に写っていたお母様の顔。

マスクをしていて目元しか見えなかったけど、フラッグ君と並ぶお母様はとても綺麗な目をしていた。
一目で親子だと分かるぐらい、彼とお母様は目元が似ていた。

そのことを思い出し
「ああ、お母さんも綺麗な目してるもんね〜」
と言った。

するとフラッグ君が

「僕の母親の顔知ってるんですか?」

と言った。

やってしまった。

「あ、いや、その」

「なんで?」

とりあえず誤魔化そうとした。

「チームの公式Twitterに載ってたじゃん、お母さんとイベント参加した時の写真」
「それって4月のですよね?僕と知り合う前ですよね?」
「…うん」

もう誤魔化しようがないので、本当のことを話そうと思った。

「実はフラッグ君のツイート遡って見たりしてた。そこで4月のイベントにお母さんと参加してたの知って。わざわざ公式の写真までチェックしちゃった」
「そんなことしてたんですか」
「うん」

ものすごく気まずい空気が流れていた。

「正直気にかけてたから、ずっと」
「いつからですか?」
「……初めて会った日から」

私はもう耐えきれず、目を瞑って顔を下げた。

恐らく彼は、ずっと私のことを見ていた。
私が目を瞑ったタイミングで、彼の呼吸の音がよく聴こえたから。

お互いずっと黙っていた。

続く

関係ないけど今日は職場の近くで朝からお祭りがあったので先輩マダムたちと行ってきた。マダムたちはお好み焼きやケバブや大学芋を食べさせてくれた。優しい人々に囲まれて幸せだなと思った。

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