33歳人妻が16歳の少年に恋した話 79 お互いに闇堕ち
2023年、2月下旬。
私は絶望の中にいた。
毎日毎日彼のことを考えていた。
彼との思い出を振り返り、幸せだったあの頃を回顧して現実とのギャップに落ち込み、彼から連絡が来ないか毎時間スマホをチェックしては当然何もなく落ち込み、寝る前に彼のことを思い出して落ち込み、起きた瞬間に彼のことを思い出して落ち込んだ。
つまり四六時中落ち込んでいたのである。
これが失恋か。
思い返してみると、人生において失恋らしい失恋はしたことがなかった。
世の中の失恋した人たちって、こんなに辛い思いを乗り越えて生きているのか。強すぎるだろ。
結婚していなかったら、また新しい恋をして忘れようとでもなるのかもしれない。
しかし私は既婚者である。
そんなことはできるはずがない。というかそもそも恋なんてするつもりなかったし今後するつもりもない。
今回の恋だって、別にしたくてしたわけではない。してしまっただけだ。
それに新しい恋をして忘れよう、なんて気持ちになるわけがない。
彼じゃなきゃ駄目なのだから。
彼以外の人と恋をするなんてこれっぽっちも考えられない。
本気だったのにな。
離婚して一緒になるつもりでいたのにな。
ある日お風呂を上がると、フォロワーたちから彼の最近の動向についての連絡があった。
独身男性から、1件のツイートのリンクが送られてきた。
彼が加入した派閥の応援する様子が動画と共に載せられていた。
彼にクッキーを拒否された日の動画だ。
2023年2月当時はまだ、応援する際にマスク着用の義務があった。
しかしその派閥は全員マスクを取って応援していた。
確かにあの日、彼はマスクを取った状態で私に会いに来たなと思い出した。
また、派閥の人間たちは上がってはいけない椅子の上に土足で乗り大暴れした上に(この様子も動画の中にあった)、椅子の1つを破壊してそのまま帰ったらしい。
椅子を破壊した犯人が彼なのでは、という話題だった。
確かに動画を見ると彼が椅子を破壊しているようにも見えるが、確証は得られなかった。
この動画は応援しているスポーツの界隈で大炎上しているようだった。当然である。
独身男性は、
「フラッグやべー奴じゃん(笑)こんな奴との関係終わってよかったんじゃないの?」
と言った。
彼の変貌ぶりに引いていた。
どうしてこんな子を好きだったのだろうと思った。
しかし、引きながらも私は何度もその動画を見返した。
結局彼の動く姿が見たくて仕方がなかった。
そう簡単に嫌いになれるはずがないのだ。
もしかしたら、私との関係がうまくいかなくてヤケになっているのかもしれない、なんて思ったりもした。
まだ彼の中には私がいて、そのうち連絡が来るのではないか。
そしてまた、前のような関係に戻り、離婚して無事に付き合うことができるのではないか。
痛々しい妄想が止まらなかった。
期待するだけして自分から連絡する勇気なんてない。待つだけ。
そんな自分が嫌だった。
こんな闇の中でしばらくもがき苦しみ、気が付いたら季節は間も無く春。
行きつけのカフェのマスターから連絡があった。
「転職先で頑張ってるかい?話したいことがあるから近々お店に来れる?」
転職してからは一度もマスターのお店へ行っていなかった。
話したいこととは何だろう。
連絡をもらった翌週の末、マスターのお店へと行くことにした。
続く
関係ないけど、鳥山明先生が亡くなった。幼少期はアラレちゃんとドラゴンボールを見て、生まれて初めてやったゲームはクロノトリガーで、JKの頃ドラクエ大好きで繋がった友達とは未だに仲良し。夫はドラゴンボールの信者。日常には必ず鳥山先生の作品があった。悲しいな。これからも彼の作品を愛し続けていきたい。
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