8年間片思いされた話 9 みんなへの報告
あっさり婚約した数日後、あっさり婚約破棄になった。
初めのうちは何が起こったのかよく分からずぼんやりと過ごしていたが、1週間ぐらい経って怒りと悲しみとショックと絶望感に襲われた。
それと同時に、彼と付き合っていた自分自身のことを振り返っていた。
付き合っている間は確かに楽しかったけど、ちょっとサイコでいざという時助けてくれない場面が多々あったし、一緒にいて拭えない違和感や噛み合わない部分も多かった。
全て気づかない振りをしていた。
この人と結婚したい、この人がいい、という気持ちよりも、周りが結婚し始めて焦っていたことや玉の輿に乗りたいという気持ちが勝っていたように思う。
そんな気持ちでいたから浮気されちゃったのかな。
なるべくしてこうなったのかもしれないな。
私自身にも反省するべき点はたくさんあったのだ。
数日で婚約破棄になったことが恥ずかしすぎて、ごく親しい友達以外には報告できずにいた。
しかし、お祝いにスタバのチケットをくれる友達が現れた。
破棄になったことを報告せずにいると今後こうしてお祝いをくれる人が出てきてしまうかもしれない。
そんなことになったらあまりにも申し訳なさすぎる。早くみんなに言わねばと思った。
(ちなみにチケットをくれた友達には謝罪し、婚約破棄になった旨を伝えて返金すると言ったが、可哀想だから使っていいよと言われた。優しさに泣いた)
その後破棄になった件を友達や同僚に報告すると、みんな私を慰めるべく飲みやカラオケに連れて行ってくれたり、温泉に連れて行ってくれたりした。
優しい友達や同僚に恵まれて本当に良かったなと思った。ありがとうみんな。
田村さんにも報告した。
すると田村さんは
「ご飯行こう!明日にでも!」
と言ってくれた。
翌日の仕事帰り、田村さんが車で迎えに来てくれてちょっといいステーキ屋さんに行った。
奢ってくれるのだという。
美味しいステーキを食べながら、プロポーズされた日のことから即婚約破棄になるまでのプロセスを面白おかしく話した。途中ちょっと泣いちゃったけど。
田村さんは、笑ったり悲しそうな顔をしたりしながらひたすら話を聞いてくれた。
結婚する前にダメな男ってことに気付けてよかったじゃん、と言ってくれた。
帰りは夜景が綺麗な丘の上に連れて行ってくれた。
5月の夜はまだちょっと肌寒い。
田村さんが私の手を握った。
ふわふわしたちょっと太っている人の手だなと思った。
やはりドキドキはしなかった。
「あのこ明日休み?」
「そうだよ」
「今から俺の家来ない?」
私は田村さんを見つめた。
田村さんは半分笑って半分真顔で私を見ていた。(昔の曲にこんな歌詞あったよね)
悲しさと絶望感と寂しさに襲われていたその時の私は、
「うん」
と言った。
彼に満たされればなんとなく楽になれるかもしれない、と思って。
田村さんは私を乗せた車を自分の家へと走らせた。
続く
関係ないけど今日から職場であだ名及びちゃん付け禁止令が出た。女の職場で仲良しでみんなあだ名で呼び合っていたからめっちゃやりづらい。何のメリットも感じられない。
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