バイト先のお客さんと付き合った話 7 罰ゲーム疑惑

私は動揺しながら生田さんに質問した。

「ずっと前からっていつからですか」

「初めて見た日から」

「そんなわけないでしょ」

「本当です」

どうでもいいけど私は何度か一目惚れされたことがある。
決しては可愛くはないのだが、何かしらのオーラでもあるのかもしれない。

「好きです、付き合いませんか」

「そんな突然言われても」

確かに話していると面白い人だしいい人だとも思う。結構惹かれている自分もいた。
付き合うと言ったっていい気はした。

しかし。
彼はものすごくおしゃれでかっこいい人だ。
現に一緒に並んで飲んでいる今だってものすごく不釣り合いだと思う。

こんなおしゃれでかっこいい人がおしゃれでもない上にかわいくない私に一目惚れする時点でどうかしているというのに、こんな人が私と付き合いたいと言ってくるだなんてもっとどうかしている。

これは何かしらの罰ゲームであると察した。
(実際中学時代男子に馬鹿にされていた頃、罰ゲームの対象になり嘘の告白も何度かされたことがあった)

よくよく考えてみたらこんなかっこよくて女慣れしているような人が私と付き合いたいと思うはずがない。

これはきっとDQN先輩が仕掛けた罰ゲームだ。
あの人ならやりかねないと思ったし。

私は思ったことを正直に伝えた。

「罰ゲームか何かですよね?」 

「え?!」

「おかしいですもん、生田さんみたいなかっこいい人が私と付き合いたいだなんて」

「罰ゲームなはずないよ」

「罰ゲームじゃなかったら何ですか。遊ぶ女の子増やしたいだけですか」

「誰とも遊んでないよ俺は。ていうか…うーん」

「何ですか」

「いや、その…」

私はなぜか苛立って少し声を荒げてしまった。

「早く言ってください。やっぱり罰ゲームか遊びなんですか」

「付き合ったことない」

「え」

「女性と付き合ったことないんです。俺。
覚えてない?連絡取り始めた頃に女性が苦手って話したの」

「確かにそう言ってましたね。でも、だとしたらなんで私のこと好きなんですか。そこ矛盾しませんか?
やっぱり罰ゲームなんでしょ」

「違うんだって」

「何が違うんですか」

「なんかよくわかんないけど好きになっちゃったんです。なんで信じてもらえないかなあ。びっくりなんだけど」

「そりゃ信じられるはずないですよね、あなたみたいなかっこいい人が女性と付き合ったことないとか私のこと好きとか。おかしいですもん」

「本当だってば。だって毎日俺お店通ってたんだよ?知らなかった?」

「それは知ってたけど」

「でしょ?本当ならDVDなんてまとめて借りて一気見した方が楽だからそうしたいのにさ。でもあのこちゃんに顔覚えてもらいたいからめんどくさいけど毎日通ってたんだよ。
わざわざ罰ゲームでここまですると思う?」

「うーん…確かに…」

「嘘だと思うなら勝手にそう思ってくれてていいけど俺は本気で好きだからね。また明日からも毎日お店通い続けるからね」

そうしてその日は解散した。

生田さんの言い振りはとても嘘のようには思えなかったが、あんな人が私を好きだなんてとても信じられなかった。

半信半疑のまま、私は帰路についた。 

続く

関係ないけど新しいiPhoneがあまりにも重すぎることにより発生した肩こりと眼精疲労と頭痛がやばすぎる。世の中の皆さんはこんな重いものを持って日々元気に生きているのか。尊敬する。

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