バイト先のお客さんと付き合った話 11 ナイーブすぎる彼

気付けば有名人になっていた私と生田さん。

歩いているだけで指をさされたり、フードコートでちょっと姿勢を崩して携帯電話をいじっているだけでだらしない人だと指摘されたり、バイト先で男子と喋っているだけで浮気だと女性客に騒がれたり。

全然知らないけど芸能人って常にこんな感じなのかなって思った。

色々とやりづらさもあったが、みんなが見守ってくれて私たちはすっかり町公認のカップルのようになっていた。

私と生田さんがプリクラを撮るとみんなが欲しがり、たまに取り合いになることもあった。

どうしてか、生田さんと付き合ってからさらにモテるようになり、結構な数の連絡先をもらった。もちろん全て断っていた。

(たまに生田さんよりもいい人そうだな…という人は気になったりもしたけどちゃんと我慢した)

付き合っていくうちに気付いたが、生田さんは思っている以上にナイーブな人だった。

友達に紹介して

「かっこいいねー」

と褒められると、その時はニコニコして「ありがとうございます」と言うが、2人きりになると

「俺のこと何も知らないくせにかっこいいとか言って。俺がアトピーでM字ハゲって知ったら絶対そんなこと思わないくせに」

と言ってメソメソ泣いていた。
その度に慰めたり、たまに叱ったりもした。
アトピーでもハゲでもかっこいいんだから、自信を持てばいいのにと思っていた。

また、ちょっとした喧嘩で私が怒ると毎回ものすごい勢いで謝ってきた。

ある日朝からメールで喧嘩をした時のこと。
(当時私が好きだったゆずに生田さんが嫉妬したことがきっかけだったと思う)

学校に行き授業を受けている最中、やたら携帯電話が鳴るので鬱陶しくて電源を切った。

授業後に電源を入れると30件以上の着信通知が来ていた。
全部生田さんからだった。

さらには留守電も数件入っていたので聴いてみると

「本当にごめんなさい」
「嫌いにならないで」
「俺にはあのこちゃんしかいない」

などと泣きながら言う彼の声。

しかも彼氏は仕事中のはずなのに。
なぜこんなに留守電を入れられるのか。

生田さんの職場の方に連絡して聞いたところ、生田さんは私に嫌われたと言いながら泣いて職場に来た上に、お店が開いてからもずっと泣いており仕事にならないため早退させたそうだった。
私はなぜか謝罪した。

生田さんは本当に些細な喧嘩でこんなことになってしまう。

初めこそナイーブで一途な彼がかわいくて愛おしかったが、段々と面倒になり重たく感じるようになってしまった。

本当に優しくていい人ではあるが、果たしてこんな人と結婚して大丈夫なのか、ずっと一緒にいられるのか、少しずつ不安になっていった。

そんな事情を一切知らない周りの人たちは、相変わらず応援してくれて、相変わらず私たちを見て大騒ぎして、相変わらず私たちのプリクラを欲しがるのだった。

続く

関係ないけどチョコザップに行き始めておよそ2ヶ月半、少しずつ見た目に変化が出始めていて嬉しい。週5で行けてるのえらい。これからももっと頑張る。