33歳人妻が16歳の少年に恋した話 15 相合傘

カフェで他愛もない会話を続けること30分。

フラッグ君の口数が明らかに減り、元気がなくなってきたように感じられた。

「大丈夫?具合悪いの?」
と聞くと、フラッグ君は

「あ、いや、ちょっと…そろそろ川に行きません?」
と言った。

店から出たそうな様子だったので、会計をして店を出た。

彼は私が会計してる間に、高そうな自転車(クロスバイクというのか)に跨って店の前で待機していた。
会計を終え、近くの川へ向かった。

自転車を押す彼と並んで歩きながら、なんかカップルみたいだな、と思ってちょっとキュンとした。

その日の気温は35度。日差しも強かった。

眩しかったので、私は日傘を差した。

「入る?(笑)」

と聞くと、彼はニッコリして頷き、屈みながら日傘に入ってきた。相合傘だ。

初めてこんな至近距離にいるな、と思ってドキドキした。時折触れる彼の肩が熱かった。

川に着き、ベンチに座った。

依然として日差しが強かったので、また日傘で相合傘をした。
今度は彼が傘を持ってくれた。

「さっきカフェにいた時元気なくなってきてたのわかりました?」
と聞かれた。

「うん。具合悪いのかな?って思ってた」
「僕、実は適応障害持ちで。慣れないお店に行くとちょっと具合悪くなっちゃうんです。ごめんなさい」
「…え、そうなの?私こそごめん…言ってくれればよかったのに」
「言えないですよ、会っていきなりそんなこと」

そこから彼は、自分のことをたくさん話してくれた。

彼は小学校の時、勉強もスポーツもよくできる優等生で、ご両親や先生からとても期待されていた。
彼に期待したご両親が、たくさん習い事をさせてくれた。

初めは期待に応えるべく頑張っていたけど、期待が段々プレッシャーになっていき、
プレッシャーに負けてメンタルがやられ、小4から不登校になった。

心療内科で診てもらった結果、適応障害と診断された。
自律神経も乱れていて、未だに外出の時は少し具合が悪くなってしまうという。

小6からフリースクールに通い始めて、今もそこに通っている。つまり彼は、フリースクールの学生。(だから私服だった)
しかし、小6の当時は、フリースクールの登下校以外の外出は怖くてできなかったのだそう。

そんな時、たまたまテレビでスポーツの試合を観て元気をもらえた。
その日以降、試合がテレビで放送される日が楽しみで仕方なくて、ある日現地に行って試合を観てみようと思い立った。

外出は怖かったけど、勇気を出して試合を観に行ったらとても楽しくて、気付いたらそれが生き甲斐になっていた。

コロナ禍に入り、声を出す応援ができなくなった中で思いついたのが、フラッグを掲げて応援することだった。

その中で、私の造語でフラッグを作ったら反響が凄かったことが嬉しかった。

それをきっかけに、ステッカーを作って配ろうと思い立った。

引きこもりで人と関わることが怖かった自分が、生まれて初めてバズったワードを通してたくさんの人と繋がりたいと思えた。

「だから、あのこさんが僕を変えてくれたんです。ありがとう」

と言った。
彼の方を見たら、泣いていた。

「そんなこと…」

と言いながら、言葉に詰まった。
私も泣いていた。

続く

関係ないけど夫が仕事に行ってようやく看病しないで自由になれると思ったら朝から胃を壊して嘔吐して寝込んだ。うまくいかない。

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