バイト先のお客さんと付き合った話 10 幸せっぽい付き合い

生田さんは私が初めての彼女だからか、常に嬉しそうだった。
そして私のことを楽しませようと常に頑張ってくれた。

生田さんと付き合い始めてからは、仕事の帰りにご飯を食べに行こうとなった時のほとんどは生田さんの実家でお母様の作ったご飯を食べるようになった。

生田さんにはお金がないのだ。

付き合い始めてからすぐ給与明細を見せてくれたのだが、生田さんの月の手取りはなんと10万円前後だった。
理容師さんだから安月給であることは予想していたが、あまりにも低すぎる額に驚いた。

私と付き合うまではいいところを見せたくて、かなり無理してご飯を奢ってくれていたらしい。
付き合ったから正直に言うけど外食はしんどいので減らしたい、実家でご飯を食べたいと言われた。

彼氏の家に上がる経験も、まして彼氏の家でご飯を食べる経験もなかった私は大いに戸惑った。

しかし、生田さんのお母様はとてもいい方だし、お母様が作る料理は本当に美味しくて毎回感動した。調子に乗っておかわりしたりもした。

生田さんのお母様は地元ではそこそこ有名な料理家らしく、自宅で料理教室を開いたり、地元のテレビに出て料理の腕前を披露したりしているのだそうだ。

ちなみに生田さんはこれまでの人生で男友達とばかり過ごしており、家にもしょっちゅう男友達を呼んでいたためお母さんは生田さんを同性愛者ではないかと疑っていたという。

そのためか、私が初めて家に行った日はとても喜んで笑顔で歓迎してくれた。

たまに外食をする時はマックかサイゼかすき家。そして必ず割り勘。

それでも全然苦ではなかったし不満はなかった。
生田さんは優しくて柔らかくて、一緒にいて話しているだけで和やかな気持ちになって幸せだった。

生田さんと付き合うことになったと周りに報告してからは、バイト先の同僚や私の兄が面白半分で生田さんのお店に髪を切りに行くようになった。

生田さんはカットが上手いそうで、その上にアニメとゲームのオタクだったため同じくオタクの同僚や兄から慕われ、結局全員がリピーターとなった。
インセンティブにより、お給料も少しだけ上がった。

バイト先でお客さんから人気者だった私は、バイト先の周辺で生田さんとご飯を食べているとお客さんに遭うことも多かった。
ご飯屋さんの店員さんがレンタルショップの常連さんというパターンも多かった。

その度にみんなから声をかけられ生田さんを紹介していた。

生田さんは休みの日には私の授業終わりの時間に学校まで迎えにきてくれることもあった。

その度に大学の友達から

「彼氏めっちゃかっこいいね!!!!!」

と羨ましがられた。

そうして気付けば、家族にも同僚にも町の人たちにも大学の友達にも認知され、私たちは地域の有名カップルとなっていた。

みんなに褒めてもらって応援してもらえることは嬉しかったけど、知られることでちょっとずつやりづらくなっていった。

続く

関係ないけど増やすことを試みて頑張ってたカスピ海ヨーグルト、増えない。失敗したんだと思う。減るだけ。悲しい。

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