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巨匠

ワタリウム美術館の草間彌生展に行ったときの話。

そこでは、主に60年代の作品が展示されていた。ニューヨークで駆け出しのアーティストとして奮闘していた彼女のエネルギーが感じられる。

コンパクトな美術館なわりに作品数も充実していて、有名な水玉かぼちゃのような立体作品はもちろん、絵画、テキスト、インスタレーション、映像ドキュメンタリーなどが鑑賞できた。かつ、ヴィトンと最初にコラボする少し前だったこともあり、場内は閑散としていて見やすいのもよかった。

展示の終盤。インスタレーションを終え、映像ゾーンに進んだ。私のほかには、カップルと1人の男性客しかいない。

映像の中の彼女は、自身を装飾し始めた。首にワイヤーを巻きつけ、首とワイヤーの隙間に赤いバラ(だったと思う)を自らの手で1本ずつ挿していく。
1本、また1本。首元の空間がきつくなっていくのがみてとれる。そのうち、おえっとえずきだした。でも挿す手を止めない。

2回目のおえっで私は爆笑した。シュールで最高。

誤解のないよう言っておくと、草間彌生は私の好きなアーティストのひとり。彼女が幼少期から統合失調症を患っていることは知っているし、その病由来の言動をバカにするつもりはない。むしろその個性が彼女の芸術を創り上げたとリスペクトしている。

でも。
面白いものは面白いじゃないか。

そんな気持ちで周囲を見渡すと、私以外の3人はめちゃくちゃに真顔だった。こっちもシュールで最高かよ。

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