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さんざんな結果に終わったオランダ総選挙

11月22日にオランダ国会Tweede Kamer(註:二番目の部屋という意味)の選挙があった。結果はGeert Wilders率いるPVV(註:Partij voor Vrijheid、自由のための党)が150議席のうち37議席を勝ち取り、2位のGroene Links(緑の左党)とPartij van de Arbeiders(労働者党)が一緒になった、左を代表する勢力に12議席の差をつけた。アメリカでトランプが大統領に選ばれたときと同様のショッキングな出来事だ。

Geert Wildersはハンガリーのオルバン首相やイタリアの右翼政治家Salviniと親交があり、イスラム教を忌み嫌い、オランダはEUを脱出すべし、と主張している。

今まで13年間もVVD(Vrijheid van Democratie、民主主義の自由という意味)Rutte首相の下で右寄りの、市場主義の政治が続けられてきた結果、深刻な住宅不足、貧富の差の拡大、自然環境の後退、移民収容施設の恒常的な不足、と問題山積の状態。Geert Wildersによれば、移民の受け入れを制限しオランダ人優先にすることで問題解決なのだそう。

Geert Wildersはこれまで他の政党からまったく相手にされず内閣の仲間入りすることはほぼあり得ないと思われていたのだが、VVDの新しいリーダーがWildersの政党を組閣から除外することは選挙民の権利を無視することになるから、「戸を少し開けておく」みたいな発言をしたことから、Wildersにこんなに票が集まってしまった。

オランダ税務署が、外国っぽい名前の人に子供手当を不正に受け取っていたとして多額の返済を求め、実は不正でもなんでもなかったのに、疑われた人たちは詐欺の烙印を押され破産や家庭崩壊の悲劇を招いたスキャンダルを暴いた政治家Peter Omtzicht。この正義の味方が新しい政党を作り選挙に参加して20の議席を獲得したのだが、Omtzichtはもし選挙で勝っても自分は首相になるかどうかわからない、選挙の後に決める、と言い続け、投票日の数日前になって初めて、もしも各分野の専門家が大臣になるのだったら首相になることもあり得る、と中途半端な発言。このどっちつかずの態度がいけなかった。はっきり「やります」と言っていたらもっと多くの投票者を引き付けていたことだろう。

私の息子にこの選挙結果への感想をきいたところ、「僕はオランダから引っ越す」という返事が返ってきた。さもありなん。私もあと5年働いて退職し、オランダにさよならしたい。

写真は選挙の票を数える様子。多数の政党が参加するため、投票用紙がとても大きい。政党ごとに候補者が列記された中から一人の名前に赤鉛筆で印をつけ投票する。電子投票は不正の可能性があるため使われていない。



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