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昼下がり(二部作2)【ショートショート14】


PM12:30。

僕が1日の中で1番好きな時間。


太陽の位置がちょうどいい、昼下がりというやつだ。

この時間に飲むコーヒーが大好きだというたったそれだけの理由で、僕はカフェの店員になり、いつしか自分で店を持つようになった。


そんな僕の店に、いつも昼下がりになると1人でコーヒーを飲みにくる女性客がいた。

テラス席でゆったりコーヒーを飲んでいるその女性の姿を見て、きっとあの人もこの時間が大好きなんだろうなと思った僕は、女性の至福の時間を邪魔しないように、接客時以外では話しかけたりしないようにしていた。

でもほとんど毎日来るもんだから、何か話をしたい、
そう思った僕は、コーヒーにメモ書きを添えた。

『幸せですか?』

それを見た女性はすぐに僕に言った。

「幸せですよ、いつも美味しいコーヒーを、ありがとうございます」


それから僕は、その女性と他愛のない話をする仲になって行き、やがて交際をはじめた。

話をしてわかったことだが、彼女はあまり昼下がりなど時間を気にしているわけではなかったようだった。たまたまあの時間に暇ができていただけだったのだ。

それでも彼女の、思いやりを忘れないところやちょっとおっちょこちょいなところなんかが、僕は大好きだった。


そして何年か交際が続き、ついに僕はプロポーズをすることに決めた。

場所は僕の店。彼女がいつもいたテラス席。

時間は、PM12:30。

「懐かしいね。私、毎日この席でコーヒー飲んでたよね。」

「そうだね。時間も今ぐらいだったね。」

「あなた、本当にシャイなんだろうなって思ってたよ。だって私毎日ここにいたんだよ?普通話しかけるよね、ふふ。」

「1人でまったりするのが好きなのかなあって思ってね。」

「ああ、『昼下がりが〜』ってよく言ってたね。それこそちょうど今ぐらいがそうなんじゃない?」

「そうだよ。」

「ごめんね、あのときは気遣わせちゃって。たしかにぽかぽかする時間帯だけど、別に意識はしてなかったなあ。たまたま暇な時間だっただけ。ふふふ。」


今だ。

「僕はこの時間帯と、それから君が、大好きでね。君はあんまりわからないっていうけど、僕と、毎日のように昼下がりを一緒に過ごしたら、このなんとも言えない良さが伝わるんじゃないかなって思うんだよ。」

彼女の表情が、少しずつ真剣な面持ちになるのがわかった。

「だからさ、僕はね、これからずっと、君と、

昼下がりの喜びを、分かち合いたい。」


彼女の言う通り、僕はシャイなのかもしれない。ストレートに言えりゃそうしたかったけど、なんか、こんな言い方を選んでしまった。
でも、これでいい。一緒にいられるなら。


良さが伝わるまで、そしてこの良さが伝わってからも、ずっと。

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