昼下がり(二部作1)【ショートショート14】
「昼下がりの喜びを分かち合いたい」
私の耳に飛び込んできた、謎の台詞。
今からとっても大切なことを告げられる、そんな雰囲気の中で彼が発したその言葉の意味だけは、ドジな私でも簡単にわかった。
内気でちょっぴりキザな彼が選びそうな、それでいてどこかまっすぐなひとこと、そのぬくもりに私は包まれていた。
彼の言葉に合わせるように、少ない時間で目一杯考えた私は、少しの緊張とたくさんの幸せを込めて、言った。
「コーヒーの美味しい淹れ方、教えてね」
彼は、世界で1番やさしい顔をした。