いつか無くなる物Ⅰ
私の趣味は「過去の鑑賞」だ。
少々経費のかかる趣味ではあるが、一度経験するとやめられない。
今日もお皿の形をした新型タイムマシンを利用して、21世紀前半の様子を楽しんでいた。
少し山手に良い雲があったので、その雲の中からある施設を覗いてみる。
車が沢山並んでいる一角に、女性の長い列があった。よく見ると入り口には、女性の影のイラストが表示されている。
「ああ、これが当時のWCか。」
日傘をさした女性が男性用に紛れ込む様子も見える。
当時、男性側には「男性用小用衛生陶器」が設置され、ほとんど待つことは無かったようだ。
確かこの頃から、男も座って用を足す習慣が始まったはずだ。
家庭から「男性用小用衛生陶器」が無くなり、座ってでないとオシッコが出来ない男性が増えたことで、公共施設からも「男性用小用衛生陶器」が消えていったようだ。
洋式トイレだけだと、それなりの空間が必要である。
最近は、座数確保のために壁を取っ払い、男女の別をなくす所も増えている。
そういえば、「古き良き時代展」で展示されていた白い衝立のような物の前に老人たちが立ち、懐かしそうに「ブルブルッ!」と身を震わせていたのは、これだった。