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#5 アカメガシワ染め~木綿の下地処理や鉄媒染液の濃度を変えてみた~

1.アカメガシワ染めについて

秋から冬にかけて黄葉、落葉するアカメガシワは鉄媒染により黒を染める材料として知られており、また、落ちた葉も使えて、乾燥しておくと長期間染料として使うことができる。これを使って、木綿の下地処理の方法や、鉄媒染液の濃度を変え、どのように染まるか調べてみた。

2.方法

2.1.試料

2.1.1.試験布

木綿晒(下地処理を5種と、追加で無処理のもの)

2.1.2.染料

アカメガシワ(落葉する前の緑から黄色の葉を大阪北部で2021年11月~12月に採取)の乾燥葉

2.1.3.試薬等

濃染処理剤:パラロンK-1(カチオン系界面活性剤と販売会社に確認、成分は不開示)
鉄媒染液:鉄釘を1:1の酢水に浸けて煮出し、使っては酢水を追加して数カ月経過したもの。成分の濃度は不明。

2.2.手順

2.2.1.試験布の下地処理

K:濃染処理剤。説明書に従い、規定濃度(2~5%)の範囲内(4%)の80℃前後の溶液に30分浸し、脱水して自然乾燥した。
1~4:豆乳(数字は水による希釈倍率)に浸けて脱水し自然乾燥した。
N:無処理

2.2.2.抽出

乾燥したアカメガシワの葉約135gに水をひたひたに入れ、煮出して2回抽出したものを合わせた(約8リットル作製)。

抽出液(左:1回目、右:2回目)

2.2.3.染色

1.5種類の下地処理をした試験布を水で軽く絞ったあと、それぞれ50~60℃に温めた染色液と0.5%の鉄媒染液で、染色-媒染-染色-媒染と、水洗いを挟んで各15分以上行なった後、最後に染色液に浸けて水洗い、自然乾燥した。

アカメガシワの鉄媒染による染色(左から、染色1回目→媒染1回目→染色2回目→媒染2回目)

その後、比較のため無処理の布を同様に染色した。

2.前項1.で無処理で染色した布の小片を用い、50~60℃の鉄媒染液(濃度0.5%(B)、5%(C)、50%(D))で追加の鉄媒染のみ行って、水洗い、自然乾燥した。追加の鉄媒染を行わないもの(A)とも比較した。

追加の鉄媒染

3.結果

3.1.下地処理の比較

下地処理をした5種類は、目視ではどれも染色濃度に目立った差がなかった。無処理の布も、染色濃度には明らかな差が見られなかった。
ただし、豆乳で下地処理したものは、豆乳の濃度が濃いほど赤みが強く、濃染処理剤K-1でも赤みが生じた。無処理のものは無彩色に近い色になった。

<下地処理の方法>1~4:豆乳(数字は水による希釈倍率)、N:無処理、K:濃染処理剤

3.2.鉄媒染液の濃度の比較

追加の鉄媒染では、(A)と比べると全て色が濃くなった。(B)と(C)の差は僅かであったが(C)が最も濃く染まった。また理由は不明だが(D)の色が若干薄く、赤みがかっていた。

追加の鉄媒染を行なった各布
<媒染液の濃度>0.5%(B)、5%(C)、50%(D)、Aは追加媒染なしで前項Nと同じもの

4.考察

鉄媒染によるアカメガシワ染めで今回行なった範囲では、木綿の下地処理の有無や使用した豆乳の濃度は、色味には少し違いが出たものの色の濃さには大きく影響せず、下地処理がなくても無彩色に近い染色が可能であることがわかった。
鉄媒染を追加することで濃く染まったことを考えると、より濃く染めるためには、重ね染めを繰り返すことが有効だと考える。鉄媒染液の希釈濃度は一般に言われる0.5%程度があれば十分で、過剰に媒染液の濃度を高くしてもあまり染色の濃さを高める効果がないと言える。50%の鉄媒染液で追加媒染したものが赤みを帯びた理由は不明だが、媒染液自体の成分やphなどの影響であろうか。
また、染めた色に赤みが欲しい場合の下地処理の方法についてであるが、濃染処理剤と豆乳では染色濃度に大きな差がないし、カチオン系界面活性剤は一般に、弱いものではあっても毒性や皮膚刺激性があることや、自然の材料を使って環境負荷を低減している草木染めの意義を考えると、豆乳などの自然材料による下地処理をぜひお勧めしたい。加熱の必要がなく、浸して絞るだけなので簡単だし、豆乳の匂いも数回の洗濯でほぼ飛んでしまうものである。

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