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#14 藍乾燥葉の残渣を使ったバケツ染め

#11で藍の生葉の残渣や残った染液を使ったバケツ染めを取り上げましたが、乾燥葉でも同じように残渣や残った液を使えるのではないかと思い、試してみました。また乾燥葉の搾りかすは生葉に比べて成分が濃縮されている分、より濃色に染めることができるのではないかとも考えました。

#11と同様、15Lのポリバケツに、記事#12,#13のグルコース建ての染色テストなどの藍の搾りかすと、一度使った染色液を溜めていきました。液中の消石灰はほぼ飽和し沈殿して少し底がざらつくくらいになっており、3日に1回くらいは撹拌しました。強いアルカリの消石灰の水溶液なので、生葉の時と同様、カビが生えることはありませんでした。
もしpH計があれば、資料2)で「発酵建てと同程度の濃さに染色することができた」とされるpH11.5~12.0か「発酵建てよりも濃色に染色でき」たとされるそれ以上の数値に保てるよう、消石灰で調整するとよいと思います。

10L以上溜まってからさらに2か月ほど置いているうち、水面に幕が張ったり青い泡が生じたりしました。染める前に、染色力を強めようとアルカリ剤の消石灰、還元剤のグルコースを各30g加え、一晩置きました。

写真1 藍の乾燥葉のバケツ染め(ネットをセットしたところ)

そしてこれも生葉の時と同様、細かい搾りかすが布に付かないよう、大きめの洗濯ネットを被せたうえで、絞り染めの手拭い1枚を染めました。

写真2 藍の乾燥葉のバケツで染めた手拭い(1回目水洗い)

時間を長くかけたことによって藍の還元がより進んだとみえ、抽出後すぐにグルコース建てして染めた場合と比較すると、1回目の染めの時点でも濃く染まっていることがわかりました。3回重ねて染めるとより青みが強くなりました。

写真3 藍の乾燥葉のバケツで3回染めた手拭い

ガーゼハンカチやタオルも同様によく染まりました(タイトル写真)。生葉のバケツ染めと比べても見た目では濃色に染まっていると思います。
液はこのあとまだしばらく使い続けられそうな印象です。

末尾にある資料1)の研究は、発酵建てではありますが、同じ15Lのポリバケツを用い、仕込みでブドウ糖を加えているケースもあって参考になります。仕込んだあと状態を見ながら、アルカリ剤としては灰汁や消石灰、苛性ソーダなどを、還元のための炭素源としてはふすまを加えています。
アルカリ剤として古来使われている木灰については「木灰は蒅(すくも、筆者註)と助剤の調和が自然で、建てやすく、建ち上がった液は木灰の緩衝性によりpHも安定し、管理しやすいと言われている。」と述べていますが、近年木灰の確保が困難となり消石灰、苛性ソーダ、ソーダ灰等の工業製品が多く使われるようになったということです。木灰はさまざまな物質が混じりあっているので緩衝剤としてpHの急激な変化を抑えてくれると考えられ、今後、木灰の灰汁を使ったブドウ糖建てやそれに続くバケツ染めも試してみたいと思います。

しかしながらこの夏の日照りと高温でうちの「畑」のタデアイはカラカラ、瀕死の状態で、そもそも今年の収穫ができるかどうか気がかりです…。

参考資料
1) 山口律子:藍染に関する研究--ポリ容器(容量15l)使用による藍発酵建て、園田学園女子大学論文集 (23)、園田学園女子大学 1989.3 p.125-146
2) 牛田智、松尾美恵:グルコースによるインジゴの還元、日本家政学会誌、VOL.42 No.1、61-65(1991)

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