三途の川。
「それじゃあ、橋の方へお進みください。」
「橋?」
「あの世も二十一世紀になれば、橋くらい架けますよ。」
「へぇ、随分便利になったんだねぇ。」
男は案内人と世間話をしながら橋の方へ向かった。死んで了っても、このように駄弁ることができるだなんて、何だか不思議な心地がする。
「…はい、此処が橋の入り口になります。」
男の前には、先が霞んで見えない程長い長い橋が待ち構えた。
「これは、どのくらいあるのかな?」
「計測するのも馬鹿らしくなるくらいです。」
「…みんな、これを渡りきるのかな?」
「大体の方は途中で諦めて、横に落っこちます。」
「…もう、引き返すことはできないよね?」
「いや、できますよ。まだ死ななくてもいいような人が、この橋に案内されるんです。」
「それじゃあ、もうちょっと生きてみるよ。」
「はい、その方が良いと思います。」
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