海月。
うっかり宇宙に落っこちてしまった。誰にでもうっかりはある。男にとって、たまたまそれが宇宙空間への落下であった、というだけである。
男はため息をついた。スーツは着ているから、30分ほど呼吸はもつ。それまで、ふわふわと宇宙を漂う他がない。砂時計のように、その瞬間を待たなくてはならない。
「あいつ、海月みたいだな。」
宇宙船から男を望んだAは、そう呟いた。
Aが地球へ帰ると、なぜか海月に魔力的な魅力を感じ始めた。Aは衝動的に海月を購入し、大切に育てた。Aは、男の名をその海月に付した。これは男の生まれ変わりなのではないか、と信仰のようなものすら芽生え始めた。
しかし、海月は純然たる海月でしかなく、海月はぷかぷかと意志もなく浮かんでいるだけだった。
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