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日常の一節。

 〈えたいのしれない不吉な塊が…〉違う、これは『檸檬』だ。
 〈生きている事と死んで了っている事と、それは両極では…〉違う、これは…『城の崎にて』だ。

 …もうこれ以上はでてこない。でてきたとしても、また何かの引用でしかないだろう。僕は諦めてパソコンを閉じ、溜息ともいえない大きな息をどっと吐く。久し振りに大学へ行こうと思った。多分、何かしらのきっかけが必要なんだと思う。この代わり映えしない荒廃した毎日には、もうこれ以上書きうる部分がないのだ。時計を見ると、午後三時四十七分だった。まぁ、授業に出るわけでないから、時間はそこまで問題にならない。…しかし、大学に行くのなんていつぶりだろうか?僕は髭をそり、一応ワックスをつけてから、外套を羽織る。ドアを開けると、凍てつくような風が僕を刺して、痛い。

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