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東京の憂鬱。

 街を俯瞰すると、そこにはミニチュアの世界が広がっている。

 この光の一つ一つに、人間が生活をしていることを思うと途方に暮れてくる。しかし、ふと立ち止まって考える。この一つ一つにはたして意味はあるのだろうか。

 誰もが何者かに成りたかった。しかし、眼下の齷齪とした人々はどうだろう。名前を持たない、登場人物Aであることへの不安や憤りはないのか。自分自身を欺いて、はたして満足がゆくのだろうか。

 ゲームと現実の境目はほとんどないと悟った。プログラミングされた通りに動く人々。〈print = social creatures〉主人公であらなくては、生きている意味なんかない。主人公がいないゲームで、進展は何も起こりえないからだ。

 憧憬であった都会は、残酷な虚構であった。物語に掌握されている。僕は東京の夜景に背を向けた。僕が死ぬことで、いかなる人物に影響を及ぼすことはないのだ。

 

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