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私の羽がもがれた日。

あの日、私の背中には確かに立派な羽が生えていた。

あの日は誇らしかった。私にもついに羽が生えたんだ、と。自分の努力が報われたんだ、と。私は仲の良かった先生に、喜々として報告した。

「先生、私羽が生えたの。」

先生は笑顔で、私の羽を掴み言った。

「学校で、この羽は見せびらかさないようにしようか。」

私の羽は外れてしまった。私が見た時にはすでに、先生の手には何も握られていなかった。


あの羽根で空を飛んでみたかった。幾度となく思ったが、羽は一度しか生えてこない。私には小さな背中しかない。

ビルの屋上に向かう。思い切って、飛んでみよう。一度は羽が生えたんだから、退路を断てば羽ばたけるかもしれない。しかし、屋上に立つと、堅牢な壁が私をもう一度阻む。そうか、飛ぼうと思うこと自体が、私には許されていないんだ。

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