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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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2021年8月の記事一覧

雲の蜘蛛。

「雲の上には、大きな蜘蛛がいるんだ」 甥は、僕の適当な創作に、奇妙なくらい食いついてくる…

みずのおはなし。

私は水の音が好き。ぽつゆ、ぽつゆとしたたる水は可愛いし、ずあら、ずあらと猛々しい水は男ら…

粋な神様。

皮肉なことに、彼は競馬で全財産を失うことで人間性を取り戻した。親族は泣き暮れ、友人は喜ん…

カマキリの選択。

カマキリくんは、悩んでいた。余りのストレスに、ぐったりとしていた。見かねた年上のカマキリ…

雑草を抜こう。

気分が沈んでいる時、君の視線は床ばかりを捉えていて、腰は沈んでいるはずだ。気分が沈むと、…

わらしべ長者。

8時間働くと、大体1万円が手に入る。3年間、4日稼働3日休みを繰り返した。田舎の祖母の家に居…

幽体離脱。

幽体離脱が特殊能力であることに、僕はずっと違和を憶えていた。それは、僕にとって日常の少し先にある営みに過ぎなかったからだ。それが才能であると言うならば、それには越したことがない。しかし僕は、耳朶をダンボのようにはためかせたり、サーカス団員のようにペンをくるくると回すことの方が、よっぽど特技に値すると思う。人生はいかなる場面においても、隣の芝生がやけに気になるものなのかも知れない。 幽体離脱のハウツーは、僕にも分からない。強いて言うなら、身体と意識を切断しようとするのではなく

資本主義の娼婦。

「やっぱりさ、もう一度考え直したんだ。いつまでも夢は追ってられない…追ってられなかったん…

使い捨てルーズリーフ。

この上ない生き方を見つけた。世界を司るのはルーズリーフだった。灯台もと暗しとはこのことだ…

高速道路。

アクセルを強く踏むと、自分が生きていることを実感できる。自分が何者かになったかのような、…

自転他転。

「ねぇ、地球ってとても律儀だと思わない? 」 「どういうこと? 」 「だって、ずうっと同じ…

グレゴリオ暦。

明後日が楽しみすぎで、明日がいらない。僕は悩んだ。こういうことが随分多い気がする。つまり…

夏の庭の馬追。

今年も夏の庭に馬追がやってきた。 「やぁ、今年も来たね」 「我々の区別がつくのは、あなた…

笹舟。

時の流れに身を任していたら、見知らぬ場所まで追い立てられた。これが俗に言う遭難という代物かも知れない。ちょうど舟もその役目を果たしたようだし、ここらで岸に降りてみよう。 世界は繋がっていると信じたいけれど、それが幻想ではないかと思ってしまうような茂み。余りにも鬱蒼としていて、僕の爪先から脳天まで受け付けていないことを表明しているみたいだ。けれども、ここで生きていかなければ。地球は自ら回り続けているし、太陽系の周りを回され続けてもいるのだ。 難破した笹舟の一部は、ポケットに