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【禍話リライト】「見たことのある……」

とある女性の話。

その方は昔からずっとある怖い夢を見ていた。
その夢の内容は以下のようなものだ。

夢の中で、自分はボロボロの和室をグルグルと回っており、外に出ることができない状況にいる。
ボロボロの部屋の中に充満する臭い。例えるなら、老婆の使うタンスを開けたときのような、或いは線香の香りが漂っているときのような、そんな異臭に息苦しさを感じる。
襖もボロボロで、埃や蜘蛛の巣が辺りに見える。
そのような空間に、(うわ~、いやだ~)っと嫌悪感を抱き、
バンッ! と勢いよく襖を開けるがその先も同じような和室がある。

困惑しながらも繰り返し襖を開け続け、ようやく和室から出ることができて喜ぶも目の前には出口ではなく階段がある。
(階段かよ、玄関じゃねぇのかよ)っと思っていると、


      ギシッ ギシッ


と上から音を立てて誰かが下りてくる。
降りてきたのは、白い割烹着を着た女の人だった。

しかし、その女の人はとても怖い顔をしており、後ろ手に何かを持っている。

(ウワ―ッ!怖い!なになになに!)

そう思っていると、その女の人が自分の方を見た。

その瞬間、
     
     ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!


女は階段を下りる速度を速める。

その姿に恐怖する。


そして目が覚める。

ということが、何度もあるという。

時々襖を閉めるなどの抵抗をするとのことだが、
基本的には白い割烹着の女が階段から下りてきたら終わりとのこと。

その方としてはその夢は、非常に怖いもので、
(いやだな~いやだな~…)と思っていた。




あるとき、その方の所属するゼミの活動の一環で、
古民家に泊まることになった。

その古民家に着き、家の中を散策する。
気が付いたら、その方だけがその家の一番奥まで行っていた。




(えっ、あれ?なんか似てる…)
あの夢の中の和室が頭をよぎる。

(えっ、こっからこれ開けたらまた部屋だよな…)
閉まっている襖を開ける。

(うわ!部屋だ!コワッ!)
夢で見たあの和室が目に映る。

(やべぇ、やべぇ、どうしよ…具合悪いから帰るとか言おっかなぁ…)
そう思いながら急いで和室を出る。

(えっ、これ、見覚えあるな…)
あの階段だ。

(ええええ!こえぇ…。やべぇ…やっぱ帰ろう…)
そう思い立ち、その場を離れた時、ほかのゼミ生達とはぐれてしまっている事に気付いた。
しかし玄関の場所は分かっている。余りにも怖すぎるため、本当はだめではあるが今来た道を引き返し、バスと電車に乗って帰ろうと思い至り、外に出ようと玄関へ・・・






「どうしました?」





声がした。

声をかけてきたのは、その古民家のご主人だった。

「えっ!あぁすみません、帰ります…」
そう伝えるがその老翁のご主人は
「どうしたんですか?」
と再び訊ねてくる。

「いや、ごめんなさい馬鹿な話なんですけど…」
そのとき、なぜかあの夢のことを話してしまったという。

話している途中で、
(なんて馬鹿な事を言ってるんだ!ほぼ初対面の人に!)
と思いつつも、『この古民家とまったく同じ階段から割烹着を着た人が、後ろ手に何かを持って下りてくる』と、昔からずっと見ていることは言わずに、あの夢の内容を伝えた。



それを聞いたご主人は、



にっこりと笑いながら言った。






「あっ分かってんなら。大方何が起こるか分かってんなら、なおさらいいじゃないですかぁ」



そしてその方の胸倉を掴み、再び古民家の中に入れようとしてきた。


「ウワァーーーッ!ちょっと!やめてください!」
恐怖と危機を感じたその方は、ご主人の手を振りほどき急いで古民家を去った。そしてそのまま無事帰路に着くことができたという。

そのようなことがあり気まずくなったため、所属していたゼミはやめ、別のゼミへ変えたとのこと。


あの古民家で何があったのか、あのあと何かが起こってしまったのか、それは未だ分からない。








〖配信当時はここで話が終わっている。故に『体験した女性はいまだに件の夢を見続けているのか』という点は不明であることをここに記しておく〗




出典:【シン・禍話 第三十九夜 (聞き手の鬼登板回)】
    (2021/12/25 )(18:42~) より


本記事は【猟奇ユニットFEAR飯】が、提供するツイキャス【禍話】にて語られた怖い話を一部抜粋し、【禍話 二次創作に関して】に準じリライト・投稿しています。


題名はドント氏(https://twitter.com/dontbetrue)の命名の題名に準じています。


【禍話】の過去の配信や告知情報については、【禍話 簡易まとめWiki】をご覧ください。


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